新生パトゥができるまで。30分のドキュメンタリー・フィルム公開

ギョーム・アンリをアーティスティック・ディレクターに迎えてのパトゥのファースト・コレクションが発表されてから、もうすぐ1年。本誌3月号と2月18日配信のコンテンツでも紹介したメゾン再生の経緯を、今度はドキュメンタリーで見られるようになりました。C’est PATOU çaと題された作品の撮影・監修に当たったのは、ユーグ・ローソン=ボディ
「ユーグとはもう20年来の付き合い。僕がパトゥに取り掛かり始めた2018年末は、ちょうど彼がColette Mon Amour(セレクトショップ「コレット」の最後の数ヶ月を追ったドキュメンタリー・フィルム)の収録を終えたばかりだったんだ。で、ユーグに『一つのストーリーの終わりを撮った後、今度は新しいストーリーの始まりを記録してみては?』と、気軽に持ちかけた。そしたら彼は『じゃ、明日』と」。ギョームによれば、フィルム制作のきっかけはこんなやりとりからでした。「当初は長さなど詳しいことは決めてなかったけど、とにかくユーグには“証人”になってもらいたかった。毎日が新しいことの連続で、撮影の機会にはこと欠かなくて。歴史を持ちつつ眠っていたメゾンを一から立て直し、ファースト・コレクションをつくるという“初めて”は滅多に体験できないことだしね」

 

一方ギョームの興奮をシェアするユーグは、こう語ります。「才能にあふれたギョームは友人であるだけでなく、インスピレーション源。撮影は、パトゥ・チームがギョームとCEO二人だけから現在の30人に発展するまで、言い換えればオフィス物件を訪ねるさらに前から、9月末の最初のプレゼンテーションまで、約1年間に渡ったんだ」。フィルムではキー・パーソンのインタビューや舞台裏シーンと同時に、オフィスに届いたコピー機の梱包を開けたり荷物の搬入を自らしたり、というギョームの働きぶりが見られます。特に印象的なのは、生地の営業の女性とのアポで、コレクションの説明よりも自分の服作りを熱意を持って説明するシーン。ちなみにC’est Patou çaというタイトルは、Patouという親しみやすい響きを巡っていろんな言い回しで遊んでいるうちに決まったとか。

ギョームが“Feel good movie”と呼ぶ30分あまりのフィルムの冒頭シーンは、バックライトに浮き上がるギョームの後ろ姿。エンドロールではパリの老舗カレットによる「パトゥ」ケーキを作るパティシエの手元のアップで幕を閉じます。それはエゴに捉われず、チームワークを大切にするギョームの人格を表しているのかもしれません。

Video : Hugues Lawson-Body

このフィルムは9月初旬より、Youtubeにて視聴可能(日本語字幕付き)。待ちきれない!と言う人は、@LVMHをチェックして。ロックダウン期に遡り、ギョームがその仕事ぶりや好きな音楽などについて語るインタビューがIGTVで見聞きできます(英語字幕つき)。またフィルム公開と時期を同じくして、日本では伊勢丹新宿と梅田阪急の2つの期間限定ストアも開催予定。これに先駆け、patou.comではe-shop日本版もスタートしました。C’est PATOU ça!

Text : Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

記事一覧を見る

FEATURE