染めや織り、刺しゅうなど丁寧な手作業による民族衣装。その民族に根付く文化や技術を体現した特別な一品が、芝田さんの手元へ
生活の知恵と技術を集約して
ミャオの巻きスカート/中国
布市場をうろうろしていたときに声をかけてきたコレクターの自宅で発見。天然の藍染布に、卵白や豚の血を塗り、ツヤとハリを出す加工が施されている。「上衣にはろうけつ染めで デザインを施したAラインの上着を着用するようです」。中国は漢民族が92パーセントを、それ以外の少数民族が8パーセントを占める。ミャオは、山奥などハードなエリアで暮らしてきたため、民族間の交流がなく、各グループで独自の文化が形成された
衣服としてまとうアート
ブショングの巻きドレス/コンゴ民主共和国
現コンゴ民主共和国エリアで栄えたクバ王国のなかでも、最も大きなブションググループの衣服。衣服といっても4メートルに及ぶ布で、体に巻きつけて使う。男性用をマフェル、 女性用をンチャクと呼び、前者には身分に応じたデザインのルールがある 一方、後者は自由。男女の共同作業で作られており、男性は織りを、女性はアプリケを担当する。「クバといえばこれ。クバテキスタイルと呼ばれ、特に欧米で人気のコレクターズアイテムです」
使い勝手より、美しさを
ベルベルのフリンジバッグ/モロッコ
レザーに革紐で刺しゅうを施した男性用のショルダーバッグ。感触は硬く、マチもないため、荷物はほとんど入らない。モロッコ北部に位置する山岳地帯、リーフ地方のものと推測される。「買いつけ最後の夜に店じまいしようとするお店に滑り込んで購入しました。このバッグを買ってしまったために、その後に予定していたいちばんお世話になっている人との商談でお金が足りず、その結果申し訳なく思いつつもかなりおまけしてもらうことに」
装うことへの情熱に想いを馳せる
ミャオの男性用コート/中国
藍染めのあと、別の植物を使ってさらに染めることで、黒に限りなく近いブラックインディゴになり、深みとツヤのある仕上がりとなっている。表面にはつまんだりひねったりしたしぼ加工、裏地には刺し子と手間のかかった一着。「これこそ使えるアンティーク、街に着ていけるヴィンテージ。貴州での買いつけはどこよりも大変かも。ワンツースリーも通じないので、筆談とジェスチャーと想像力必須。コミュニケーション力が磨かれます(笑)」