カセットプレーヤーと今の渋谷の街を歩けば
ドレス¥99,500/ドーバー ストリート マーケット ギンザ(ジャックムス) カセットプレーヤー(イヤホンつき)¥4,980/BEAMS RECORDS
デイヴィッド・ホックニーのアートワークが着想源のフラワープリントを軽やかなコットンポプリンのシャツドレスに配して。USBにデジタル変換もできるカセットプレーヤーで“渋谷系”を聴けば、そこはもう90年代のスクランブル交差点。
芋生 悠/いもう はるか 女優。1997年12月18日生まれ、熊本県出身。2014年「JUNON produce Girls CONTEST」のファイナリスト。ベルリン国際映画祭W受賞作品『37Seconds』(’19)や、ヒロイン役を演じた舞台『後家安とその妹』(’19)などに出演。5月22日には映画『#ハンド全力』、5月29日には映画『HOKUSAI』が公開予定。
変わりゆく渋谷の街によせて Interview with カジヒデキ
“最後の渋谷系”が眺める、発信する街・渋谷
シンガーソングライターのカジヒデキさんは90年代前半に宇田川町の輸入レコード店「ZEST」で働きながら渋谷に通う日々を送っていた。
「当時人気だったバンド、フリッパーズ・ギターのインパクトはとても大きくて、とにかく彼らのキラキラした感じと渋谷という場所がマッチしていたんです。レコード店、ライブハウス、書店、映画館、洋服店……渋谷には全部揃っていて、とにかくおしゃれ。ここから何かを発信したい、前の世代よりも新しいことをやろうという雰囲気がありました。そこから“渋谷系”という言葉が生まれたんだと思います。僕が働いていた頃のZESTは東急ハンズの向かいにある、ノア渋谷ビルの一室。同じフロアには音楽レーベルがあって、カルチャー誌の編集部がそこに間借りしていたり、近くに知り合いがいる渋谷の環境がコミュニティの役割を果たしていたんでしょうね」
まだインターネットが一般に普及していないあの頃。カルチャー大都市として発展した原動力はDIY精神だったのではないかとカジさんは振り返る。
「手作りのフライヤーが好きでした。自分でも作ってバンドの宣伝をしていましたし。ライブ後にアンケートを配って連絡先を聞いてはDMを郵送するなんて、今だと考えられないですよね(笑)。好きなアーティストがレコード店でおすすめしていたプレイリストの紙は今でも取ってありますね。アナログですが、そうやって情報収集をしては、友達と交換して広めていったんです」
では、カジさんは今の変わりゆく渋谷をどう思うのだろうか?
「渋谷のコミュニティラジオに番組をもっているので、ここ4年は毎週通っています。旧東横線渋谷駅のホーム周辺の渋谷ストリームの横にラジオ局があるので、どんどん変わるさまを見てきました。渋谷って、いつの時代もいちばん新しいことを発信する街だと思うし、そうあってほしい。絶えずクールな音楽が流れている街でいてほしいなと思ってるんです」
カジヒデキ/かじひでき 1967年千葉県生まれ。1987年にフリッパーズ・ギターの前身バンドに衝撃を受け、自身もネオアコースティック・バンド「BRIDGE」を結成。1996年にはソロデビューを果たし、世界的なブームになる直前のスウェーディッシュポップの要素を先駆けて取り入れ、大ヒットを記録した。当時好きだったカフェは「アフタヌーンティー」。
SOURCE:SPUR 2020年6月号「渋谷駅は、時を超えて」 model: Haruka Imou photography: Mai Kise styling: Yuuka Maruyama〈makiura office〉 hair: Keiko Tada〈mod’s hair〉 make-up: KIE KIYOHARA〈beauty direction〉 illustration: Bob Foundation text: Mai Ueno, Michino Ogura(Interview with カジヒデキ)