グッチのコートを起点に「アジアンマフィア」をテーマにスタイリング。アーティスティックなメイクを施し、ジェンダーの境界ぎりぎりのラインでファッションを楽しみたいと思ったのはグッチに出合ったから。夢は、観賞用にドレスを購入して日々愛でること。
1 赤いタートルネックと黒いボトムはZARA、ほかはすべてグッチ。袖が膨らんだスウェットは「おめでたいプリントがいいな」と思い購入。ボトムをタイトにして足もとを丸っこくまとめ、「鹿のような、動物っぽい感じを出しました」。太りにくい体質で、細すぎる脚をレイヤードでカバーするよう心がけている。
セルフメイクに、華やかなグッチの服。特集テーマ、「情熱服」に合わせてスタイリングを考えた。
「メイクは元をたどれば儀礼的な意味合いがありました。今回は赤を大胆に使ってそこに回帰したいな、と。服はボトムをタイトにした動物っぽいシルエットにして全体的に野性味を出してみました」
18歳にして独特の世界観を作り上げていて驚かされるが、性別を超越した佇まいも気になるところ。
「髪が長くてメイクもするのでフェミニンな印象かもしれませんが、『男女』のカテゴリーどちらかに偏ると面白くないと思っています。自分の場合、“女性性”が強いスカートははかない。“ぎりぎりのところ”にいたほうが見る人も楽しいんじゃないかな、と」
2 自慢のグッチコレクション。レトロなムードが漂うハイヒールのホースビットローファー
3 2019年リゾートのランウェイに登場した一張羅のロングコート
4 2019-’20年秋冬のイヤークリップ
5 オーバーサイズのフレーム
そう思うようになったのは、アレッサンドロ・ミケーレが手がけるグッチの影響が大きい。2017年にテレビの音楽番組で大好きな椎名林檎さんがグッチを着ていて関心を持った。
「YouTubeでショーを見てみたら感激してしまって。モデルをやっていたのでファッションは身近にありましたが、服にそこまで心を動かされることはなかった。それからブランドやアレッサンドロのことを調べるようになり、メンズとウィメンズのコレクション統合や、ブランドのパロディを発表していたアーティストとのコラボレーションなどを知りました。革新的なアイデアでやりたいことを推し進める姿勢もすばらしいと思います」
グッチに着想を得た唯一無二のスタイルは、熱烈に支持してくれる人がいる一方で、時にはSNSなどで心ない言葉をかけられることもある。しかし、板垣さんはまったく気にしていない。
「自分の感情を別の方向に傾けるのがもったいない。その瞬間に好きなことをやる、というポリシーは死ぬまで変えないつもりです」
板垣李光人RIHITO ITAGAKI (Actor)
2002年山梨県生まれ。2歳でモデルデビュー。ドラマ「仮面ライダージオウ」(’18)で注目される。現在は映画『約束のネバーランド』公開中。ドラマ「ここは今から倫理です。」(NHK総合)では生徒役を演じる。イラストも得意。日本画やアルフォンス・ミュシャを参考にしている。