最寄り駅で時々見かけるサラリーマン。階段を颯爽と駆け上がっていくのですが、この人、手ぶらなんですよ。いわゆる「背広」から、ジャケットを差し引いた格好。お尻のポケットに、たぶん携帯。で、そのポケットの上の腰に、小さい団扇を差し込んでいるんです。きっと暑がりなんですね。スポーティな天狗みたいで、なんて身軽なの……と眺める私。でもこのご時世、真似はできない。ニュー・ノーマルの生活の中、必需品も様変わりしましたから。
そこである日の通勤時「バッグの中身・私の場合」をご紹介。
右上から、替え用の爽やかシャンブレー素材の布マスク、極薄素材の使い捨て手袋と、綿棒を納めたジップロック（目や鼻がかゆくなったら、これで対応。指では絶対に顔に触れない）、ハンカチ、サニタイザーに抗菌ウェットシート。通勤用に加えてキャッシュレス化のためのICカード。鍵のようなものは、非接触のための真鍮製ドアハンドルキー。エレベーターは極力乗りませんが、必要なときはこれでボタンを押します。左端は、ビオレの「冷タオル」。マスク着用の夏日には、これで肌を冷却。そして困ったときのテンポティッシュ。
ICカードは機動力を重視して、外側のポケットに。ケイト・スペードのこのバッグ、センターがスカラップのようになっているため、ササッと華麗に取り出せます。ちょっとしたスリットが大きな差を生むのです…！
斜め掛けのハンドバックの内側に、整然と収められています。蛇腹式なので、収納力が目覚ましい。
PCは四葉模様のビッグトートに収納して、こんな出で立ちで通勤。
転じて、リモートワークの日。ひとり部屋にこもる孤独な業務の癒しになるのが、そうですお花です。時々、近所の生花店に足を運んでは、心の滋養を補給。例えば、こんなスタイリングで出かけます。
中身は、こう。Vlog練習のために、DJI Osmo Pocketを忍ばせてナイスな景色を見つけたら、すかさず動画撮影。香川照之さんがトヨタ自動車のCMで握っている、あのジンバルカメラですね。手のひらサイズなのに、機能は抜群。そしてハンカチとカードケース、日焼け防止のサングラスというセットです。
ちなみに買い求めたアリウムは、松村英治さんの浅葱色のうつわに。バッグも含めて蒼の三段活用グラデーションに、しばしの眼福タイム。
こちらのハンドバッグ、クロージャ―部分がアッと驚く可愛さなのにもうお気づきですね？ くるっと閉めると♡のかたち。
開ける際は、こうなります。ああ、アナタがワタシでワタシがアナタで。スペードとハートはひとつだったのねと気づかされます。
ちなみに付属のストラップは2種類あって、チェーンのすまし顔もいい感じ。
ブランド名の「スペード」は、あちらこちらにその姿を潜めています。たとえばバケツ型の「ドリー」（写真左）。編み込まれたレザーひとつひとつも、ほら、スペード型なんですよ。
スペードだけじゃありません。普段、PCを入れている大容量の「エブリシング スペード フラワーラージトート」（写真右）は、クローバーを良く見ると、四つのアレだと分かりますよね。
ライニングは、うっとりするほどなめらか。ファスナー式のポケットと、スリップインポケットに分かれていて、どんなに整理が苦手でも、散らからないはず！
♠→♡の変身が楽しくて、ひとりのときでもにやにやとクロージャ―を触ってしまう私。アングルによって、まったく異なるムードになるさまは、作り手であるクリエイティブ・ディレクターのニコラ・グラスとも重なります。プラチナブロンドのショートヘアに、フェミニンなドレスをまとったニコラ自身も、尖っていて柔らかな、相反する魅力にあふれた素敵な女性なのです。
取材した際、そういえば彼女はこんなふうに語っていました。
「バッグはファッションだけでなく機能性も大切。私が力を入れたいのは、持っている人に“特別”だと思ってもらうこと」、「使う人が“発見”の楽しさも感じられるように、細部にはこだわっているわ」と。
この言葉どおりのバッグの正式名称は「ニコラ ツイストロック ミディアム コンバーチブル クロスボディ」。触れるたびに思うのです、あの手ぶらのMr.天狗にも、ニュー・ノーマルでのバッグの役割を伝えたいと。
おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。
