日本人デザイナーも健闘!イエールのフェスティバル第34回の受賞者は?

今年も4月末、4日間に渡って「モードと写真のイエール国際フェスティバル(International Festival of Fashion, Photography and Fashion Accessories)」が開かれました。2018年5月4日の投稿でもお伝えしたように、メイン会場はロベール・マレ=ステヴァンス(Robert Mallet-Stevens)がデザインしたモダニスト建築の珠玉、ヴィラ・ノアイユ。モード、アクセサリー、写真の3部門に渡り、各10人のファイナリスト達がコンクールの最終選考にのぞみ、会場では幾つかの展覧会も幕をあけました。
まず、モード部門のプルミエール・ヴィジョン・グランプリは、オーストリアのクリストフ・ルンフに(プルミエール・ヴィジョンはフェスティヴァルのスポンサーの一つである、生地の見本市)。土台になったのは、“ジャングルで育ち、大人になってから実は自分がプリンスだったと悟る”という自作のおとぎ話だとか。ウイーンのフリーマーケットで見つけたペルシャ絨毯やカーテンをアップサイクリングして仕立てた構築的なメンズウエアが、審査員達に高く評価されました。一方イエール市民賞に輝いたのは、ダブリンでテキスタイル・デザインを学んだロイシーン・パースWomen in Bloomと題してクロシェ、ギャザー、スモッキングなど19世紀のランジェリーに使われた手仕事を駆使したコレクションは、すべて白のコットンで。彼女がメゾン ミッシェルの支援で作った“アイスクリーム・ハット”は、今年から始まったシャネルの支援によるメティエダール賞も受賞しました。

そして審査員特別賞の栄誉を得たのは、日本人!デザイナーの土居哲也、パタンナーの戸田麻奈美と穴澤洋太の3人組です。彼らは東京モード学園で出会い、卒業後にリコール(Re:quaL)なる実験的なブランドをスタート。1年半前より、若手デザイナーを扱う渋谷のセレクトショップR for Dでも一点ものを中心に、作品を販売しています。ユーモアたっぷりのプレゼンテーションで紹介されたコレクションのインスピレーションは、パチものマーケット、トランスフォーム、そして多様性。カスタマイズしたブランドの偽造品バッグは帽子に、ケープはジャケットとしても着用可、そして超オーバーサイズのアウターは“二人羽織”と、ひねったアイテムを重ねたシルエットは想像力の豊かさを示唆します。特に、「ここのがっこう」で学んだ土居氏は、「他者に向き合うのは自分に向き合うこととも言える、ファッション・デザインの本質。それをこれからもずっとやっていきたい。そして自分らしさをもっと服に投影したい」と、意欲的です。

また連日のショーでの話題は、この春にはニナ・リッチのアーティスティック・ディレクターとしてデビューを果たした昨年のグランプリ受賞者、ボターの最新作。スポーティとテーラードをいい塩梅でクロスオーバーさせたメンズルックの数々は、刺繍や羽細工、プリーツ加工、ジュエリーなどシャネル傘下のメティエダール各メゾンの支援により実現しました。ちなみに彼らは6月のメンズファッション・ウイークにパリでソロのショールーム(おそらくプレゼンテーションも)を発表後、来年1月には初めてのショーを開く予定だとか。イエールでは、受賞者のその先も目が話せません。

Villa Noaille  Montée Noailles 83400 Hyères
〜6月は開13時〜18時(金曜15時〜20時)休 月、火、祝日
7〜9月は開14時〜19時(金曜15時〜21時)休 火、祝日

 text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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