ファッションやライフスタイルのイベントやギフティングで、各プロジェクトの色をより強く主張するのが、創作フード。この分野でパリで最近引っ張りだこなのが、フランスx日本のデュオによる、バルボステです。
ケータリング・サービスと言うより、“食のクリエイション・スタジオ”であるバルボステのファウンダーは、シャルロット・シットボンさんと金子さやかさん。パリジェンヌのシャルロットさんはジュエリー職人の家系に生まれ、広告代理店でビジュアル・コミュニケーションの腕に磨きをかけました。アート・ディレクター現役時代、フード撮影好きが高じて夜な夜な開発していたのが、豆腐などヘルシーな具を詰め、カット野菜で繊細に装飾したアーティな生春巻き。これが友人たちや撮影スタッフの間で話題になり、徐々にケータリングを行うようになったのです。
一方金子さんは日本では作業療法士、2006年にパリに移住してからは、貿易の仕事の傍ら和食を追求。シャルロットさんが、料理の写真の投稿を続けていた金子さんをインスタグラムでスカウトすると、二人はすぐに意気投合しました。ちなみに“バルボステ”とは、シャルロットさんのルーツであるユダヤ文化で“家を切り盛りする女主人”の意味(イーディッシュ語)。5年ほど前にインスタグラムでの投稿を始めると、初めて舞い込んだのが2017年、シャネルのハイジュエリーのプレゼンテーションでのフード・クリエーションでした。その後はグッチxケン・スコットのローンチング・ギフト、ランコム、ギャラリー・ぺロタン、ショーのプロデュースでは第一人者のビューロー・ベタク、アクネ・ペーパー、そして元コレットのサラによる出版部門であるジャスト・アン・アイディアなど、ファッションからビューティ、カルチャーまで、活動の範囲は果てしなく広がります。
バルボステのメニューの核は、レシピや装飾のバリエーションが無限大の生春巻きと、色、形やフレーバーまで七変化する琥珀糖、クリスト。クリストのユニークなフレーバーは、”抹茶&りんご、ルイボス・ティー&ヴァニラビーンズなどなど。仕事を請け負う際、まずはテーマの説明があると、メニューにバオやモチなども加え、シャルロットさんによるムードボードとデッサン、そして金子さんによるレシピと材料、分量など技術面の説明から成る、企画書を用意します。サンプルのテイスティングも、欠かせないプロセス。時にはブランド側のクラフツマンシップを自分たちのクリエイションに反映させることもあるとか。最近ではアクネ・ペーパーのイベントにて、テーマ・カラーのグリーンに合わせたメニューを展開した他、夏休み明けにはジュエリー・ブランド「ネレイド」のためにビスケット地でバスケットやジュエリーを創ることが予定されています。
またエネルギッシュな二人は、パリ10区のアトリエ&ブティックも定期的にアップデート。ここでは定番クリストをはじめとするオリジナルの食品や彼女たちの目にかなったオブジェなどを販売するほか、料理教室も開催しています。
Text: Minako Norimatsu