人肌をもデザインに組み込んだスキンコンシャスな新作が豊富。その根底にある思想とは?
パリ郊外のヴァンセンヌの森で披露した、ニコラス・デ・フェリーチェによるクレージュ。2022年のリゾートコレクションでは前身頃でサークル状に肌を露出させていたが、最新の春夏では三角形に進化を遂げた。リブのロングパンツを合わせ、モダンなスペースエイジルックを提案。
服飾史の系譜から見る体とファッションの関係性 by 蘆田裕史(京都精華大学准教授)
あしだ ひろし●ファッション論を専攻。ファッションの批評誌『vanitas』(アダチプレス)編集委員。最近の著書に『言葉と衣服』(アダチプレス)がある。
服飾史はしばしば「シルエットの変遷」として記述される。1960年代のミニスカート、70年代のパンツルック、80年代のパワーショルダーやボディコンシャスといった流行を見れば容易に理解されるだろう。しかし、90年代以降はシルエットの変化によって歴史を語るのが難しくなる。インターネットの普及によって、ロゴやグラフィックのようなディスプレイ上でもわかりやすい要素が重視され、2000年代から2010年代にかけては服そのものよりも背後にある物語性(たとえば、日本製であるとか、エシカルであるとか)が求められ、シルエット自体はシンプルなものになっていった。
流行は繰り返すというが、振り子のように同じところを行ったり来たりするわけではなく、つねに何らかの新しさが必要とされる。2020年代は、コロナ禍の影響によって図らずもオンライン化が進み、人とのコミュニケーションにおいても身体性が稀薄になった時代である。そのような状況の中、身体性をなんとか取り戻そうとする意思が肌見せという形で現れていると見ることもできるのではないだろうか。
1 パンデミックからの解放を願うようにバタフライモチーフを採用。繊細なカットアウト技術に惚れぼれする
2 旅が今季のテーマ。異国情緒を感じる格子状のトップスには、ヘルシーな肌がよく似合う
3 きのこのパワーに着想したサイケデリックな柄をタイトにまとう。ゆがみを感じる肌見せテクニックが新鮮
4 ワンショルダーのクロップドトップスはウエスト部分もアシンメトリーに肌見せする
photography: Masaya Tanaka 〈TRON〉(model), AFLO styling: Arisa Tabata hair: HORI 〈BE NATURAL〉 make-up: NOBUKO MAEKAWA 〈Perle〉 model: TAIRA