70代の新星おしゃれアイコン、ドクター・チンの着こなし術に密着!

昨年ミュウミュウのランウェイにモデルとして出演し「あの人はいったい誰?」と注目を浴びた、70代の新星おしゃれアイコン、ドクター・チン。着こなし術や服を愛するきっかけなど、最新のデイリールックとともに彼女のプレイフルなスタイル流儀にフォーカスする

昨年ミュウミュウのランウェイにモデルとして出演し「あの人はいったい誰?」と注目を浴びた、70代の新星おしゃれアイコン、ドクター・チン。着こなし術や服を愛するきっかけなど、最新のデイリールックとともに彼女のプレイフルなスタイル流儀にフォーカスする

チン・フイランプロフィール画像
チン・フイラン

上海の病院に長年医師として勤め、71歳となった現在は引退。プラダとミュウミュウの顧客としてミウッチャ・プラダが手がける服や小物をこよなく愛し、自身のSNSにスタイリングを投稿したところ世界中で話題に。写真撮影は息子の黄未来さんが担当し、ときにはツーショットを披露することも。

STYLE.1 ドレッシーな装いこそ刺しゅうや素材に遊び心を

SPUR3月号 チン・フイラン コーディネート

「ファッションウィークに参加するときや、旅へ出るとき以外は基本的に自宅か、住んでいる街で静かに暮らしています。それでも着こなしは常に華やかに彩りたくて」。ホームパーティを想定したコーディネートは、自宅の真っ赤なソファに合わせたモノトーンのドレススタイル。2011-’12年秋冬のミュウミュウのドレスは、スパンコールでかたどった鳥が豪華絢爛。足もとまでスタイリングする際は、プラダのゴールドのパンプスを合わせることが多いという。

STYLE.2 ロックとガーリーを融合したQin流ミックスコーディネート

SPUR3月号 チン・フイラン コーディネート

「家の近所で撮影しました。この日はハードなテイストにしたい気分だったので、アクネ ストゥディオズのレザージャケットを主役にスタイリング。中に着たワンピースはミュウミュウの2022年春夏コレクションのもので、タイダイ柄に花のビーズ刺しゅうがとても可愛いんです。靴もミュウミュウで、こちらは2014-’15年秋冬のもの。モノトーンを基調としたので、リボンでキュートさを味つけ。バッグは2013-’14年秋冬のプラダ、ハットは日本で購入したロエベのヴィンテージです」

STYLE.3 寒い冬こそカラフルに、色合わせのマリアージュを楽しむ

SPUR3月号 チン・フイラン コーディネート

「息子が持っているドロール ド ムッシュのシャツを拝借して、いつもよりちょっと色鮮やかな組み合わせを考えてみました」とDr.Qin。スエード素材のスカートは2020年リゾートコレクションのミュウミュウ、スタッズ使いが特徴のシューズとバッグはプラダ、柔和なペールブルーのマフラーはマルニ。色のマッチングを計算しながら、ブラウンやホワイトなどで全身をまとめ上げるテクニックはさすが。

STYLE.4 プレイフルな素材やパターンに心躍る、ある日のデイリールック

SPUR3月号 チン・フイラン コーディネート

当たり前の日々も、彼女の装いはスペシャルで、気を抜かない。この日は、ベーシックウェアにイエローのアクセントをきかせたスタイリングに挑戦。「長袖のTシャツは昨年来日したときにビームスで購入したもの。2016-’17年秋冬のプラダのビスチェを重ね着しました。オリエンタルな刺しゅうに惹かれたスカートと、フェザーで埋め尽くされたジョッキーハットで華やかに」。ブーツとバッグもプラダを着用。

スタイルを彩るプレイフルな小物を一挙公開

Dr.Qinのスタイルの要は、インパクトのある小物だ。貴重なコレクションから、特に出番が多いお気に入りを披露。

シューズ

SPUR3月号 チン・フイラン 靴

シルバーやゴールドなど、メタリックな質感がアクセントになっているデザインが豊富なシューズ類。「特に多いのがプラダ。クラシックなアメリカ車を表現したウェッジソールシューズは2012年春夏、中央に大きなボールを配したパンプスは2016年春夏のもので、他のシーズンのアイテムも複数所有しています。最近だとアディダス オリジナルス×ウェールズ・ボナーのスニーカーもよく履いています」 

アクセサリー

SPUR3月号 チン・フイラン アクセサリー

アクセサリー類はすべてプラダ。「PVCを使ったネックレスとピアスはさわやかなアクセントに。気に入ったものは色やデザイン違いで購入します。あとはブランドらしいビジューやビーズを用いたものも好き。スパイス的に取り入れていますね」

バッグ

SPUR3月号 チン・フイラン バッグ

「モワナの頭文字"M"のロゴを留め具にあしらった『ガブリエル BB』は、ブランドの発信地であるパリにも持って行ったお気に入り。プラダの定番、トライアングルロゴのバッグはいくつか持っていますが、最近はオールホワイトの登場回数が多いですね。艶やかなパープルのサテン生地に刺しゅうやビーズを施したハンドバッグもプラダ。ミュウミュウの『ボー バッグ』はヴィンテージ感のあるレザーの表情に愛着が湧きます」

グローブ&ブローチ

SPUR3月号 チン・フイラン グローブ&ブローチ

Dr.Qinを表すアイテムのひとつである、グローブ。素材の風合いや味のあるシワなど、長年愛用しているからこその経年変化も魅力。「最近は、ブローチも好き。幸せを運んでくれそうな燕のモチーフは、ミュウミュウで見つけました」

Q&A Dr.Qinのおしゃれの流儀に迫る

Q.1 ファッションを愛するようになったきっかけは?
A 実は、ファッションのことはよくわからないんです。私は長年医者として忙しくしていたので。服を着ることに楽しみを覚えたきっかけは、息子です。彼はアートを専攻していたので、中学生の頃から雑誌を買っていました。一緒に眺めているうちに、素敵なモデルたちが華やかな服を着た美しい写真に魅了されるようになりました。私の装いを見ていただければわかるように、ほとんどの服はメンズで、息子から借りているものなんですよ。SNSにスタイルをアップするようになったのは、2022年から。上海の街の人がとてもスタイリッシュだと気づいてから、自分もいろんなおしゃれに挑戦しようと思うようになったのです。最初の写真を投稿するときは、ずいぶん息子に背中を押されました。SNSは、自分のファッションの幅を広げてくれるので、楽しいですね。

Q.2 あなたはミウッチャ・プラダのファンであることで有名ですが、彼女のクリエーションに惹かれる理由を教えてください。
A これも息子がきっかけですが、彼のワードローブにプラダの服が多いと気づいたんです。そこからミュウミュウを含め、ミウッチャの服の虜となりました。彼女の作る服は、決して廃れません。最初に自分で買ったプラダのピースは、2013年に発売されたジャケット。10年以上も前の服ですが、今でも新鮮に着られます。時を超えて愛されるクリエーションとはこういうことだと、実感しますね。また彼女の革新的なデザインは、抑制された中にこそ宿るのだと思います。

Q.3 ワードローブの中で、一番大切なアイテムは?
A それは、やはり医者の白衣です(笑)。

Q.4 2025年春夏コレクションですでに購入したものは、ありますか?
A ロエベのパンツをオーダーしました。非常に美しく、ひと目で恋に落ちました。そのうちSNSで披露できるかもしれません。

Q.5 ファッションアイコンは誰ですか?
A ミウッチャ・プラダとフランカ・ソッツァーニ(元イタリア版『ヴォーグ』編集長)の二人のスタイルには感化されます。

Q.6 スタイリングをするにあたってのマイルールはありますか?
A いいえ、特にありません。おしゃれは自由であればあるほどいいと思っているので、特別なルールは設けません。街で目に留まるのも自由なスタイルを楽しんでいる人たちです。

Q.7 最近日本を訪れたと伺いましたが、どこへ行きましたか? また買ったものはありますか?
A 残念ながらそのとき体調が優れず、多くの場所を訪れることができなかったんです……。しかし、ヴィンテージショップでロエベのレザーの帽子を、ビームスでデイリーに使えるシンプルなアイテムをいくつか購入しました。今回披露したスタイルでさっそく取り入れています。

SPUR3月号 チン・フイラン モデル

A ミュウミュウの2024-’25年秋冬コレクションでモデルに抜擢。デビューながらランウェイでの存在感は、ファッション界に大きな衝撃を与えた。オファーはSNSを通してだった

B Dr.Qinに用意されたルック29。最初はシンプルなグレーのコートだったが、フィッティングを経て立体的な花の装飾が加えられたという裏話が

SPUR3月号 チン・フイラン 息子

C 昨秋は、ゲストとしてパリファッションウィークに参加。出席したショーの一つ、sacaiの構築的なアウターは、パリの街中でもひときわ目を引く。SNSでは、デザイナー阿部千登勢との写真も公開

D スキャパレリのプレゼンテーションでは、フリンジのブラックドレスで登場。同ブランドのアートのようなバッグを片手に

E Dr.Qinがファッションに興味を持つきっかけとなった息子の未来さん。Instagramでは、親子のリンクコーディネートも見どころ。昨年5月、母の日を祝っての投稿では、計13体のスタイルを披露した。こちらは、二人が愛するプラダの2016年春夏のジャケットを主役にしたスタイリング。グラフィカルなパイピングが印象的だ

ファッションの最新記事はこちら