ねこまき団子にキュン

懐かしのピーターラビット。このキャラクターの影響が大いにあるのでしょうか、私はいまだに動物の「アーモンド型」の瞳を見るとキュンとします。小さい頃に親しんだ手のひらサイズのこの本が、いまだに捨てられません。とはいえ、もう20年以上はページを開いていなかったところ、最近ディーン・フジオカさんで「ピーターラビット展」が話題になったことで思い出し、これを機に読んでみました。「可愛くて癒されるんだろうな」くらいの認識でしたが、気が付いたらあっという間に全巻読み終わっていました。つまり、大人が読んでも面白かったということです。 ということで勢いづいて、Bunkamuraの「ピーター・ラビット展」にも行ってみました。作者のビアトリクス・ポターが「ピーターラビットのおはなし」を出版しようとした際、どこの出版社にも相手にされず、自費出版した原画44枚が展示されていました。このとき私は、先日写真展も開催されていたジュリア・マーガレット・キャメロンのことを思い起こしました。活躍した年代は少し違いますが、周囲がどう評価しようと、自分の作品の力を信じてそれを世に送り出そうとする信念に相通じるものがあり、二人の気持ちの強さに思いを馳せたのです。 ほかにも水彩の絵本の原画やスケッチが公開されています。たしかな描写力で動物のキュンとくる動作をとらえ、鋭い観察眼で周りの人間のキャラクターや行動原理をすくいとってそこにブレンドする。ビアトリクスのそんな底力を感じます。 今回、一番の再発見は「絶妙な毒かげん」でしょうか。ビアトリクスの真骨頂がここにあります。たとえば、ピーターラビットのお父さんはマグレガーさん(人間)の畑で事故に遭ってマグレガーさんの奥さんにパイにされてしまうのです。また、私が好きなエピソードは、こねこのトムが、ねずみのひげのサムエルにつかまってねこまき団子にされてしまう「ひげのサムエルのおはなし」(好きすぎて、絵葉書も買ってしまいました)。わるいうさぎがいいうさぎからにんじんを奪って食べていたら、てっぽうで撃たれてしっぽがつるっと取れてしまった「こわいわるいうさぎのおはなし」。人間顔負けの狡猾な動物も出てくるし、性格はいいけどまぬけな動物も出てくるし。それらが遠慮なくひどい目に遭わされつつ、決定的に残酷ではないところが絶妙なんです(パイにされたお父さんは悲惨ですが・笑)。小さい頃はそこまでこの毒を意識していませんでしたが、大人になってからお話を楽しめたのは、これがあるからでしょう。 その毒も含めてクスッと笑って癒されるというところに、大人に成長した自分を見出したのでした。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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