2018.09.21

SPUR BEST BAG AWARD 2018:激論!朝までバッグ会談

トレンドから偏愛アイテムまで熱く語る

時代の潮流をふまえ、ファッションプロはどんなバッグに注目しているのか? 事情通な3名が一堂に会し、熱い議論を交わす!

MEMBERS

浜田英枝さん(スタイリスト)
SPURをはじめモード誌で活躍。感覚的な事柄を的確に言語化するリーダー的存在。

大城琴美さん(SUPER A MARKET バイヤー)
TOMORROWLANDのバイイングも兼任。市場の動向やニューカマー情報に詳しい。

岡部駿佑さん(エディター)
SPUR.JPでも記事を執筆。若手ながらラグジュアリーブランドを知り尽くすモード通。

 

「ゲート バッグ」が牽引する ミニ化現象が気になる

大城(以下O) 先シーズン発表されたロエベの「ゲート バッグ」のショルダー(1)にミニサイズが登場していて、ランウェイでアクセサリーのように持っている感じがすごく可愛かったと思うんです(2)。今たくさん出ているコンパクトなお財布なら十分入りそうですし。

浜田(以下H) 「ゲート バッグ」は今回のバッグ特集で絶大な人気を誇っていたそうですが、クラシックなムードなので時を経てもおしゃれに見える、というのが支持を得ている理由でしょうね。

岡部(以下K) 上質なクラフト感も飽きがこなくていい。

H ステッチの感じも可愛い。定番の形でもトレンドカラーのバーガンディを選べば今季らしく身につけられます。お気に入りを見つけたらサイズ、色、素材違いを集めるというバッグの買い方もありかも。

K 華美ではないからこそ、万人に愛されるイメージのバッグです。

O 媚びる感じがしないですよね。

H 余計な装飾がついていない点も洗練されています。これが最終的にスタイリングを整えてくれそう。

K いぶし銀(笑)。男前ですよね。

O ところでミニサイズといえばジャックムスにもありました。極端に小さくて、洋服とのバランスが新鮮だなと思って(3・4)。

H 肩に掛けたりできないから、私はタクシーとかに置き忘れそうだけど……(笑)。ミニサイズだけでは普段の持ち物を収納できないので、グッチのようにもう一個バッグを持ちたい(5)。夜は大きいバッグは置いて、ミニサイズだけでどこか行っちゃえばいい。

O 最近は紙の資料がすごく減っていて、デジタル化が進んでいますよね。携帯さえあればいいので、荷物の軽量化がミニサイズ化を進めている気もします。

K 今は「ゲート バッグ」のようにタイムレスなデザインか、観賞物としても楽しめるおもちゃみたいなタイプか、二極化が進んでいますね。

O ジュエリーラインからスタートしたバニーナ(6)のように、手頃な価格のアクセサリー感覚のバッグは店頭でも人気です!

1・2 フロントで結ばれたベルトが特徴のサドル型バッグ「ゲート」。その名の通り、サイドには門の蝶番をイメージしたピンのチャームが。ロエベが誇る上質な革が使用され、ルックと同様エレガンスが漂う。3・4 もはやミニを通り越して極小!? モロッコの市場「スーク」に着想を得たジャックムスのコレクションの手もとを飾った。5 ミニサイズでは荷物を収納しきれないという人はグッチのようにラージサイズのトートバッグをプラスして2個持ちしても。

6 まるでジュエリーのようなバッグが人気。幼なじみの二人が中東レバノンで2007年に設立したバニーナは現地の職人たちによる手作りにこだわっている。バッグ〈H14×W16×D11〉¥41,000/SUPER A MARKET(バニーナ)

若い人を中心に支持される モノグラムや伝説のバッグ

H 街を歩いているとモノグラムもよく見かけます。

K 永遠の人気モチーフですよね。

H 若い子は親から譲り受けたりしたヴィンテージでいいと思うのですが、大人が持つならちゃんと新調したほうがよさそう。ディオールが、かつてアーティスティック ディレクターだったジョン・ガリアーノが手がけた「サドル」バッグをアップデートしましたよね(7)。キャンバスの「ディオール オブリーク」のモデルも出ています(8)。

K 発表当時はまだ小学生で買えなかったので超欲しい! 20代半ばの知り合いもそのくやしい思いを晴らすべく、今「サドル」バッグを集めているとか。

O 小学生ですでに目をつけていたとは! 早熟(笑)!

K ロゴものは比較的手頃な価格というのも若者にとっては魅力です。

7 「サドル」バッグは2000年春夏に乗馬の世界に着想を得て発表された。8 「ディオール オブリーク」のキャンバス地のモデル。エスニックなストラップで変化をつけても。「サドル」バッグ ミディアム〈H20× W25.5×D6.5〉¥320,000・ストラップ¥210,000/クリスチャン ディオール(ディオール)

本当に使いたいのは タイムレスで使い勝手のいいバッグ

H 今はロエベの「バスケット」(9)を愛用しています。今年の1月に買って、冬のコートにも合わせていました。一年中かごを持ちたくて。周りでも狙って買いに走る人が多くいましたね。価格もわりとアフォーダブルなんですよね。先シーズン、メンズコレクションで発表されて以降定番になったようです。

O 「バスケット」はすごい人気です。ショップでも取り合いになっていたくらい!

H 秋冬はステラ マッカートニー(10)が気になります。携帯など小物は分けて持てるなど、使い勝手にも気が配られている。

O いつもながらレザー風エコ素材のクォリティが高いですよね。

H 展示会に数多く行きますが、こういうしっかりした形や重みのあるバッグが頭の中に残るんです。

O 私は洋服に合わせていろいろなバッグを持ちます。荷物を入れ替えるから、朝すごく忙しくて忘れ物をしちゃうんですけど……。今季は日本に初上陸したドイツのブランド、ルッツ・モリス(11・12)に注目しています。ウエストバッグ人気もまだまだ続きそう

H ミニマルで品がいいですね。

O サステイナブルなものづくりを目指しているデザイナーなので、トレンド一辺倒な感じはありません。自分のスタイルにすっとなじんでくれるのではないかと思います。

K 秋冬はフェンディ「ピーカブー」(13)に興味津々です。きちんとした印象なのはもちろん、代々受け継ぎたいくらいの質のよさ。書類やノートパソコンも楽々入りそうです。普段は、トム フォードの「アリックス」を使っています。いろいろなブランドのアイコンバッグをひと通り検証してみた結果、これが一番自分らしいな、と思って。

H 日本ではあまり取り扱いがないから、かぶりませんね。

K たまに替えてみたりするんですけど結局「アリックス」に戻っている。僕は荷物を入れ替えるのがストレスになってしまうから、毎日同じバッグを使うことが多いんです。

9 浜田さん愛用のロエベの「バスケット バッグ」。ロゴ入りパッチと長さを調節できるトップハンドルつき。手作りのため、一つひとつ違った味わい。サイズや配色が異なるタイプも展開。バスケットバッグ〈H26.5×W40×D16〉¥53,000/ロエベ ジャパン カスタマーサービス(ロエベ)10 デザイン性もあるステラ マッカートニーのバッグ。レザーと見紛うかのような風合いが出ているのがさすが。 11・12 大城さんが注目しているドイツ発のルッツ・モリス。バッグ〈H10×W17×D4〉¥92,000 バッグ〈H13×W18×D7〉¥157,000/SUPER A MARKET(ルッツ・モリス)
13 岡部さんは一生ものにしたいフェンディのバッグがイチ押し。バッグ「ピーカブー」 〈H26×W33×D12〉¥694,000/フェンディ ジャパン(フェンディ)

スタイリングを引き締めてくれる きちんとしたバッグを持っていたい

H 洋服を着るうえでルールに縛られることがなくなったから、かちっとした小物で締めたいのかもしれない。スニーカーを履くことも多いし、バッグはきちんとしておきたい。

K バッグで全体のバランスを取る。

H 全部カジュアルだと社会人として問題かもしれないし(笑)。

K トレンドのスニーカーにナイロンバッグを合わせちゃうとさすがにちょっとアスレジャーが過ぎる(笑)。

H さじ加減が大事ですよね。

O 最近アメリカの老舗ブランド、マーク クロスを持っている人もよく見ます。

H 一個そういうきちんとしたバッグを持っていると安心ですよね。長く使えるし。そして今季はミニサイズで遊びのあるバッグを買い足しておけばいい。

K SPUR8月号に「2020年の私に贈るバッグ」という特集がありましたが、“2年後に「よく買った!」と自分を褒めたくなるようなバッグが欲しい”という考え方には共感できるところがあります。

H バッグが一個しかないとすぐ傷んでしまうから、ワンシーズンに何個か買って使い回すのが理想ではあるのですが、今はタイムレスなブランドが素敵に見えます。形がしっかりしているうえに、遊び心もちゃんと持ち合わせているところも多い。

K たぶん“itバッグ”という単語に疲れてしまったんでしょうね……。

H だからこそトレンドとは一線を画したデザインや遊び心に惹かれたりするのかもしれません。これまでたくさん“itバッグ”を買ってきたからこそ行き着いた結論ですね!

SOURCE:SPUR 2018年10月号「激論!朝までバッグ会談」
photography:Jonas Gustavsson(runway) text:Itoi Kuriyama