モードラバーが今、伝えたいラフ シモンズへの思い。ブランドへの猛烈なパッションを語り尽くす
hideo hashiuraさん/「LAILA TOKIO」代表
時代の空気感を"保管"する、ラフの名作コレクション
コンセプトショップ『LAILA TOKIO』をスタートする際、軸の一つとなったのがラフ シモンズでした。特に大切に保管しているのは、彼自身のグラフィックを施したモッズコートや、コレクションを記録したVHS。ブランドがデビューした90年代後半からゼロ年代初頭はモノがあふれ返り、これ以上新しいものはもう生まれないと思われていた時代です。当時の過酷な状況においても、唯一無二のクリエイティブを生み出し、センセーションを巻き起こしたんです。カルチャー目線で語られることが多いですが、服作りの基本は押さえているのは、特筆すべきことですよね。デザインリソースとして参照されている点を鑑みても、次世代のデザイナーが憧れながら、闘争心をかき立てられる対象としても見られている人物。まさに"現代のファッションのスタイルを変えた人"だと思います。
(右から時計回りに)2003年秋冬コレクションで発表したモッズコート。「コレクション出張中、このコートを着ていたところ、パリの蚤の市でラフ本人に遭遇したんですよ」
パリの伝説的なセレクトショップ「コレット」で開催されたポップアップイベント「コレット ミーツ コム デ ギャルソン」。そこで販売されたヴァンズのスニーカー。全面に施したのはピーター・サヴィルのアートワーク・ラフ シモンズの1995年秋冬から1999年秋冬までのコレクションを9本のVHSに収めたもの。世界限定300セットで販売された
大平かりんさん/会社員
服愛をかき立てる鮮やかなバディ
憧れのラフに出会ったのは、ディオールの2015年 プレフォールのショーの後に開催されたパーティ。ラフ シモンズのノースリーブトップスを着ていた私を見た彼が『僕のコレクションだね。いい着こなしだ』と声をかけてくれて! 人生で一番大切な思い出です。服を買って、着るからこそ生まれるつながり、特別な体験があること。服だけでなく、デザイナー自身が好きだと示す証しになることに、気づかせてくれたんです。この出来事をきっかけに、貪欲にさまざまなプロダクトをまとってSNSで発信する、自分のスタイルが確立したのだと思います。
(右から時計回りに)LA在住のアーティストBrian Calvinとのコラボレーションアイテム
アディダスのランニングシューズ「オズウィーゴ」をラフがモダンにアップデート(※3足すべて)
映画『ブレードランナー』(’82)をテーマに発表された2018年春夏コレクションのノースリーブトップス
新村将人さん/エディター
目指すべきスタイルを定めた憧れの存在
文化服装学院の学生だった2002年。コレクション雑誌でルックを見て、あまりのかっこよさに衝撃を受けました。モードの世界に興味を持ったのも、毎回、"次はどんなことをするんだろう?"と思わせる彼のクリエーションを好きになったことがきっかけ。ファッションエディターを志す契機でもあり、長年魅了されたブランドです。ラフは僕という人間を構成する一つの要素かもしれません。学生だった当時は高嶺の花でしたが、大人になってコレクションしたアイテムとともに彼の今後の活躍にも注目しています。
(右から)2017年に発表された写真家、ロバート・メイプルソープの作品をプリントしたシャツ。「まるでアートピースをコレクションしているような気持ちにさせてくれるのも魅力です」
ニットアイテムをレイヤードして提案するルックが多数登場した2016年秋冬コレクションのコート
影山蓉子さん/スタイリスト
コートとともに"好き"を追求する
元来、楽しい服が大好きなんです。見ているだけでワクワクし、装う喜びを感じさせてくれたのがこのコート。何歳になっても、好きなものを貫きながら、進化することをいとわないという気概を感じさせます。ラフが手がける服や、それをまとうモデル、コレクションのコンセプトや、ランウェイの演出など見ていると、いい意味で"頑固者"だなと。そんな空気感が伝わってくるんです。ラフ シモンズの服が体現する"少年らしさ"って決して性別や年齢だけの話ではなく、ブレない軸を持ちながら、好きを追求する"生き方"なのかなと思います。
「白衣のようなコートにプリントされた、ユーモアあふれる落書きを見た瞬間、"これ私のための服じゃん!"と思ったんです。パリコレに着ていきました」。2015年秋冬シーズンより。デザインチームが手がけた遊び心あふれるグラフィックが全面にちりばめられた通称「落書き」コート
土屋文護さん/フォトグラファー
憧れるのは、上品でエッジィなユース像
僕がイメージするラフ シモンズは、品のよさと反骨心を兼ね備えたブランド。そんなムードにピタッとハマったのがこのコートです。ラフという存在に触れたのは、アシスタント時代。彼と写真家のデイビット・シムズがコラボレートした写真集『Isolated Heroes』でした。アントワープを舞台に一般学生を撮影しているんですが、彼らの奔放で自然な姿に衝撃を受けたんです。"恐れ知らずで、どこまでもピュア"。その姿に胸を打たれました。カメラマンとして独立して以来、ラフの作品で提案されるような人物像を意識し、撮影に臨んでいます。
「2016年秋冬のコレクションをチェックしていた際、このコートを見た瞬間ビビッときて、すかさずゲットしました。ラフらしい上品な佇まい、指が完全に隠れてしまうほど長い袖。品のよさとさりげないエッジィさが共存するアイテム。年齢を重ねても大切にしたいワードローブのスタメンです!」
飯島朋子さん/スタイリスト
物語のある服作りに心惹かれる
90年代のデビュー当時から大好きでした。アシスタント時代、とある雑誌のニューデザイナー特集でリースしたのが出合いのきっかけ。オタク的にさまざまなカルチャーを探究する彼の姿勢に感銘を受けたんです。これまで、ジル サンダー、カルバン・クライン、ディオール、プラダと名だたるブランドを手がけていますが、どこにいても彼の服作りには、毎シーズン物語がある。多方面から物事を考えることができるラフに憧れます。私はトラッドなスタイリングが好きなので、ラフお得意のロゴがあしらわれたニットアイテムがお気に入りです。
(右から)ブランドのシグネチャーであるロゴのワッペンやグラフィカルなモチーフがあしらわれたセーターとニットのマフラー。ラフ シモンズらしいトラッドなムード。「プレッピーなデザインを気に入り、購入を決めました。セーターの裾にダメージ加工が施されているのも好きなポイントです」
飯田珠緒さん/スタイリスト
精神面でのパンクを感じさせる服をまとって
ラフの持ち味のユニフォーム的要素が存分に感じられる2016年秋冬シーズン。近年のコレクションの中でもお気に入りです。それらのデザインからは表面だけの、まやかしではない、リアルなユース感覚が発揮されていますよね。ピュアで、刹那的な輝きを放つティーンエイジャーの頃の感覚を思い起こさせるんです。また、アイテムを変形させたり、パーツごとに分解したり、ともすれば単調になってしまうトラッドな装いを、破壊することで進化させていると思います。見た目だけではなく、"精神的なパンク"も体現していることが彼の服を好きな理由の一つだと思います。
(右から)2016年秋冬に発表されたニットのつけ袖とつけ襟。「パリコレに行く際、"おしゃれしよう!"と思い手に入れました。つけ袖は現地の地下鉄で片方をなくしてしまったのですが、一つになっても愛用中(笑)。つけ襟はジャケットの上から身につけています」・シャツは2022年春夏シーズンのもの