
B ロンドンのライブ会場で購入したチャイルディッシュ・ガンビーノの一枚で、新型コロナ対策ルックを披露してくれた。「ディス・イズ・アメリカ」が衝撃的でファンに
PROFILE
1994年、東京都出身。ロンドンのセントラル・セント・マーチンズにてファッション・コミュニケーションを専攻している。現在は大学のプログラムの一環として、LAのクリエイティブ・チームでインターン中。
金曜の夜、誰かの家に集まって、みんなで音楽を聴きながらお酒を飲む。今は失われている、週末ライフに想いを馳せた、内田莉子さんのプレイリストが到着。彼女が愛してやまない、ブラックカルチャーに触れることができる10曲には、どんなストーリーが詰まっているのだろうか? 現在は、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズの学生をしながら、学校のインターンシップ制度を利用し、LAのクリエイティブ・エージェンシーで働いている彼女。アーティストのビジュアル制作をメインに行なっているだけあって、ヒップホップとグライムをほどよくミックスした通なセレクション。
まず、おすすめはTシャツも愛用するフランク・オーシャンの「DHL」(C)。
「小包が来た、DHLからだ、というような日常の出来事を紡いだリリックがいい。友達と話しているみたいに、彼の率直な気持ちや経験、視点を淡々と描いている点が魅力的」
グラミー賞も獲得しているチャイルディッシュ・ガンビーノの「レッドボーン」(D)は、恋人関係におけるパラノイアについて歌った一曲。ここでも、歌詞のパワーに感化されたとか。
「自分の人生観やキャリアにおいての葛藤について考えさせられました。ポイントはStay woke(意識を持ち続けろ)というフレーズ。今は仕事に食らいつくのに必死ですが、これを乗り越えて、さらなる高みを目指していこうと、ポジティブな気持ちになれる」
内田さんが、ブラックカルチャーと出合ったのは、幼少期を過ごしたアメリカ南部のジョージア州。アフリカ系移民が多く住むエリアでは、隣人のこともブラザー、シスターと呼ぶ文化の美しさが印象的だったという。途中両親の仕事の関係で帰国するも、20歳からコペンハーゲン、ロンドン、現在はLAと海外生活が長い。そんな彼女ならではの解釈をした一曲も。
「ファーサイドの『ランニン』(E)は、さまざまなアーティストにサンプリングされている名曲です。葛藤しながらも走り続けるという彼らのメッセージに、海外で孤軍奮闘しながらもキャリアを積み上げている今の自分を重ねてしまいます。当時21歳だったJ Dillaがプロダクションしているのも素敵。後半にサックスが入ってくるのですが、そこが一番お気に入りですね」
ロンドンでは、グッチの広告キャンペーンなどを手がけるクリストファー・シモンズのもとでムービーのアートディレクションを手伝っていた内田さん。LAで有名アーティストのPVや制作物をサポートし、彼らが伝えたいことをビジュアル化する。そんな仕事に、とてもやりがいを感じているそう。
「ものづくりにおいて、私が重視しているのはストーリー性。そういう意味で最も尊敬するミュージシャンは坂本龍一さんです。メロディだけなので、受け手が自由に解釈していい。3分間の音楽の中に一本の映画と同じくらいの物語を感じます。メッセージを強要されないのも心地いい」
コロナ禍でライフスタイルに変化が。「ロックダウン下では人に会うのも買い物も、なんでも意志を持って計画して行動しないといけなくなった。残念ながらコンサートの開催も難しい。ならば、今こそクリエイターの私たちが、“ニューノーマル”な生活様式に合うプラットフォームをつくっていかないといけないですよね」

D 「REDBONE」 CHILDISH GAMBINO
E 「RUNNIN'」 THE PHARCYDE