OVERCOAT オーバーコート
Designer:大丸隆平
日本らしい"まじめな"モノづくりを通していい服の価値を伝えたいんです
パターンから素材、縫製まで。NY発のメイドインジャパン
NYを拠点とする「大丸製作所 2」。名だたるブランドから注文を受け、企画からデザイン、縫製までを手がけるパターンメーカーだ。その代表を務める大丸隆平さんが立ち上げたのが、このユニセックスのコートブランド。
「"NYを着る”をブランドテーマとしていて、街の店先にある天幕、オーニングの生地に注目しました。独創的なデザインや色に惹かれたのですが、耐久性や撥水性に優れているという実用的な利点も。ですが、このままだと着るには硬すぎる。そのため化学繊維業界でトップクラスの技術を誇る石川県の会社に頼み、柔らかく加工しました」
このピーク・ラペルオーバーコートも、そんな着心地のよさが感じられる。加えてさらに驚くのは、一見大きいコートが着てみると見事に身体に添うこと。
性別も体格も問わないピーク・ラペルオーバーコート ¥158,000/大丸製作所 3(オーバーコート)
「『肩に乗る服』がいちばん心地よく、軽く感じられるんですよ。ショルダー部分にプリーツを施し、どんな肩幅でも肩先でその折り目が終わり、そこからゆるやかに落ちるように設計しています。脇下からはドレープを施し、ルーズにならないように。ただのサイズアップではなく、誰でも快適に着られること。それが僕らが考える正しいユニセックスです」
そして、大人の女性も着やすいニュアンスグレーは、今季のテーマ「Under Construction」を反映した色。NYの街中にある、工事中の建物や開発途中の風景がインスピレーション源だという。
シルクスクリーンプリントを厚く重ねたストライプ。淡いパープルと白のミックスとグレーの2種類が揃う。
(左)襟下から肩先にかけて施されたプリーツ。着る人の体型に合わせてその長さが変わる仕組み
(中央)「NYは極寒の地なので、中にダウンを着込めるようにしたかったんです」と大丸さんが語るように、脇下はたっぷりとゆとりがある。裏地はラミネート張りのため、通気性をよくするための空気穴も
(右)コートの情報を羅列した、ミニマルなタグ
「工事中の壁にあるペイントをイメージして、重ね塗りしたようなダスティな色を表現しています。パープルの糸を織り込み、光の加減で少し紫がかって見えるように。この色出しも日本の工場によるもので、水がきれいだからできるんです」
数々の職人技が融合した一品は、まさに"不朽の名作”といえるクォリティ。「母から娘へ受け継がれるような、価値ある服を考えるきっかけになれれば」
Ryuhei Oomaru
2008年、NYにパターンメーカー「oomaru seisakusho 2 」を設立。日本のクリエーションを海外から発信している。2014年に自社ブランド「OVERCOAT」をスタート。
oomaruseisakusho2.com
SOURCE:SPUR 2017年2月号「デザイナー自身が語る“マスターピース”の魅力」
photography:Takashi Ehara(item), Mizuho Takamura(detail, portrait), styling:Itsumi Takashina
着たい服はどこにある?
トレンドも買い物のチャンネルも無限にある今。ファッション好きの「着たい服はどこにある?」という疑問に、SPURが全力で答えます。うっとりする可愛さと力強さをあわせ持つスタイル「POWER ROMANCE」。大人の女性にこそ必要な「包容力のある服」。ファッションプロの口コミにより、知られざるヴィンテージ店やオンラインショップを網羅した「欲しい服は、ここにある」。大ボリュームでお届けする「“まんぷく”春靴ジャーナル」。さらにファッショナブルにお届けするのが「中島健人は甘くない」。一方、甘い誘惑を仕掛けるなら「口説けるチョコレート」は必読。はじまりから終わりまで、華やぐ気持ちで満たされるSPUR3月号です!