原石はあちこちに。M'IT STARを探して

ファッションウィークのストリート・スナップで名を施せ、数々の新しい才能を見いだしてきた写真家のmitograph(ミトグラフ)。彼が今、「目が離せない!」と断言するニューフェイス7人のポートレートを撮影&インタビューを行い、その無限の可能性に迫る。彼らの軽やかでまっすぐなスタンスは、まさに新時代らしい"隣のスター"像そのもの!

 

フォトグラファー mitograph

Instagram: @mitograph

Profile
国内外でのストリートスナップなど、モード界で活躍。SPURでは2017-’18年に「M’IT GIRLを探して」を連載。本企画はその特別版となる。最近は1日に計14時間もスマートフォンを見て、世に認められるべき新たな才能を発掘。SNSジャンキーぶりに、自分でも軽く引いている。

保坂万里央さん(トゥモローランド渋谷本店 スタッフ)

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「服を選ぶときは直感を重視しています。今日はまずこのジャケットを着ようと決めて、全身を合わせました」と保坂さん。袖をまくって着たダブルジャケットはキャバンのメンズアイテム

Instagram: @_mrohsk

Profile
ほさか まりお●愛知県出身。大学時代に名古屋・大須のセレクトショップ兼古着店「KAKAVAKA(カカヴァカ)」でアルバイトを経験。1年前に上京し、現在はトゥモローランド 渋谷本店で販売スタッフとして働く。趣味は読書。

 

内気でこもりがちな自分を、ファッションが変えてくれた

ミトグラフ(以下M) 万里央ちゃんに初めて会ったとき、こんなに素敵な人なのにメディアに出てなくて驚いた。トゥモローランドにお勤めだけど、ファッションが好きになったきっかけは?
保坂万里央さん(以下H) 何よりも母の影響が大きいですね。母はずっと仕事でファッションに携わっていて、今も名古屋のセレクトショップで販売スタッフをしています。小さい頃から家にはいつもモード誌があったし、ちょっと外出するときに着る服についてもうるさく言われましたね。みんなが持っているキャラクターグッズを買ってもらえないのは悔しかったけど、母は本当に憧れの女性。特に今、上京してひとり暮らしをしているので、母の人間的な強さを改めて実感し、尊敬しています。
M 洗濯するだけでも、親のありがたさを感じるよね……。
H 大学生の頃は、名古屋・大須の古着街にあるKAKAVAKA(カカヴァカ)というショップで4年間アルバイトをしていました。このときの経験で、自分の洋服に対する考えが一気に広がったんです。ショップの店長やスタッフに、デザイナーやヴィンテージの世界など、いろんなことを教えてもらい、自分が着る服のテイストも変わりました。ジャンルにとらわれず、いろんなファッションを楽しむことを知りましたね。
M 周囲のおしゃれな人たちに育てられたんだね。前から思っているんだけど、おしゃれな人がおしゃれな人を生む現象ってある。アルバイトで本当にセンスのいいスタッフに巡り合えたから、今の万里央ちゃんのスタイルがあるのかもしれない。育つ環境って、すごく大事。
H それまで、すごく内気な性格だったんです。家で本を読んだり、ひとりで好きな世界に没頭するタイプでした。大学時代のアルバイトで友達がいっぱいできて、だいぶ外に出るようになった。ファッションがいろんな縁をつないでくれた気がします。
M 東京に出てきたのは、就職のため?
H はい、今はトゥモローランド 渋谷本店で販売をしています。将来バイイングの仕事がしたい。ずっと目標にしているんです。あとは、すごい先の話だけど、いつかフラワーショップを開きたいんです! 友達と将来について語っていたとき、その子が1階でたこ焼き店、2階で古着店をやりたいって言うから、じゃあ私がたこ焼き店の隣で花店をやろうかなって。
M ソースの匂いがすべてに打ち勝ちそう(笑)。やっぱり、おしゃれな人とファッションの話をするとウキウキするな。万里央ちゃんと話して、「自分、ファッション好きだな」と改めて感じた。今日はありがとう!

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「セルの太いメガネが好き。これはセリーヌです」。太いネックレスはJ.P.ゴルチエで、叔母からもらったもの。シャツとビスチェ、パンツは、学生の頃から好きなドリス ヴァン ノッテン

AO Shunsukeさん(ダンサー/モデル/振付師)

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プレイ・コム デ ギャルソンのボーダートップスは"パワパフ"メンバーからのバースデープレゼント。サングラスも、いつも欠かせない

Instagram: @ao_shunsuke

Profile
アオ シュンスケ●東京都出身。小学生のときにブロードウェイミュージカル『シカゴ』の来日公演を見て、舞台に立つことを志し、青山学院大学のダンスサークルADLに入る。モデル、ダンス講師としても活動。

 

つらい体験も、クスッと笑えるダンスに変えて表現したい

M アオくんたちが3人でやっているパワーパフボーイズ(パワパフ)。「ロマンスの神様」のダンス映像がバズっていたね。見てみたらすごくよかった。
AO Shunsukeさん(以下A) うれしいです! パワパフは2年くらい前に結成したんですけど、最近、面白いと言ってもらえることが多くて。「ロマンスの神様」は特に広く反響がありましたね。邦楽だったのもよかったのかな。
M 確かにすごくフィットしてる。アオくんのキャリアを教えて。
A ダンスを始めたのは大学生になってから。ずっとマイケル・ジャクソンが好きで、家でムーンウォークを練習したりしていたんです。高校生のとき、友達の家でホームパーティがあって、なぜかそこで僕がマイケル・ジャクソンのダンスを披露する流れになって。踊ってみたら、クラスのボス的ポジションの男の子に、「おまえ、意外とやれるヤツだな」って褒められたんです。それでなんだかすごく自信がついて、ダンスを始めたんです。単純ですよね。
M 意外とそういう些細な一言が、人生を変えたりするんだよね。
A その後NYに留学して、そこで価値観が大きく変わりました。たぶん、こんなに明るい性格でいられるのもNYのおかげ。自分を殺さないですみました。
M それまでは、自分を殺して生きていたの?
A というか……実は高校3年生のとき、死にたいと思うほどつらい時期があったんです。いろいろなことが重なって、「もう生きている意味がない」って思っちゃって。でも電車に飛び込もうかと思った瞬間に、母の悲しむ顔が頭に浮かんだんです。それで死ぬのをやめて家に帰ったら、その頃、喧嘩をしていた母が、なぜか僕の好きな靴下を買ってくれて、置いてあったんです。それで言葉を交わさずとも、わかり合えた。暗い話になっちゃいました(笑)。でも僕自身の創作にとって、そういう経験はとても大きくて。ダンスって、自分自身を、自分の人生を表現するもの。僕が今ダンスをしている意味も、伝えたいこともそこにあるのかなって。
M お母さんがいて本当によかった……! いろんな経験をしたんだなあ。じゃあ、今の目標を教えて。
A 僕が得意なのは、パワパフみたいにクスッと笑える、底抜けの明るさ。みんなを元気にしたい。あとはジェンダーを始めとする固定観念を変えたい。パワパフは、「『可愛い』を極める男の子3人組」というテーマでやっています。世の中にはいろいろな人がいると伝わったらいいな。ダンス以外にも、"表現者" として歌や芝居にも挑戦したいです!

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右から、naoto、AO、KANの3人からなる、ダンス・エンタメ・ボーイズ・グループ、パワーパフボーイズ。インスタグラムに投稿した「ロマンスの神様」の動画が話題に

新藤マリアさん(モデル)

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「モデルとしては身長が高くないから、なるべくスタイルをよく見せたくて」と新藤さん。シャツはヴィンテージのプラダでパンツはリーバイス、バッグはOSOI

Instagram: @sind_mra

Profile
しんどう まりあ●群馬県出身。日本出身の父とルーマニア出身の母の間に生まれ、6 歳下の弟とともに育つ。16歳からモデルとして活動。現在はモデル業と並行して、服飾系の大学でファッション・クリエーションを勉強中。

 

自分のブランドを立ち上げるのが目標。今は大学で勉強中!

M 僕は「今、イケてるモデルいない?」って聞かれることがすごく多いんだけど、マリアちゃんのことはみんなが気になっているよね。今、世の中が求めているのは、やっぱりスタイルや個性がちゃんとある人。マリアちゃんは、まさにそういう人だし、インスタグラムのポストのクォリティも高くて、ちゃんと自分のイメージがわかっていると思う。
新藤マリアさん(以下S ) ありがとうございます。私は、言葉で伝えるのが得意じゃないので、インスタグラムでうまくアピールできたらと思って。
M インスタグラムの写真は誰に撮ってもらっているの?
S  モデルの工藤弥ちゃん。仲がいいんです。あとは大学の友達とか。
M 大学はファッション系?
S  そうです。将来は自分のブランドを立ち上げたくて、入学したんです。シンプルだけどかっこよくて、さらっと着るだけで決まる服を作りたい。自分自身がシンプルな服が好きなので。憧れのブランドは、ピーター ドゥです。ちゃんと売れているというのがまたすごいと思う。
M ブランドを立ち上げるのは昔からの夢だったの?
S  全然そんなことないです。モデルの仕事も、16歳で始めるまでは興味なかったし。洋服は好きだったけど、別におしゃれでもなかったですね。
M それがどうしてここまで服好きになったんだろう?
S  うーん、そうですね……あんまり関係ないと思うんですけど、親が服飾の仕事をしていたんです。婦人服を作る工場で働いていて、そこにはミシンがあったり、パタンナーのいるオフィスもあって。工場が家からすごく近かったので、小さい頃から遊びに行って、いらない生地をもらって遊んだりし
ていました。ひょっとしたらそれが影響しているかも?
M どう考えても影響してるよね⁉ ものすごく大きな強みだよ!
S  そうなのかな。もう工場はたたんじゃったんですけど、機械はまだ残っているらしいので、将来は使わせてもらおうかな。最近、お休みの日は服を作っているんです。先日はジャケットとパンツのセットアップを作りました。パンツはハーフ丈にしたんです、途中でちょっと時間がなくなっちゃって(笑)。いや、デザインでもあるんですけどね。
M (写真を見せてもらいながら)かっこいい! 自分で作った服を自分で着れば、販促までできちゃう。すごいな、出資さえしてもらえれば、もういつでもブランドを始められるんじゃない? ぜひ実現してほしい!

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「普段はモノトーンが多いけど、今日はオレンジのタンクトップを」と新藤さん。昔のアニメを見るのが好きで、オススメは『ブラック・ジャック

萩原 涼さん(アパレル勤務)

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「普段は古着を着ることが多いですね。このトップスも数年前に見つけたヴィンテージのセリーヌです」と涼さん。デニムパンツはザラで購入

Instagram: @rp_ryo

Profile
はぎわら りょう●神奈川県出身。大学生のときに、友人たち6人と健康的な音楽イベントを企画・運営する「11PM(イレブンピーエム)」を立ち上げる。今春、大手アパレル企業に入社。ショップスタッフとして勤務中。

仲間と音楽イベントを開催。今は将来の夢を模索中

M 涼ちゃんはイベントオーガナイズグループ「11PM(イレブンピーエム)」の一員として活動しているけど、いつから始めたの?
萩原 涼さん(以下R) 大学2 年生のときです。いろんなイベントに遊びに行きましたが、怖い雰囲気だったりして居心地があまりよくないと感じることが多かった。女の子が主催の、もっと明るくヘルシーな音楽イベントができたらいいなと思ったのがきっかけです。あえてクラブではなくギャラリースペースを借りて、DJブースを作ったりしました。
M 「遊び場がないなら作っちゃえ」という発想が、本当にすごいと思う。
R 自分でも、行動力があったなと思います(笑)。最終的には、毎回場所を借りるのではなく、自分たちのスペースを持って、イベントを行なったり、くつろげる場にしたいと思っています。
M 今春からアパレル企業に就職しているけど、11PMの活動は?
R 継続していきたいと思っています。将来やりたいことや夢みたいなものが、今はあまりなくて。仕事や11PMの活動を通して見つけていけたらと思っています。ロンドンに留学していたので、英語を使った仕事ができたらいいな。
M ところで涼ちゃんはKAGIRUくん(Donna所属のメンズモデル)とつき合っているけど、ふたりはよく似てるよね。顔もだけど、雰囲気が。
R ときどき言われます!
M 服装も似てるよね。KAGIRUは2000年代前半のストリートみたいな格好をしているけど、涼ちゃんもわりとそんな感じだよね。
R 一緒に出かけるときは、KAGIRUに「これを着なよ」ってアドバイスされるんです(笑)。だから似た格好になってるのかも。実は最近、自分のスタイルが迷走中なんです。彼は自分の好きなものに対するこだわりが強くて。それによくも悪くも影響を受けた結果、何を着たらいいのかわからなくなってきちゃって。
M 惑わされてる(笑)。てっきり、KAGIRUとはもともとファッションの趣味も合うのかと思ってたよ。
R もともと私も、2000年代風ファッションは好きなんですけどね。就職してからは、フェミニンな魅力のあるレーベルの服を販売しています。今まで自分ではあまり着てこなかったテイストなので、スタイルの幅が広がるんじゃないかと思っていて。すごく楽しんでいます。
M いいね。さらに可能性が広がる気がする!

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バッグは20歳の誕生日に両親からお祝いとしてもらったプラダ。必ず持ち歩いているというディオールのリップマキシマイザーとザ・プロダクトのヘアワックスが中に

Ruri Ohnoさん(ダンサー)

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お気に入りだというフェティコのビスチェに、ヴィンテージのブラウスを合わせて。ラップスカートは、インドフェスで購入。バッグはカルティエのヴィンテージ

Instagram: @ruriohno

Profile
ルリ オオノ●大阪府出身。ダンサーの菅原小春に見いだされ、作品に出演したのを機に東京へ。ダンサー、モデルとして多くの映像作品やスチールに出演。ハイヒールで踊る女性トリオ「Fuchsia Ladies」としても活動中。

 

薬剤師になるはずがダンスの道へ。話題のMVにも出演

M 久しぶりに会ったけど、なんか雰囲気がスタイリッシュになった?
Ruri Ohnoさん(以下R) 外出自粛期間にダイエットを始めて、12㎏くらい痩せたんです。いろいろそぎ落とせたような気がしますね、気持ち的にも。
M 最近は、アイナ・ジ・エンドさんの「金木犀」のMVに出てたね。
R あのMVでは、アイナちゃんが私の香水の役という設定だったんです。
M だから2 人でずっとくっついて踊ってたんだ!
R あのときはアイナちゃんと、何も考えずにフィーリングで踊りました。曲のイメージと、あとはひらひらした衣装を生かそうとだけ考えて。
M ダンスはいつから始めたの?
R 学生の頃は、薬剤師になろうと思っていたんです。大学に進学しようと勉強を頑張っていたときに、ダンスと出合って。20歳手前くらいです。テーマパークダンサーを目指している友達に連れられて、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのショーを初体験。子どもが熱中している姿を見て、こんなに感動を伝えることができるダンサーという職業はすごい、これだ!と。
M Ruriちゃんは菅原小春ちゃんのダンス作品に出演してるけど、どこで知り合ったの?
R  ダンスを始めたばかりの頃、たまたまYouTubeで菅原小春さんのダンスを見て、ものすごい衝撃を受けたんです。ちょうど小春さんの作品に出演するためのオーディションがあると聞いて、ダメもとで受けに行ったら、合格して。
M 始めたばかりで受かったRuriちゃんもすごいけど、Ruriちゃんのセンスを見抜いた小春ちゃんの鑑識眼もすごい。それにしても行動力があるね。
R あの頃の熱量って、今考えたらすごかったですね。ダンスを始めたばかりの頃はとがっていたと思います。ダンスに対して私の中で「これこそが正解」というのがあって、それ以外は認められなかった。今は、見る人がいいと思っているなら全部いいと思えます。
M わかる! 僕も昔は、自分の信念に基づいて写真を撮っているから、それ以外のやり方は正しくないと決めつけていた。若いときの自分の、キャパシティの小ささのせいだろうね。今、ダンスのほかにやってみたいことは?
R まず、メイクアップモデルをもっとやりたい。大好きなファッションにも携わってみたいですね。今日着ているフェティコのビスチェみたいな、飾っておいてもサマになる「尊いもの」が好き。あとは最近、陶器ってすごい愛らしいなって思って。そういう「尊いもの」で生活を埋めていきたいです。

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モデルもこなすRuriさん。「憧れは椎名林檎さん。なぜか、曲がすっと自分になじみます。歌詞の世界観も居心地がよくて。スタイルアイコンはモデルの中島沙希さんです」

Kaorukoさん(シンガーソングライター)

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ビーズアクセサリーを作るのにハマっているというKaorukoさん。この日身につけたネックレスも自作だ。トップスはザラ、スカートはオフ-ホワイトのもの

Instagram: @_kaoruko___

Profile
カオルコ●神奈川県生まれ、東京育ち。18歳のときにアイドルのライブ会場でスカウトされて、自身もアイドルデビュー。その後ソロシンガーに転向し、事務所に属さずフリーで活動中。今年2月にシングル「MERCURY」を発表。

 

グループアイドルから、自立したソロシンガーに

M 最初に出会ったときは、髪の毛がピンク色だったよね。
Kaorukoさん(以下K) もともと18歳から21歳まで、アイドルだったんです。黒髪ロングヘアでぱっつん前髪の妹キャラだった。アイドルをやめた反動で、髪をブリーチしてピンクに。鼻ピアスまで開けたんです。ファンの方は目に見えて離れていきましたね。でも自分の望むやり方でソロ活動するためには必要なことだったから、覚悟の上でした。
M じゃあソロになって、一気に変わったんだ。
K 本当に変わりました。アイドルの頃は完全に与えられたものをやるだけだったので。今は事務所にも入ってないから、イベントのブッキングや連絡、衣装の準備まで全部自分でやるしかないんです。
M オーガナイザーという職業があるくらいだから大変だよね。成長した?
K 忍耐力はついたかな。デビューしたとき、ライブハウスでリリースイベントをしたんですけど、出演者をブッキングするのは私なので、すごく大変でした。たまたま見つけていいなと思ったアーティストの方に出演をお願いしたら、実は大阪在住の方で、交通費も払わなきゃいけなくなったりとか。自分のイベントなのに、気が気じゃなくて楽しむどころではなかった。
M すごいリアルな話。そういえば、先日もマイクを買ってたよね。 
K ようやく買いました! 私が買ったのは3 万円くらいのもの。安いほうですよ。でもオーディオインターフェイスはめちゃくちゃ高かった……。
M 音楽をやる上で機材の問題って、どうしても大きいよね。写真はカメラさえ持っていればなんとかなるけれど。
K 個人だと、何かとお金がかかってしまって。でもレーベルに入ることは考えてないんです。プロデューサーをしてくれている子をはじめ、今の、数人の友人たちとやっている感じがかっこいいと思っているから。
M でも、リスナーはもっと増やしたいんじゃないの?
K もちろん、私の音楽をもっと多くの人に聴いてほしいし、いつか海外でライブができたらすごくうれしい。だけど、今のゆるい感じを維持したまま、みんな一緒に大きくなっていけたら、それがいちばんですね。友人たちとスタジオを借りて、みんなのたまり場みたいにして、そこで動画も撮りつつ曲を制作していくのが理想の形です。
M 今は、音楽でお金を稼ぐのが難しい時代だけど、頑張ってほしい。応援しています!

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Kaorukoさんのアーティスト写真。「ソロデビューしたばかりの頃は、曲を与えられて歌うだけでした。自分の力でやってみたくて、曲を作るようになったんです」

野口実紗さん(アパレル勤務)

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キムへキムのデニムとドレス、セシリー バンセンのベストをレイヤード。バッグはイネスブレッサンドのもの。キュートなドレスをビーチサンダルでカジュアルダウン

Instagram: @mdmagw8744

Profile
のぐち みさ●兵庫県出身。大学時代に、南堀江の人気コンセプトストア「VISITFOR(ヴィジットフォー)」でアルバイト。今春に大学を卒業し、上京して大手アパレル企業に就職。バイヤーアシスタントとして働いている。

 

人生を変えた、ダイエットとヘアカット

M 今日は実紗ちゃんに会った瞬間、「おしゃれ!」とテンションが上がった。
野口実紗さん(以下N) 今日着ているベストはセシリー バンセン。デザインはもちろん、ドレスにさらっとコンバースを合わせるデザイナー自身のスタンスがすごく好き。私もそういうスタイルを目指しているので共感します。
M 実紗ちゃんはいつからそんなにおしゃれなの?
N 実は私、高校生のときに今より20㎏くらい太っていたんです。
M ええっ!
N 小学生の頃から、肥満だから病院に行くように通知を受けたりしていたんです。高校でダイエットして、大学1回生のとき、カットモデルに誘われて長かった髪をバッサリ切ったんです。そうしたら、今まで着たことのない服が似合うようになった。髪を切ってすべてが変わりましたね。
M おしゃれのお手本にしている人はいる?
N 大学時代にアルバイトをしていた大阪・堀江のコンセプトストア、ヴィジットフォーのスタッフですね。
M たとえばのんちゃん(ヴィジットフォー店長の浦川望美さん)とかね。彼女は僕の友人でもあるけど、日本でも有数のおしゃれな人。でものんちゃんと実紗ちゃんは、身長も雰囲気も違うから、そのままお手本にはできないはず。そこはどう消化したの?
N おしゃれな人は、その人にしか似合わない着こなしをしていますよね。だから望美さんの格好をそのまままねしても、同じようにはならない。自分らしさを貫く姿勢を学びました。どんな服もできる限り自分らしく着たいと思っていて、日々、自分にとっての「いい具合」を模索しています。
M 僕はいろんな国の人のスナップを撮るけど、海外ってときどき10点満点で15点とかを取るようなおしゃれな人がいるんだよね。日本人はみんなが7、8点になってしまいがち。他人の目を気にして、自分らしく突き抜けられないんだと思う。だから実紗ちゃんの感覚は、日本ではなかなか貴重なのかも。ところで、バイヤーやショップスタッフのほかにやってみたいことは?
N そうですね……自分以外の誰かのスタイリングをしてみたいですね。ずっと、自分のために服を着てきたので。「その人に似合うものを考える」っていうのはすごく面白そう。
M パーソナルスタイリングということね。よし、やろう(笑)。こんなおしゃれな人になら、誰だってスタイリングしてもらいたくなるはず!

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「華やかなセシリー バンセンのドレスも普段の生活の中で着るのが私。自分が楽しいと思える服を身につけています」。リングはmoil(モイル)のもの

SOURCE:SPUR 2021年7月号「原石はあちこちに M'IT STARを探して」
photography: mitograph text: Chiharu Itagaki