メアリー=ケイト・オルセンとアシュリー・オルセンが2006年に設立したザ・ロウが今、高い支持を獲得している。普遍的でありながら他のブランドとは一線を画す、洗練された表現で私たちを惹きつける。新時代のラグジュアリーの中核を担っていく、力強いクリエーションの魅力に迫る
THE ROW を知る人が語る、その魅力
高い審美眼を持ち、ファッションへの造詣が深い人たちからも支持されているザ・ロウ。 スタイルのあるふたりの女性に聞いた、ブランドとの出合いやそのクリエーションに惹かれる理由
朝吹真理子さん(作家)
身につけていないときでも、その美しさにうれしい気持ちになる
国内で活躍するデザイナーとの交流が深い朝吹さん。そのためワードローブは日本のブランドが大半を占める中、ザ・ロウはスキューバパンツやチュニック丈のドレスなど、例外的に多く所持している。
「シンプルな美しさに惹かれます。数年前に購入したものでもまったく飽きなくて、出番も多いです。この春に購入したワンハンドルのバッグは、ほぼ毎日持っています。原稿用紙など荷物がかさばる私にとって心強い、軽くて丈夫なキャンバス地。ステッチのない細いレザーエッジがエレガントです。きゃしゃなハンドルなのにバッグが重たくなっても肩に食い込まないのが素晴らしい。好きなところしかなくて、同じ形をずっと使いたいです」。
愛着は、使っていないときにもさらに増していく。
「ほどよく自立性があって、少したわむ姿もきれいで、家に帰ってきて、ぽんと置いてあっても、うれしくなります。白いローファーも、置いてある姿がきれいでひと目惚れしました。お店におじゃましたときも、シャルロット・ペリアンの家具とともにお洋服やバッグが置いてある静謐な空間で、美しかったです」
PROFILE
あさぶき まりこ●1984年、東京都生まれ。2009年に「流跡」を発表し、作家デビュー。2010年に同作でドゥマゴ文学賞を、2011年に「きことわ」で芥川賞を受賞。今年1月にはエッセイ集『だいちょうことばめぐり』(河出書房新社)が発売された。
中北紘子さん(画家)
多くを語らないからこそ、本来の自分を表現できる服
出合いは2018年、知人のすすめでNYのショップを訪れたことがきっかけ。
「ひとつひとつのアイテムが作品のように並べられ、デザイナーや職人の方々の緊張感が伝わる空間に魅了されました。そのときにシルク素材の小さなバッグを購入したのですが、これはブラックとネイビーのリバーシブル仕様。でもふたつの色が調和して、どちらの面も隙がなく完成されている。手にしてみてまたモノづくりへの真摯な姿勢に感嘆しました」。
以来、特別なシーンではこのブランドを手に取るようになったそう。
「操上和美さんにポートレートを撮影していただいたときにも、衣装としてブラックのロングドレスを選びました。ザ・ロウの服は多くは語らないからこそ、本来の自分を表現できる。洗練されたエッジをきかせつつも、主張をしすぎないから着る人それぞれの個性が引き立っていくのだと思います。そして同じ人物でも、違う日に着れば表情が異なってくるのも面白い。私自身もこの先、年を重ね成長することでもっと素敵に着こなしていきたいと考えていて。長い時間をかけて大切に向き合っていきたいワードローブです」
PROFILE
なかきた ひろこ●1981年、兵庫県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科 絵画科油画専攻修士課程修了後、本格的に創作活動を開始。2018年にはNYで個展を行うなど国内外で作品を発表。春には神戸の居留地に自身のギャラリーをオープンした。
SOURCE:SPUR 2021年12月号「THE ROW を知る」
photography: Jun Yasui 〈eight peace〉, Shinsaku Yasuima (THE ROW を知る人が語る、その魅力) styling: Natsuko Kaneko hair: Yusuke Morioka 〈eight peace〉 make-up: NOBUKO MAEKAWA 〈Perle〉 model: Olga