2018.11.20

勝手にノルマンディー第三弾 イケてる? イケてない? サティ・ミュージアム

夏休みに滞在したオンフルールで、ツーリスティックでありながら良い意味で想像を絶したのが、エリック・サティの生家に建てられたミュージアム Musee maison satie

恥を覚悟で白状しますとサティ初心者です。「ジムノペディ」知ってる、「グノシエンヌ」はなんだか不穏で好き、「ジュ・トゥ・ヴ」とか旋律を聞いたら知ってる曲が結構ある、ってなレベルです。そんな初心者だからこそ、楽しめたのかもしれません。

生い立ちから順を追って作品やゆかりの品々を懇切丁寧に解説、というタイプのミュージアムではありません。ひとことでいうとサティの世界を体感する展示でしょうか。

大量のこうもり傘、うごめく梨、教会とキャバレーが並存する部屋。階段の踊り場では機械仕掛けの猿におじぎされ(ちょっとコワイ)、たどりついた最上階にはサティの好きな白の空間に彼の曲を奏でるピアノが置かれています。

斬新だったのは遊園地も真っ青なインスタレーション(?)。

上の写真、席に座って必死にペダルを漕ぐと(必死に漕がないと動きません)、真ん中の傘が開きそこにぶら下がっている靴やら楽器やらが回り始める摩訶不思議なインスタレーション。その隣にあったオブジェは「演奏し終わると爆発する」という幻の楽器「セファロフォン」をイメージしているのでしょうか(推測の域を出ません)。

退館しようとすると、スタッフに奥の目立たないドアを指差され、「なんでここを見ないの!?」とジェスチャーで伝えられます。ここは出色の空間でした。いわば小さな“劇場”。壇上ではサティにまつわるフィルムが上映されています! バレエ・リュスのために描かれた「パラード」やルネ・クレール監督の「幕間」。大砲のまわりをぴょんぴょん飛び回る山高帽に付け襟のおじさん、そう、動くサティ御仁を目にすることが出来るのです! 今時youtubeでいくらでも掘り出せる映像かもしれません。でも、「パラード」に出てくる中国人マジシャンや二人羽織ならぬ二人馬人間のキュビズム的なアートワークが散りばめられた空間で、ビロードのソファに座り、貴重な映像に没頭できるなんてなかなか出来ません。

サティ・ファンが時折このミュージアムに厳しいレビューを寄せていらっしゃいます。確かに本格的な知識をお持ちで真摯にサティのクリエーションと向き合っている方は、下世話すぎると感じるかもしれません。ですが、風変わりでナンセンスな世界に触れてみたいと思う私のような初心者は、案外楽しめると思います。

話は飛びますが、先日やっと観ることができたチリー・ゴンザレスの映画Shut up and play the pianoで、サティが脳裏をよぎりました……反骨心や変人っぷり、かいま見える純粋さ。こちらは日本でまだ観ることができますので(そろそろ上映終了の映画館も多いのでご確認を)、お時間がある方はぜひ。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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