YOONがブルガリとコラボ。アーカイブを参考にしない、独自のアプローチの秘訣とは

ブルガリのアイコンバッグ “セルペンティ” と、YOONが手がけるアンブッシュのコラボレーション “AMBUSH × BVLGARI” コレクションがデビュー。ブルガリの公式サイト、そして国内のブティックにて2020年9月5日(土)から日本限定色のホワイトを先行発売、10日(木)よりフルラインナップが展開される。

古くから、知性と生命力の象徴として親しまれてきた蛇をモチーフにした “セルペンティ”。エッジの効いたデザインで、世界的に注目を集めるアンブッシュのフィルターを通して誕生したのは、目にも鮮やかなネオンカラーのバッグやスモールレザーグッズ、そしてハートシェイプのミノディエール。これまで数々のコラボレーションを手がけてきたYOONは、このプロジェクトにどんな思いを込めたのだろう。制作プロセスや、印象に残るエピソードについて話を聞いた。

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── これまでに数々のコラボレーションを手がけてきたYOONさんですが、今回のプロジェクトで声がかかったときの最初の印象を教えて頂けますか?

驚きと興奮。憧れのブランドだったブルガリとコラボレーションをできるなんて、という感じでした。

── “セルペンティ” といえば自立した強い女性のイメージ。個人的にはYOONさんにぴったりなのでは?と思ったのですが。

意外に思われるかもしれませんが、このプロジェクトに携わるまで蛇には苦手意識があったんです。ちょっと怖くて笑

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Photo @tylersphotos

── これまでこの “セルペンティ” のコラボレーションは、アレキサンダー・ワンや藤原ヒロシ氏などが参画してきましたが、ここまでオリジナルのデザインをガラッと変えたコラボレーションは見たことがありません。どのような制作プロセスだったのでしょうか?

まず初めに、蛇のリサーチをしました。

── 本物の蛇ですか?

そう、本物の蛇。蛇の図鑑や、インターネットなど、あらゆる蛇の資料を調べ、東南アジアに生息しているニシキヘビに強く惹かれました。ネオンカラーの体色を持つその蛇の写真を見て、この色を再現したいと思いました。ほら、この写真見て下さい。

──(リファレンスに使ったという実際の蛇の写真を見ながら)確かに、バッグの色を全く同じですね!

自然界にこんな美しい色が存在するということに感動を覚え、バッグのシルエットもこの蛇の形をそのままモチーフにしようと考えました。柔らかなラムレザーにパッドを入れ、ステッチを加えることで、蛇の持つ官能的なシルエットを表現しました。 

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“AMBUSH × BVLGARI” ハンドルバッグ〈H24 × W18.5 × D11〉各 ¥320,000

── ハンドルの質感も特徴的ですね。

これも、蛇の鱗の質感を再現したものです。ぱっと見ただけでは気づかない抽象的な解釈でありながら、シルエット、素材感、色、ディテールに至るまで、本物の蛇を彷彿とさせるデザインを目指しました。

── “セルペンティ” といえば、ブルガリを象徴するアイコニックなモチーフですが、アーカイブの作品から着想を受けたところはありますか?

今回は、あえてアーカイブに影響されないように気をつけました。これだけアイコニックなデザインだからこそ、ゼロから新しいデザインを作りたかった。

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“AMBUSH × BVLGARI” ベルトバッグ〈H15.5 × W18 × D6.5〉各 ¥270,000

具体的なデザインではないのですが、強く感銘を受けたのはルチア・シルヴェストリ氏との出会いです。ブルガリのハイジュエリーを手がけ、ジェムバイイングのエグゼクティブディレクターも務める彼女のオフィスを訪れた時のこと。彼女のデスクの上に無造作に並べられた、目を見張るような宝石の数々に驚いていたところ、彼女はおもむろに大粒の宝石を手渡し、手に触れるように促したのです。実際に触って、自然のエネルギーを感じて欲しい、と。

彼女の話を聞く中で、自然の持つエネルギーや美しさに魅了され、今回のコラボレーションのアプローチにも生かそうと思いました。

── たしかに、ここまでエッジの効いたカラーリングやデザインは、既存のブルガリのファンだけでなく、これまでブルガリに憧れながら、なかなか手が出なかった若い世代にも魅力的に映るんじゃないでしょうか。例えばこのハートのミノディエールとか、めちゃくちゃ可愛いです。

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“AMBUSH × BVLGARI” ミノディエール〈H13.8 × W17 × D8.4〉各 ¥710,000

このポーチは個人的にもお気に入り。ハートのシルエットは、実は実際の蛇に着想を得ているんです。ある蛇の愛好家の写真で、ハートの形にとぐろを巻いた姿を捉えたものがあり、この姿をデザインに取り入れられないかと思ったのがきっかけです。

── デザインもさることながら、実用性の高さも魅力的です。例えばコレクションの要にもなっているベルトバッグは、ショルダーバッグやクラッチなど3WAY仕様が特徴ですね。

現代の女性のライフスタイルに合ったプロダクトを作りたかった。今の女性って、仕事が終わって、夜出かけるためにわざわざ全身着替えることって少ないと思うんです。デイリースタイルと、ドレスアップが限りなくシームレスになっている。だからこそ、仕事でも使えて、そのままナイトアウトにも出かけられるようなバッグにしたかったんです。

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YOON プロフィール

アンブッシュ®️のクリエイティブディレクター。パートナーのVERBALと共に2008年にジュエリーブランド、アンブッシュ®️を設立。2017年には「LVMHプライズ」ファイナリストに選出される。2018年「ブルガリ アウローラ アワード」受賞。同年、キム・ジョーンズが手がけるディオール メンのジュエリーディレクターに就任。

text: Shunsuke Okabe

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