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“コットンのカシミヤ "、【スーピマ・コットン】を着てみたい
スーピマ・コットンとは?
スーピマ・コットンは“コットンのカシミヤ”といわれる最高級綿。エジプト綿とアメリカ綿との異種交配による高級綿種、ピマの中でも最良レベルを意味する「スーペリア・ピマ(Superior Pima)」の略語で、スーピマ100%の素材にのみ与えられる商標です。細くて35mm以上ととても長い繊維(平均は20mm代)が特徴で、結果的に糸の繋ぎ目は最小限。そのためスーピマ・コットン使用製品は長持ちし、サステイナブルにつながります。しっとりとした触り心地で、その風合いは洗濯を重ねても衰えず。また毛羽を抑える紡績方法は毛玉を防ぎ、糸にハリ感とツヤを与えます。さらに染料を吸いやすいので色ムラにならず、深みがあって鮮やかな色合いの仕上がりに、とスーピマ・コットンはいいことづくし。その品質基準は、1954年に発足した非営利団体、スーピマ協会によって厳しく管理されています。
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ボタンウィロー・ファームの畑に広がる綿花。Photo: Minako Norimatsu
ゴシピウム・バルバデンセ種の球根から育てられるスーピマの栽培は一年を通して温暖で乾燥した気候を要するため、産地はアメリカ南西部のカリフォリニア、テキサス、アリゾナ、ニューメキシコに限られています。栽培に携わる500ほどの家族経営の農園は、いずれも数世代に渡ってスーピマ・コットンを専門としているとか。スーピマ協会のヴァイス・プレジデント、バクストン・ミディエッテはこう語ります。「それぞれの農場は競合意識を持つことなく、情報交換をして最高のクオリティを保つために協力し合っているのです」。
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スーピマ協会のヴァイス・プレジデント、バクストン・ミディエッテ。Photo: Minako Norimatsu
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カリフォルニアのボタンウィロー・ファームで、綿花の収穫を見学
スーピマ・コットンはどこで見られる? 買える?
それでは、スーピマ・コットンは実際にどこで見て、触って、入手できるのでしょう? 素材にこだわってスーピマ・コットンを取り入れているファッションやライフスタイルのブランドには、大手ではバーバリーからラコステ、サンスペル、ブルックスブラザーズ、日本の若手ブランドではエクストラレス、カルナ、アイダ、そしてタオルの今治浴巾など、数多くが挙げられます。またスーピマ協会は、若手デザイナーのクリエーションのサポートにも積極的。ニューヨークでFITやパーソンズといった学校と協力して、ファッションウィーク中に開かれる「スーピマ・デザイン・コンペティション」の最新版では昨年秋、ジェレミー・スコットを審査員に迎えて話題を呼びました。またフランスでは南仏イエールの国際モード・フェスティバルに協賛し、その流れでパリにて「スーピマ・デザイン・ラブ」を開催。アメリカ大使館でのイベントでは、若手デザイナーから確立されたブランドまでを招き、スーピマ協会提供による生地で募ったデザインが展示されます。生地といえば、かつてはシャルル・ドゥ・ヴィルモランのコレクションも、スーピマ協会から提供された生地のおかげで完成したとか。
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今治浴巾から、スーピマコットンを使用した製品。(上)<スーピマコットンオーガニック使用> イデゾラ オーガニック (下)イデゾラプレミアム スーピマコットン無撚糸シリーズ
カリフォリニアに、スーピマ・コットン協会公認の農園をたずねる
またスーピマ協会では15年も前から、毎年秋の綿花の収穫期に取引先を農園に招いています。環境への考慮から、灌漑システムの水効率と土壌の健全性を誇る農園は、いずれも数台ものジン(18世紀に発明された、種と繊維を分ける綿繰り器)を備えた工場を併設。収穫から生産工程までの証人となるゲスト陣は今年メディアにまで広がり、私たちは11月にカリフォルニアのボタンウィロー・ファームを訪ねました。ロサンゼルスから車で2時間の道中でバクスターか教えてくれたのは、協会が始めたデジタル・トラサビリティのプログラム、AQRE(Aithenticity, Quality and Responsibility)について。まるでDNA検査のように、品種や生産地から購買先までをたどって鑑定できる、特許登録済みの最新技術です。「信憑性はラグジュアリーの出発点ですから」とは、バクスター談。「スーピマ協会公認の農園では、スタッフたちの労働環境も公開しています。私たちにとって、ファーマーはアーティスト。彼らのことをとても大切にしているんです」。
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ボタンウィロー農場に近づくと、まず目に入るのはなんともフォトジェニックなサイロ。Photo: Minako Norimatsu
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トラクターで収穫後の綿花はこんな状態。ここから、まずは不用物や種を取り除く作用が始まる。Photo: Minako Norimatsu
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ちょっとレトロなデザインのジン(綿繰り器)は、まるでジュークボックス。Photo: Minako Norimatsu
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ボタンウィローの工場。Photo: Minako Norimatsu
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ボタンウィローの工場。Photo: Minako Norimatsu
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工場内のベルトコンベアー。Photo: Minako Norimatsu
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梱包された綿の出荷作業は、アメリカの大地を象徴する風景。Photo: Minako Norimatsu
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パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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