Interview with
YOLANDA ZOBEL
COURRÈGES
YOLANDA ZOBEL
ドイツとフランスにルーツを持つ。アクネ ストゥディオズ、ジル・サンダーなどで経験を積み、2018年にクレージュの新アーティスティック・ディレクターに就任。今季パリで初のショーを発表した。
「アンドレ・クレージュはブルジョアジーへの反骨精神を備えたアヴァンギャリストでした。彼は、服を通して女性を自由にした。伸縮性のあるストッキング生地やビニール、フラットブーツ、ショートボトムによって、女性はしゃがんだり、ジャンプしたりと、自由に動ける。この革命にとても共鳴するんです」
そう語るのはこの歴史あるメゾンのアーティスティック・ディレクターに就任したヨランダ・ゾベル。創設者であるアンドレ・クレージュが今生きていたら何をするか?と考え、まずは徹底的にアーカイブに向き合ったという。たとえば多くのデザイナーに影響を与えてきたフラワー。可憐になりがちなこのモチーフに強さをもたらすため、Deee-Liteのようなダンス音楽に着想を得てサイケデリックに刷新(10)。「クールな人もキュートな人も、みんなが身につけることができる花柄を生み出すのが目標です」と語る彼女のクリエーションは女性へのやさしさに満ちている。「着想源は世界中の女性。すべての女性はユニークで美しいと本気で思っています。服を通して男女のパワーバランスを平等にし、女性が声を上げる手助けをしたいのです」
もうひとつ彼女にとって大切な価値観がサステイナビリティだ。「2月にアーカイブの保管庫を見に行ったとき、ビニールジャケットが腐敗によって、分解され始めていた。そこを出発点に、ビニールがはがれているような柄を取り入れました(9)」。このドレス(8)も、アーカイブのドレスを再現したあと切り開き、インナーが表に出てくる仕立てに。「時の経過を表したかった」と言う。そして彼女は保管庫で放置されていた何メートルものビニール生地のストックを見て、ある決断をする。「これを無駄にしないため、コレクションにすべて使用することに。最後まで使い切ったら同じような手ざわりのものを再利用素材から見つける予定」。そう語る姿には少しも力んだところがない。「サステイナビリティは私の生活の一部で、ごく当たり前のこと」。自然体な彼女がこれからどんな革命を起こすのか。目が離せない。