ヴィンテージの恋と効用

一目惚れと呼ぶほどドラマチックではなく、心のなかにすとんと落ち着いて居場所を確保していた……。つい最近、表参道の「サニーヴィンテージ」の店先で出会った70年代のリングはそんな恋の相手です。ムーンストーンのそっけなさと、丸みを帯びたフォルムに心惹かれて買ったその日から、もう何年も一緒に暮らしているかのような顔をして私の手元で澄ましています。つけない日はちょっと落ち着かない気さえするほど。ワードローブの新参者のくせに、日々のコーディネートに欠かせない存在になっていて、面白いことに、自分が以前から日常的に使っている腕時計とすっかりペア感を出しているのです。ベトナム戦争時に使い捨てを意図して作られたというオモチャみたいなミリタリーウォッチには、なかなか似合うジュエリーが見つからなかったのに。この馴染みっぷりは、ヴィンテージならではなのかしらん。毎年、いろいろな服や小物に恋をするけれど、自分らしさを作るモノと自然に恋に落ちるのは、幸せな買い物のひとつなのだと思います。

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エディターIWAHANA

日々、モード修行中。メンズとレディースを行ったり来たりしています。書籍担当。どうぞよろしくお願いします。

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