2021年、パリ19区オーベルヴィリエ地区にシャネルがオープンした、le19M(ル ディズヌフエム)。職人たちのジャンルを越えての交流を目的に、ここでは一つ屋根の下に刺しゅうのルサージュとモンテックスから靴のマサロ、帽子のメゾン ミッシェル、プリーツのロニオン、羽根細工のルマリエ、ジュエリーのゴッサンスまで、シャネル傘下の11のメゾンダールが集められた。また併設の展示スぺースla Galerie du 19M(ラ ギャルリー デュ ディズヌフエム)とカフェ、書店は、手仕事に興味を持つ一般ビジターも受け入れる。2023年1月には、la Galerie du 19M初の国際的なエキシビジョン をセネガル・ダカールで開催。そして今年9月末からは世界初となる規模のエキシビションが、東京にやって来る。 la Galerie du 19M Tokyoの充実した企画内容と背後の意味合いを、シャネル ファッション部門兼シャネルSAS プレジデントおよびle19Mのプレジデントを務めるブルーノ パブロフスキーが、シュプールに語ってくれた。パリ・グランパレにて、シャネルの2025年春夏 オートクチュール・コレクション発表を控えた1月28日の朝のことだ。

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この秋必見!サヴォアフェールを讃えるle19Mのエキシビション

2021年、パリ19区オーベルヴィリエ地区にシャネルがオープンした、le19M(ル ディズヌフエム)。職人たちのジャンルを越えての交流を目的に、ここでは一つ屋根の下に刺しゅうのルサージュとモンテックスから靴のマサロ、帽子のメゾン ミッシェル、プリーツのロニオン、羽根細工のルマリエ、ジュエリーのゴッサンスまで、シャネル傘下の11のメゾンダールが集められた。また併設の展示スぺースla Galerie du 19M(ラ ギャルリー デュ ディズヌフエム)とカフェ、書店は、手仕事に興味を持つ一般ビジターも受け入れる。2023年1月には、la Galerie du 19M初の国際的なエキシビジョン をセネガル・ダカールで開催。そして今年9月末からは世界初となる規模のエキシビションが、東京にやって来る。 la Galerie du 19M Tokyoの充実した企画内容と背後の意味合いを、シャネル ファッション部門兼シャネルSAS プレジデントおよびle19Mのプレジデントを務めるブルーノ パブロフスキーが、シュプールに語ってくれた。パリ・グランパレにて、シャネルの2025年春夏 オートクチュール・コレクション発表を控えた1月28日の朝のことだ。

ダカールから東京へ

SPUR: 今回ダカールに続くla Galerie du 19Mの国際的なエキシビションの地に、なぜ東京を選んだのですか?

 
ブルーノ・パブロフスキー(以下BP): 第一に、シャネルの日本、特に東京とのストーリーには歴史があります。強い絆のおかげで、これまで多くのプロジェクトが実現しました。ですから日本とフランス両国の文化が、何世紀にもわたって引き継がれている素晴らしいサヴォアフェールにいかに根ざしているかを表現しようとしています 。東京は、こんな企画を可能にしてくれる場所。また歓迎されていると感じられるからこそ、la Galerie du 19M Tokyoが実現の運びとなリました。

SPUR: ダカールから東京へはどう繋がったのですか?

BP: ダカールで行われたメティエダール コレクションのレプリカショーを2023年に東京で開催した後、la Galerie du 19M Dakar展の経験を生かすことが大切だと感じました。既に着手した“冒険”の次章として。

SPUR: とは言え、両展のコンテクストは異なりますよね。la Galerie du 19M Dakar展には現地でのショーと言う伏線がありましたが、la Galerie du 19M Tokyoは独立したイベント。またダカールにはシャネルのブティックはありませんが、東京ではシャネルの存在感はとても大きい…。

BP: 根底のアイディア、基本的なアプローチは共通ですが、もちろん、二つは同じ位置づけではありません。意図したのは、それぞれの特性を尊重しつつ二都市を関連づける最良の方法を見つけること。ダカールではセネガルのサヴォアフェールと私たち自身の職人技を融合させました。現地の文化と我々の持つ職人技が相互的に作用したのです。 一方今回は最適なアングルで東京らしさを打ち出しています。各分野で活躍されている方々で構成されたエディトリアル・コミッティのサポートにより、我が社のメティエダールを通じて日本のヴィジョンをより高めているのです。

SPUR: 日本とフランスは、どんな価値観をシェアしていると思いますか?

BP: 共通点はたくさんあります。日本人にはサヴォアフェールの背後にある価値観、またその伝承に対しての深い敬意が見られます。シャネルのものづくりを可能にするのも、実は抽象的なこの価値観なのです。見て触れられるモノではなく。率直に言って、今回のような企画を実現できる場所はそうそうないでしょう。

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le 19M内、ルサージュのアトリエ © le19M x Laurent Poleo-Garnier

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パリ19区にあるle 19M外観。© le19m x Gael Turpo

la Galerie du 19M Tokyoの具体的な内容とは?

SPUR: 本展では何が見られるのでしょう?

BP: 文化と職人技に深く入りこんだ展示です。例えばサヴォアフェールを際立たせて特別に作られた作品。そのために日本の職人等を招き、参加を仰ぎ、見解を求めました。コラボレーションは、常に企画を豊かにしてくれますね。万人に、つまり私たちの顧客だけでなく一般ビジターの方たちにも向けた発信です。幅広い層を対象にしているからこそ、これまで例のないとてもユニークな経験を提案できるのです。文化に対するユニークなアプローチですね。ここまでのスケールのイベントをオーガナイズするのははじめてです。

SPUR:  la Galerie du 19M Tokyoを満喫するためのアドバイスはありますか?

BP: 日本ならではのプログラムによる参加型ワークショップを試してください 。今まで、たくさんのワークショップを催してきました。実際に手仕事を体験すると、記憶が明確になるでしょう。マドモアゼル・プリヴェ展を東京で開いた時(2019年)も同様の機会を提供し、とても好評でした。今回は日本の文化との融合なので、さらに大きな規模になりますよ。

SPUR: これらのグループ展に加え、展覧会にはもう一つのパートがありますよね。

BP: *ルサージュの100周年回顧展。刺しゅうのサヴォアフェールに捧げたルサージュの仕事を讃えるのは、私たちにとってとても意味深いことです。

SPUR: la Galerie du 19M Tokyo を通じて、日本のオーディエンスに何を伝えたいですか?

BP: 日本の伝統、文化と歴史に、並はずれた職人技術、両国共通の職人技術を巡る価値観…それらすべてへのこだわりです。また狙いの一つは、シャネルがサヴォアフェールへの意識向上にいかに貢献しているかを知ってもらうこと。サヴォアフェールはとてもフラジャイルで消滅の危惧もありますから。

SPUR: サヴォアフェールのもろさと言えば、2022年にフィレンツェでのメティエダール コレクションのレプリカショーに際して開かれたカンフェレンスで、シャネルがポリモーダ(現地のアートスクール)の生徒たちを招き、専門技術を極めるよう勧めたことは記憶に新しいですね。


BP: サヴォアフェールを支えて未来に受け継がれるよう奨励するには、まずそれについて話し合うことが大切です。フィレンツェではそのためのプログラムが幾つかありました。例えばメティエを語るマスタークラス。東京でもメティエダール コレクションのレプリカショーの後、クリステン・スチュワートとディミトリ・シャンブラスのマスタークラスを開きました。今回は日本の職人とle19Mの専門技術を極めた職人たちがクリエイティブな対話をします。

 

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le19 M内、羽細工のルマリエのアトリエ。© le 19m x Jonathan Llense

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le19 Mのアトリエでのウィービング。© le19m x Camille Brasselet

サヴォアフェールを巡る、シャネルの役割

SPUR: le19Mを一般に広めることはなぜそんなに大切なのですか?

BP: la Galerie du 19M Tokyoでは、私たちの顧客とそうでない方々の境界線はありません。目的は商品を売ることではなく、メティエダール、サヴォアフェール、専門技術の背後にあるシャネルの姿勢を理解してもらうこと。職人技の価値、文化、そしてシャネル製品に対して内面に自然と湧き上がる愛情から生まれる価値観です。

SPUR: 職人たちに対する思いを聞かせてください。

BP: それぞれのメティエに表現の手段を与えられるのは、非常に素晴らしい機会だと思います。昔から伝わる技術に深い敬意を払い、同時にそれを未来に伝え、現状を近代化させつつ。

SPUR:サヴォアフェールはクリエイションにとって何を意味しますか?

BP: 特にオートクチュールについてお話ししましょう。サヴォアフェールを駆使したクチュールのコレクションは、どれをとっても前進の機会ですから。一方プレタポルテでは値段設定など生産に関する制約があります。オートクチュールがなかったら、プレタポルテで使われるメティエダールは存在しません。

SPUR: シャネルのオートクチュール最新コレクションの発表まで、あと少しですね。

BP: スタジオのチームによる55ルックのいずれもが、職人とのコラボレーションによりサヴォアフェールを体現しています。シャネルのスタジオとメティエダールの共同作業であるこのコレクションは、まさに職人技術に捧げられています。カール、そしてヴィルジニーに師事したチームは今日素晴らしい仕事を続けています。メゾンに仕え、またとない結果をもたらすチームワークは、称賛に値しますね。そして1年後に発表されるのは、マチュー・ブレイジーのシャネルにおける初めてのオートクチュール・コレクション。私たちのサヴォアフェールがどんな風にモードのアイディアを支えるのかを見せたいと思っています。

la Galerie du 19M Tokyoは9月30日〜10月20日、森アーツセンターギャラリーと東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)で開催 。グループ展示では**5名のクリエイティブなゲストが監修した、メゾンダールと日本の職人技による卓越したクリエイションを披露。入場無料。

* 正確には、創立1924年

** 安藤桃子(映画監督、キネマ ミュージアム代表)、アスカ ヤマシタ(Montex アーティスティックディレクター)、緒方真一郎(SIMPLICITY創業者兼クリエイティブディレクター)、徳田佳代(キュレーター)、西尾洋一(マガジンハウスCasa BRUTUS編集長)

 

 

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シャネル 2025年春夏オートクチュール コレクションより。© Chanel

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シャネル 2025年春夏オートクチュール コレクションより。© Chanel

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シャネル 2025年春夏オートクチュール コレクションより。© Chanel

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シャネル 2025年春夏オートクチュール コレクションより。© Chanel

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ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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