2024.12.09

俳優・のんが愛用する定番のファッションアイテム【あの人のお気に入りvol.12】

SPUR.JPの連載「あの人のお気に入り」第12弾は俳優、歌手、アーティストなど、多様なジャンルでクリエイティブな才能を発揮するのんさんが登場。彼女が愛する10のファッションアイテムについて語った。

SPUR.JPの連載「あの人のお気に入り」第12弾は俳優、歌手、アーティストなど、多様なジャンルでクリエイティブな才能を発揮するのんさんが登場。彼女が愛する10のファッションアイテムについて語った。

遊び心と夢のあるアイテムが、感性を刺激する

俳優として、表現者として、さまざまなボーダーを超えて活躍するのんさん。愛用のミシンを使って洋服作りを行い、2022年にはアップサイクルブランド『OUI OU(ウィ・ユー)』を立ち上げるなど、ファッションも彼女の大切な創作活動のひとつ。そんなのんさんに、プライベートで身につける服や小物の共通点を聞くと、「ちぐはぐな魅力があるもの、違うものがぶつかり合いながら絶妙に成立している洋服に惹かれるかもしれません」という答えが返ってきた。確かに、彼女の私物にはどれも、ふわふわ、もこもこといったファッションへのピュアな憧れと、意志のあるメッセージや強さなどの反骨精神が絶妙にミックスされている。「そうですね、どのアイテムにも“遊び”が一貫してある気がします。そして、ちょっと夢が詰まっている。身につけると、子どもの頃の純粋な気持ちに立ち返れる気がします」。ものに込められた作り手の感性と、のんさん自身の感性の交流が感じ取れるような、唯一無二のアイテムが揃った。



最新作の映画『私にふさわしいホテル』で、のんさんが演じる主人公は、小説家としてデビューした時の名前を不当に奪われながらも不屈の闘志で立ち上がり、奇想天外な方法で成功を掴み取っていく。ストーリーの中で“七変化”する衣装も見どころだ。「堤幸彦監督のこだわりで、私の衣装はスタイリスト・中村のんさんが担当してくださいました。主人公が着こなす’80年代テイストのファッションが本当に可愛いんです! ある時は芯の強い新人作家、またある時は別人として、文壇のパーティや高級クラブに変装して潜入するシーンもあります。それぞれの衣装に身を包むと、集中力が高まって、役にすっと入っていける。改めて服の力は偉大だなと感じました」。ファッションとの結びつきを、表現者ならではの視点で語るのんさんだが、一方で、根っからの服好きらしいキュートな素顔ものぞかせる。「外出して『今日の服、似合っているな』と思うとテンションが上がって、なんだか意識も冴えてきます。逆に『失敗した……』って思うと家に帰りたくなっちゃう(笑)。そう考えてみると、今回紹介した10のアイテムは、身につけると集中力を高めてくれる、愛する味方たちでもあります」。

【マックスマーラのコート】キラキラ、ふわふわにファッションへの憧れが詰まっている

マックスマーラのコート
コート/本人私物、スリップドレス¥75,000/エッセンス(シモーネ ロシャ)https://www.ssense.com、花柄ボディスーツ¥41,800/クリフ(フミカ_ウチダ)03-5844-6152、パンツ¥50,600/TOGA 原宿店(トーガ プルラ)03-6419-8136

ふわふわ、もこもこした服が好きで「前にも同じようなもの着てなかった?」とよく言われます。そしてコートも大好きで、試着して気に入れば夏でも連れて帰ってきてしまうほど。これでも結構我慢するようにしているのですが……(笑)。マックスマーラのテディベアコートは、私の好みのど真ん中。なかでも撮影で出合ったこの1着は、初めて袖を通した時から特別感がありました。ホワイトフェイクファーとビジューの煌めきに、ファッションへの憧れが詰まっています。主役級の存在感なので、これまではデニムなどでカジュアルダウンして着ることが多かったのですが、今回のようにシアートップスや、デコラティブなボトムに合わせるのも素敵なんだ、と勉強になりました。

【バーバリーのナイトバッグ】騎士の名前を持つバッグをデイリーに愛用

バーバリーのナイトバッグ
バッグ/本人私物

バーバリーのエンブレムになっている騎士(ナイト)がモチーフで、シルバーの金具も馬具をイメージ。ジョイントをガチャっと付け替えて、フォルムを変えることもできます。全体的にきれいで落ち着いた印象だけれど、メタルパーツは“強そう”。この遊び心がすごく気に入っています。スタイリングが単調かな?と思った時に、絶妙なカーキとスエードの素材感が変化をつけてくれるのも嬉しい。仕事でもプライベートでも活躍しています。

【MASUのジャケット】ユーモラスな“ちぐはぐさ”を加えたメンズライクなジャケット

MASUのジャケット
ジャケット/本人私物、ドレス¥101,200/ボンジュール(ルールロジェット)03-6412-7711

ブラウンという色が最近やっと似合うようになってきた気がします。このジャケットはセレクトショップで偶然出合い、着てみたらとてもしっくり来たもの。この1着しかないと聞いて、「じゃあ買います」と決めました。惹かれたポイントは、ワークテイストとハードな柄の組み合わせなのに、全体的にキュートに見えるところ。蜘蛛の巣柄はピンク色のエンボスになっていて、襟はエナメル、どこかちぐはぐな合わせ方が面白くて、ユーモアを感じます。MASUもそうですが、メンズから始まっているブランドの服はビッグシルエットで、着ると体がフラットに見えるのがいいんです。

【R13のワイドデニム】自分でカスタマイズした思い出深い1本

R13のワイドデニム
デニム/本人私物、ブラトップ¥42,900、リブトップ¥37,400/クリフ(フミカ_ウチダ)03-5844-6152

オンラインショップで見つけたワイドデニムは、袴みたいなシルエットとロールアップの幅が太いところが気に入って買ったもの。ところが届いてみると、普段のサイズに合わせたはずが、丈が長すぎて大失敗。ちょっとショックだったのですが、ミシンで丈を短くカットして、自分の脚の長さに合わせてもう一度縫い直しました。ウエストはそのままで、きゅっと絞って、あるいは落とし気味で穿いています。普段は、Tシャツやぶかっとしたニットとシンプルにコーディネート。自分で裾の長さを調節したらすごくいい感じで穿けるようになり、それからどんどん好きになっていきました。ミシンは、21歳の時に小泉今日子さんが引越し祝いに、専門店で一緒に選んでくださった宝物。以来、ずっと愛用しています。

【久慈琥珀のブローチ】第二のふるさとが贈ってくれた、私のためのリボンブローチ

久慈琥珀のブローチ
ブローチ/本人私物

NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台となった岩手県久慈市。2013年にヒロインのアキ役を務めて以降、ずっとお世話になっています。街の方々がいつも本当に優しくて、親戚みたいに接してくれるので、私は人見知りでコミュ力が低い方なのですが、久慈では社交的になります(笑)。特産である琥珀のブローチは、久慈市観光振興の応援マネージャーに就任した記念に、市から贈っていただきました。私がリボンをモチーフにアートを制作することや、監督した映画のタイトルが『Ribbon』ということを踏まえて、リボンの形に彫って下さったそう。本当に嬉しい宝物です。ずっと身につけていたいけれど、落としたり壊したりするのが怖くて、ここぞという時にコートやジャケットの襟もとにつけています。

【メゾン ミハラヤスヒロのアウター】ブルーのストライプが印象的なパフィーアウター

メゾン ミハラヤスヒロのアウター1
アウター/本人私物、ブラウス¥85,800/クリフ(フミカ_ウチダ)03-5844-6152、スカート¥24,200/TOGA 原宿店(トーガ プルラ)03-6419-8136

ミハラ ヤスヒロは、自分で買えるようになった20歳の頃からシーズンごとにチェックしているブランド。最近目にとまったのは、この爽やかなストライプのジャケットです。ふわっと軽くキュートな印象で、「なんだかきれいな子がいるな」と惹かれました。

メゾン ミハラヤスヒロのアウター2
アウター/本人私物、ブラウス¥85,800/クリフ(フミカ_ウチダ)03-5844-6152、スカート¥24,200/TOGA 原宿店(トーガ プルラ)03-6419-8136

ブルーのストライプシャツにもずっと憧れがあったのですが、さらりと着るとあまり似合っていない気がして、諦めかけていたんです。アウターだったら自分らしく着られそう、と手に取ると、ふかふか! 布団が好きなので、ファッションでも布団みたいな服やバッグに目がありません(笑)。重ね着風のフロントに、ラウンドした裾の後ろ姿まで、どこから見ても可愛くてユーモラス。今日のように、シアーな素材やレースとのミスマッチな着こなしも好みです。

【つつの靴下展・宇野亞喜良コラボレーションのソックス】身につけるときは、絵の中の女の子のように

つつの靴下展・宇野亞喜良コラボレーションのソックス
ソックス/本人私物

高校時代、書店で画家の宇野亞喜良さんの『創作の現場』という本に偶然に出合いました。「こんなにかっこいい人がいるんだ!」と、衝撃を受け、影響されたのを覚えています。その後、フォトブックで対談させていただいたり、NHK Eテレ『日曜美術館』の特集で話を伺ったり……。この作品は、数年前に開催されたイベント「つつの靴下展」で、宇野さんのオリジナルデザインの靴下が出展されると聞き、駆けつけて買ったもの。宇野さんの描くちょっと反抗的な目をした女の子も、それから猫も大好き! どんな服に合わせても主役になってくれます。このソックスを身につけるのは、宇野さんが描くような女の子になりたい時。もったいなくて頻繁には履けませんが、特別な日のためのソックスです。

【奈良美智×ステラ マッカートニーのキャップ】メッセージの純粋な伝え方に共感

奈良美智×ステラ マッカートニーのキャップ
キャップ/本人私物、ドレス¥72,600/ブランドニュース(シー ニューヨーク)03-6421-0870

アーティストの奈良美智さんとは、たびたび交流させていただく機会があります。「ARABAKI ROCK FEST」に出演した時に、前日入りした私が会場で遊んでいたら、同じく屋台でバイトをしていた奈良さんが焼きそばをご馳走してくれたという思い出も(笑)。ステラ マッカートニーとのシェアードカプセルコレクションは、リリースの話を聞いていそいそと店に足を運び、このキャップを始めバッグやパーカも手に入れました。ステラ マッカートニーのデザインと、奈良さんの絵ってこんなに合うんだ、と感動。環境や平和についての考え方も通じ合っていますよね。 奈良さんの描く「NO WAR」のメッセージは、すごく直球。少女の眼差しと相まって奈良さんの思いが純粋に伝わってきます。「戦争はダメだよね」と、シンプルだからこそぐさっと心に突き刺さる、そこが好きです。

【アクネ ストゥディオズのワンピース】“好き”と“似合う”がぴったり合ったご褒美服

アクネ ストゥディオズのワンピース
ドレス/本人私物、中に着たビーズドレス¥101,200/ボンジュール(ルールロジェット)03-6412-7711

2025年2月配信のコメディドラマ『幸せカナコの殺し屋生活』で主演を務め、殺し屋役に初挑戦。この夏ずっと、冷房のない倉庫でアクション撮影をして、みんなでヘトヘトになりました。頑張った撮影のご褒美を探して訪れたのがアクネ ストゥディオズ。ちょっとストリートっぽくて、風合いのある洋服がとても好きなんです。ロングTシャツとカーディガンをレイヤードしたようなデザインで、ハリがありつつ薄い生地。どこかに隙を感じるところが"アクネ”らしくて、しかも「絶対私に似合う!」と自信が持てる。猛暑の中での撮影だったので、この軽やかさを求めていたのかもしれません(笑)。気分を上げたいお出かけに、カジュアルにもドレッシーにも、いろいろな合わせ方ができるワンピースです。

【プラダのビジューパンプス】買った時のエピソードも宝物になる“夢の靴”

プラダのビジューパンプス
シューズ/本人私物

シルバーもエナメルもビジューも大好きな私の"夢の靴”。キラキラをファッションに取り入れることにハードルを感じていたけれど、靴だったら平気そう。「うん、やっぱり可愛い」と見るたびに嬉しくなります。地元に帰って、家族で買い物に行った時に手に入れたのもいい思い出。店で見かけて「これ、可愛いね」「でも我慢しようかな」なんて話しながら迷っていたら、母が「買ったら?」と背中を押してくれて。家族の前で試着して、店を行きつ戻りつしてあれこれ悩みました。美術館に行く時など、少し特別な日に、お気に入りのジーンズに合わせて履いています。

のんプロフィール画像
のん

俳優・アーティスト。音楽、映画製作、アートなど幅広いジャンルで活動。主演映画『さかなのこ』で第46回日本アカデミー賞「優秀主演女優賞」を受賞。今年7月には「第16回 伊丹十三賞」を受賞、また主演映画『私にふさわしいホテル』が今年の12月27日に公開、 同じく主演を務めるDMM TVオリジナルドラマ「幸せカナコの殺し屋生活」も来年2月に配信がスタートする。2022年からアップサイクルブランド『OUI OU(ウィ・ユー)』を立ち上げ、プロデュースしている。