全身でイエローを楽しむスタイルが登場。ビタミンカラーを大胆にまとえば内なるポジティブマインドが躍りだす
「September Sun」と名付けられたイエローが、愛情深い手仕事とともにやさしく心を抱擁する。アームホールに丁寧に施されたレザーリボンのライニングが、体のラインを美しく演出。
歴史的な背景から、黄色の幸福・幸福の黄色を考える by 渡辺明日香(共立女子短期大学教授)
わたなべ あすか●1994年から東京のストリートファッションの定点観測を行う。著書に『時代をまとうファッション』(NHK出版)などがある。
服装の色には、人々の気持ちや社会状況が反映されることがある。街の様子を見ると、コロナ禍ではクリーンな白やパステル系が支持された。最近では緑や紫、オレンジなどの鮮やかな色が少しずつ増えており、中でも黄色への注目が高まっている。 中国古来の思想「陰陽五行説」では、五行を色で表す「五色(青・赤・黄・白・黒)」の中央を黄と定め、皇帝を象徴する色だった。万葉集には、春から初夏に咲く山吹の花を愛でつつ恋を詠む歌もある。ファッション史をたどると、60年代のビタミンカラー、90年代のネオンカラーなど、黄色は闊達な時代の流行色であった。
邦画『幸福の黄色いハンカチ』(’77)の庭先にはためく黄色いハンカチ、見ると幸せが訪れるとされるドクターイエローの新幹線、お金が貯まる財布など、黄色はラッキーカラーとしても親しまれている。
今シーズンはさまざまな黄色が出ているので、顔色が明るく映える「自分だけの黄色」を選んだり、小物などワンポイントで取り入れて、そのパワーを身にまとい、新しいシーズンを迎えてみてはいかがだろうか。
1 「Horizons」をイメージした今季。新しい日々の訪れを想起する太陽カラーは、ミニ丈で軽やかに。上質なレザーが体の動きにしなやかにフィットする
2 ユーティリティ要素を、目のさえるカラーでモードに昇華した
3 バカンスを夢見て素肌に重ねるのは、ノスタルジー漂うパステルイエロー
4 アメリカのファッションに着想を得て、スポーティなスタイルを提案。イエローに鮮やかなオレンジをきかせた
5 「贅沢」と「実用性」など、相反する要素を融合した今シーズン。クラシカルなジャケットも、構築的なシルエットと黄色いシアー素材のレイヤードで現代的にアレンジ
photography: Masaya Tanaka〈 TRON 〉model , AFLO styling: Arisa Tabata hair: HOR〈I BE NATURAL〉 make-up: NOBUKO MAEKAWA〈 Perle〉 model: TAIRA