この12月、フランスでは毎年の年末に増してお祝いムードが高まっています。今回は、クリスマスを記念する風景を幾つかお届けしましょう。
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古城でのイベントやポップアップも! 心躍るフランスの冬景色
この12月、フランスでは毎年の年末に増してお祝いムードが高まっています。今回は、クリスマスを記念する風景を幾つかお届けしましょう。
お城を舞台に、ベルナルドの陶器と花の演出
まずはパリからちょっと足を伸ばし、ロワール地方のシュノンソーへ。パリからT G V(高速電車)で約1時間、そして車で約30分走ると幻想的なシュノンソー城に到着しました。ほとんどの城が男たちの権力誇示の舞台だったのとはまったく異なり”女性たちの城“と呼ばれたここは、元々16世紀の国王アンリ2世が妾のディアンヌ・ドゥ・ポワティエに贈った館。アンリ2世の死後は正妻の王妃カトリーヌ・ド・メディシスが妾を追い出して王子と共にここに住み、頻繁に豪奢な宴を催していたとか。彼女は故郷フィレンツェの風景をこよなく愛するあまりイタリアから鳥の専門家を呼び寄せました。そして餌を与えるために一時確保したカラフルな鳥たちが、庭に見立てたギャラリー(ルネッサンス様式に顕著な、細長く大きなサロン)に放されて飛び回るのを眺めて楽しんでいたそうです。
そんな逸話に基づいてこの冬にシュノンソー城とのコラボレーションでUn Noël de Porcelaine(陶器のクリスマス、の意)を催しているのは、鳥シリーズのテーブルウエア「オ・ゾワゾー」(Aux Oiseaux)をアイコニックなコレクションとする、陶磁器メーカーのベルナルド。リモージュ地方で1836年に創業し、五代目となった今でもファミリービジネスでクラフツマンシップを守り続けるベルナルドは、フランスのアールドヴィーヴルにおいて最も大切なメゾンの一つです。4年前にはシャネルのメチエダールのショー会場となったギャルリーには70席を設けた30Mもの長さのテーブルで壮大な食卓が設置されました。
フラワー・アレンジメントは、MOF(フランスの最高級職人)の称号を持つジャンフランソワ・ブシェ(Jean-François Bouhcer)。“花の城”とも呼ばれるここには1ヘクタールの花園があり、100種余りの草花、野菜が栽培されています。ブシェはこう言った自前の素材を中心に野生の草花や時には外部からのエキゾチックな植物も取り入れ、年間を通じて敷地内のアトリエで季節のコンポジションを手がけているのです。この年末は特に城内の各部屋で、17もの異なる演出を創作しました。
Un Noël de Porcelaine展はChâteau de Chenonceauにて、1月5日まで。
展覧会後も、お城のビジットは年間通じて可能。定期的に開かれるMOFフラワー・アトリエのプログラムは公式サイトで。
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何ともロマンティックな、雪景色のシュノンソー城。Photo: Courtesy of Château de Chenonceau
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カトリーヌ・ド・メディシスが鳥を放ち、宴を催したと言うギャラリーは、66mと細長い。2020年にはシャネルのメチエダールのショーのランウェイとなった。Photo: © Franck Juery
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ギャラリーのテーブルセッティングは、色とりどりに展開。Photo: © Franck Juery
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ギャラリーのテーブルの主役はゴールドの枝にとまる鳥や蝶を描いた「オ・ゾワゾー」。クリスタルのグラスバカラ。Photo: © Franck Juery
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タピスリー脇の設置では、ベルナルドの「キンツギ」コレクションの色に合わせてゴールドに着色した枝、茎や姫りんご、白の花で。Photo: © Franck Juery
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ドラマティックな赤のアレンジメント。花瓶はベルナルドの「オロ」。Photo: © Franck Juery
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ベルナルドのリトファニー(レリーフを施した素焼きの陶磁器)を使った演出。中にライトを灯すと半透明の素材から柄が浮かび上がる。Photo: © Franck Juery
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トーンの異なるリトファニーを無数に使ったセッティングが幻想的なコーナー。Photo: © Franck Juery
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フランソワ一世のサロンで、ルネッサンス絵画を背景にベルナルドの磁器の花瓶をフィーチュアしたセッティング。Photo: © Franck Juery
サラ・アンデルマンのクリスマス・ポップアップ
一転して、パリではコンテンポラリーでポップなAttention, Fragile!へ。1997年から20年間、パリのコンセプトストアとしてトレンドを牽引したコレットの共同ファウンダー、サラ・アンデルマンのキュレーションによるクリスマス期間限定ストアです。彼女が本をテーマにパリの百貨店ル・ボンマルシェで大規模な展覧会とポップアップMise en Pageを展開したのは、去る2月のことでした。それ以降アートバーゼル・パリの売店を始めストア・キュレーションを重ねる彼女の今回のコラボレーターは、権威あるオークションハウス、サザビーズ。会場は10月にオープンしたばかりのサザビーズの新しい建物内1階(日本の2階)です。
本業はラグジュリアスなアートやオブジェ、ジュエリーなどの展示・競売と言えど、サザビーズの新しい試みは、プライスをフィックスしての“バイ・ナウ”コーナーや、売る目的ではなくとにかくレアな逸品を展示するギャラリー、そして期間限定のコンセプトストアです。Attention, Fragile!はオブジェ、文房具、絵葉書、ゲーム、ジュエリー、本、テーブルウエア、そしてチョコレート、パネトーネやビスケットまでの雑貨や食品、加えて身近なアート、さらにスケートボード・カルチャーに基づく品揃え。またオリーヴオイルのテイスティング、本のサイン会など様々なイベントは、サラのポップなテイストとネットワークの広さを物語っています。
サラ・アンデルマンによるクリスマス・ポップアップAttention, Fragile! はSotheby’s Parisにて
83, rue du Faubourg Saint Honoré 75008 Paris
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Attention, Fragile!ではイネス・メリアによるユーモラスなアート作品も展示・販売。Photo: Courtesy of Sotheby’s
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Attention, Fragile!のウインドウの一つ。サザビーズのBuy Nowセレクションからのジュエリーと、スケートボードのウイール、ミニチュアのスケートボードを合わせて。Photo: Courtesy of Sotheby’s
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スケートボード・カルチャーではカルト的な存在、アーティストRaphael Zarkaによるスカルプチャ―。Photo: Courtesy of Sotheby’s
パリの街中に見る、クリスマスの風景あれこれ
パリの中心、チュイルリー公園ではリボリ通り側に設置された毎年恒例の移動遊園地に、スイーツからギフトまでを扱うオーセンティックなクリスマス・マーケットが併設されていて、連日大変な賑わい。夕方以降カラフルにライトアップされた遊園地のアトラクションは遠くからでも見えるので、街の風景の彩りにも一役買っています。
また公園からほど近いヴァンドーム広場には、ルイ・ヴィトンのカルーゼル(メリーゴーランド)が登場。同ブランドのキャンペーン・ビデオに見るカルーゼルに、実際に乗ることができるのです。ダチョウ、シマウマ、カタツムリ、レオパード…。動物を象ったカラフルなカルーゼルの座席をルイ・ヴィトンのウインドウに見て、足をとめた人も多いでしょう。今回カルーゼルがフィーチュアされたのは、1900年のパリ万博に出品していたルイ・ヴィトンのブースで、トランクや旅の小物のプレゼンテーションに、ヴェルヴェットで覆ったカルーゼルが舞台に使われたことへのオマージュだとか。またグランパレではメイン会場がスケートリンクになり、街中にはちょっとレトロなポスターが点在しています。
今年は壮大なセレモニーで幕を開けたオリンピック競技が世界中を沸かせたり、ノートルダム寺院が衝撃の火災後数年間の工事を終えて再びドアを開けたり、と記念すべきことが多かったパリ。街中が何かしらの理由でお祭り騒ぎになるたびに引き合いに出される言葉「Paris est une fête」(ヘミングウェイの有名な小説『移動祝祭日』の仏語タイトル」を思い出すと、何やら感慨深い2024年の12月です。
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チュルリー公園にはジェットコースターからティーカップ、ゴーカート、空中ブランコなどなライドアトラクションが並ぶ。Photo: Minako Norimatsu
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チュイルリー公園、左岸側からリボリ通りを臨んだところ。観覧車は夜になると青、白、赤のトリコロールにライトアップ。Photo: Minako Norimatsu
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1900年の建造のモニュメント、グランパレのボザール様式のファサードに掲げられた、スケートリンクのポスター。期間限定スケートリンクは1月8日まで。Photo: Minako Norimatsu
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カルーゼル橋から臨んだシテ島。右手の放射線状のライティングが、再オープンしたばかりのノートルダム寺院。Photo: Minako Norimatsu
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パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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