フィジカルでの打ち合わせに訪日デザイナーの取材、ニューショップのお披露目会……。多くの人と対面する機会がすっかり戻ってきたこの頃。自身も30代を迎えて、服装や振る舞いについて「きちんとせねばなあ」と感じる機会がグッと増えました。動きやすくラフな服装が多いのですが、そんな日こそバッグとジュエリーが品格の要だな、と。思い返すとここ数年のマイ定番はミニバッグ+布サブバッグ。そしてそのサブバッグ、わりと使い込みがち。お気に入りだからこそガシガシ愛用するわけですが、そろそろ上質な仕事バッグをひとつ持っていてもいいのでは? という気持ちがムクムクと湧いてきたんです。2022年10月号で「名品は時代を超えて愛される。私たちの『3世代バッグ』」なる企画がありましたが、私も孫世代(子どももいませんが……)へとバッグを育て始めてもいいんじゃないか、と。孫じゃなくても、いつか大切な誰かに引き継ぎたいほど長く愛せるものをゆるゆると探していたんです。
手に入れたのは、「パズルトート」でした
そんな経緯から、脳内のウィッシュリストに連なっていた中で、最終的に白羽の矢が立ったのがこちら、ロエベのパズルトート。きっと皆さんもどこかでご覧になっているでしょう。2023-‘24年秋冬コレクションから誕生した新作です。レザーピースを組み合わせた「パズル」とアーカイブスの折り畳める「オリガミ」バッグが融合。日本の折り紙のようにフラットに変形する秀逸な設計です。ぴりっと効いたミニマルなアイデアに、ジョナサン・アンダーソンらしい美学を感じますね。初めて実物に触れたのは、展示会のとき。緊張しつつ手を伸ばすと、シャイニーカーフスキンのあまりになめらかでしっとりした質感に感激……。その場を後にしても、パズルトートめっちゃ素敵だったな〜〜〜と心の片隅に残っていたのです。
そして数日経っても、やはりあのバッグは脳裏に焼き付いて離れない。これこそ求めていた「3世代バッグ」なのでは、と徐々に思えてきたんです。今秋にヨーロッパへの出張が控えていたこともあり、折り畳めるデザインはスーツケースに収納するにもまさにぴったりなのでは……と買い物の理由が揃ってきたところで、いざ銀座店に足を運びました。
折り畳むと、こんなにフラットに
さて、最初に目をつけていたのはミディアムサイズ。ただなんと日本では全店売り切れであることを知り……一足出遅れてしまったと気落ちしつつ、メンズラインのラージサイズも素敵かも、と試してみることに。いざ携えますと意外とこの大きさが今っぽい感じがしていい。ショッピング目線でお届けした2023年春夏コレクションのレポートでも「ビッグバッグ」の隆盛を取り上げたことが記憶に蘇りました。ただ予算より金額が上がるのでしばし悩みの迷宮へ突入……。
ただ、再びつぶさに現物を観察すると、表地の美しさはもちろん裏地のスウェードも心地よい肌触り。さすが老舗のレザーブランド、永遠に撫でていたいほどなめらかなんです。そんな素材の上質さを引き立てるように、デザインは内ポケットも配さずミニマルでシンプル。エッジを縁取るステッチや縫製も、細やかで丁寧な仕事が伺えます。また、トートバッグにおいて個人的に大事なのがハンドルの長さ。冬に厚手のコートの上からも難なく持てるくらいのレングスがあり大変ありがたい(短いとアウターからずり落ちてしまい、地味なストレスに)。ゴールドのロゴも控えめで“クワイエット”な存在感です。
とはいえ一生使うぞ! の勢いで買い物に来ているため、バッグを合わせつつどう思いますか? 私には大きすぎますかね? としつこくスタッフの方に意見を求める私。「仕事道具をたくさん入れるなら、満杯よりも余裕があるくらいが素敵だと思います」という優しい言葉が迷宮の出口を指し示してくれました。大は小を兼ねるしむしろよりいい、ということなのかもしれません。いざ迎えてみて、やっぱりラージサイズのパズルトートは正解だった、と思っています。
ラージサイズは、大荷物派でも余裕あり
毎日の持ち物はこんな感じで、並べてみるとやはり多い。MacBook Air、(写っていませんが)iPad、読みかけの本、文房具、フレグランスとコスメ、モンベルの折り畳み傘、サングラス、体が冷えた時と日除けに使うスカーフ……などなど、結構持ち歩いているなあ、という感想です。とはいえこれらを収めてもゆとりがあるほど。開口部からはガバッと中身が見えるので、必然的に入れ方をオーガナイズする意識も向上。バッグ本体も軽量なことに助けられています。
新しいバッグと過ごしつつ思い出すのは、残念ながら去る7月16日にこの世を去ってしまった永遠のファッションアイコン、ジェーン・バーキン。改めて、聡明で素敵な彼女が、使い込まれた「バーキン」バッグを胸に抱き締める写真に心を揺さぶられました。ネックレスやビーズのブレスレット、コインやお守りもたくさんぶら下げて、自分らしくアイテムを愛し抜けたら素敵ですよね。私は足元にも及びませんが、そんな“育て方”をして、ゆくゆくは誰かの元へ……そんな青写真を描いています。