透明感と、こんがりお菓子。二つを共存する香り

しばらく香水を変えていなかったので、ふと思い立ち、フエギア1833の店舗へ行ってきました。ここでは人生の大事な瞬間、瞬間にあったフレグランスが見つかるんです。たどり着いたのはこちらの名香、Huemul(ウエムル)。アルゼンチンとチリの山に生息するゲマルジカのことを指します。ひと吹きすれば、脳内の大自然を野生のゲマルジカが颯爽と駆けていきます。


これをつけていると穏やかな気持ちに包まれます。たとえるなら……。窓も曇るような日曜日の朝、窓を開けてフレッシュな空気を入れます。と同時に、沸かしたミルクに茶葉と砂糖を入れてゆっくりとミルクティーをこしらえる。あったかいニットに袖を通し、ブランケットにくるまりながらいただく……。以上は私の理想的なファンタジー休日なのですが、まさにそんな幸せな妄想を描きたくなる香りなんです。


ベースとなっているのは植物由来のムスク。肌のぬくもりを感じさせるやわらかさながら、不思議と朝霧がたちこめる森の中に立っているかようなすがすがしさも持ち合わせています。そのあとに気づくのは、焼き立てのお菓子みたいなこんがりとした甘さ。これはマソイアという樹のノートによるものなのですが、ココナッツ、あるいは焦がしバターにも似たミルキーな香り立ちで、心を幸福感で満たしてくれます。残りの構成要素、ジャスミンノートは、そこまで主張してきません。このフレグランスの凛とした色っぽさをそっと後押ししているイメージです。

これをつけている日はなんだか一日明るい気分でいられます。お店の方が、「周りの人には、その人の肌自体が香っているかのように感じられる不思議なフレグランスですよ」とおっしゃっていたとおり、とてもインティメイトに漂うにおい。ぜひ体験してみてください。

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。

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