売り場のプロたちは次のトレンドをどう見ている? バーニーズ ニューヨーク、三越伊勢丹リ・スタイル、SPURSHOPのバイヤーが集合。ピリングス、pan、B.B. WALLACEなど今注目のブランドから、国内ブランド旋風の背景、秋冬の買い物キーワードまで本音で語り合った。

国内ブランド旋風到来! バイヤーたちが推したいブランドを語る

売り場のプロたちは次のトレンドをどう見ている? バーニーズ ニューヨーク、三越伊勢丹リ・スタイル、SPURSHOPのバイヤーが集合。ピリングス、pan、B.B. WALLACEなど今注目のブランドから、国内ブランド旋風の背景、秋冬の買い物キーワードまで本音で語り合った。

――各店の最近の傾向を教えてください。
宮嶋さん(以下M) バーニーズは感度の高いセレクトショップを買い回る大人の顧客が多いのですが、近年はアジアブランドの買いつけにも力を入れています。日本や上海、韓国のブランドなどは20〜30代にも響いています。

奥田さん(以下O) うちは伊勢丹新宿店の中にあるセレクトの業態で今年で30周年を迎えます。フェミニンな要素も人気ですが、リトコフスカやセッチュウなど、テイラードが得意なブランドも取り入れながら幅広いターゲットに響くように工夫しています。

永嶋さん(以下N) SPURSHOPは9月で2周年。エディターと伴走し、本当に私たちが欲しいものをオンラインで届けることがコンセプトです。実店舗がない分、誌面や顧客の方々のクチコミで売り上げが動いている印象です。

M スタイリストの小嶋智子さんと作ったpanのアイテム、とても可愛かったですね。

N スタイリストさんたちと協業して作ったアイテムは時間をかけてこだわっているだけあって、売り上げを伸ばしています。ファッションのプロの意見が反映されているのはSPURSHOPの強みかもしれません。

O 今は実店舗があっても、物のよさを伝える方法が大事な時代。リ・スタイルでも最近はミナ ペルホネンのデザイナーの皆川明さんと行く北欧旅行ツアーや、先日行われた『POLA presents BALLET TheNewClassic 2026』ではバレエ鑑賞後にバックステージに顧客を招待して、衣装を手がけたデザイナーたちとトークセッションを開きました。洋服のストーリーを伝えるために、お店側もどのように付加価値をつけるかを考えますね。

――注目する秋冬のトレンドはありますか?

M SPUR9月号で小嶋さんが提案していた〝ミニマルロマンティック〟は、ショップとしてもこの潮流に勢いがあると感じます。うちはユニフォーム的なジャケットやブルゾン、シャツなどメンズライクなものが好まれるのですが、レディスのトレンドを受けて見直したいなと思っています。

N わかります。SPUR本誌で小嶋さんが選ぶ日本のブランドは勢いがありますよね。

M 世界進出するデザイナーも増えてきていますし、国内デザイナーを応援したい気分が高まっていますね。価格的にもインポートより買いやすいというのはポイントが高い。

O 個人的にピリングスはプッシュしたいブランド。今年はどこもいいアウターが豊富なのですが、暖冬なので気軽に羽織れるピリングスのニットジャケットで乗り越えられそうだと思っています。

ジャケット¥86,900/リトルリーグ インク(ピリングス)

ジャケット¥86,900/リトルリーグ インク(ピリングス)

手作業のぬくもりと素材への探究心が込められたピリングスのアイテム。クラシカルなショートジャケットも裏地を少しのぞかせることで抜け感が生まれる。

M ピリングスもだけど「ここのがっこう」で学んだデザイナーの中には、LVMHプライズをとる人もちらほら。世界的に注目度が高いですよね。うちも最近ポップアップをやったのですが、ソウシオオツキの売れ行きがよくて、追加が間に合わなかったほど。

N そうなんですね。SPURSHOPでも推していますが、私はpanがお気に入り。この中綿入りアウターは推薦したい。ミントブルーってアウターとしては珍しいのですが、ヴィンテージのネグリジェガウンの色合いから着想を得ています。表地は軽量で耐久性のあるナイロン素材。中側は米軍の装備にも採用されている高機能中綿で、とても暖かいんです。冬は暗いトーンが多くなるので、差し色にもいいなと思っています。

コート¥132,000/サンカッケー(pan)

コート¥132,000/サンカッケー(pan)

薄い中綿を仕込んだステンカラーコートのデザイン。ノスタルジックな色みも素敵。

M ジャケットでいうと、ニューヨークと京都に拠点を置くユニセックスなT・Tも見逃せない。泥染めのレザージャケットは天然素材にこだわって作っていて、レザーでありながらシャツのように着られる軽さが好き。一見シンプルですが、袖を通すとよさがわかります。レザーはインポートだと一気に高くなってしまうので、日本のものづくりを応援する意味でも買いつけていきたいです。

レザージャケット¥352,000/ティー・ティー

レザージャケット¥352,000/ティー・ティー

ややオーバーサイズのレザージャケットは薄く仕立てられて、軽さも魅力。端正なスタンドカラーというのも知的な印象。

O 〝ミニマルロマンティック〟のテーマでも紹介されていましたがコブルドゥもいいですよね。日本の女性デザイナーでここまでエッジのきいた感性の方ってなかなか出てこなかったので、ついにきた!と応援したい気持ちでオーダーしました。一見するとクラシックなプリーツスカートなんですが、前と後ろで長さが違う。横から見た瞬間にドキッとするぐらい表情が異なります。トレンドがない今、ベーシックな中にどこか変化球があるデザインが欲しいと思っていて、その感覚にもフィットしたアイテムでした。

スカート¥88,000/コブルドゥ

スカート¥88,000/コブルドゥ

コンテンポラリーダンスなどで、回転する動きを止めた姿をイメージしたというプリーツスカート。立体的なフォルムでエッジをきかせた。

――うちのショップだからこそ推したいブランドはありますか?

M 個人的にプッシュしたいのはトゥ エ モン トレゾア。日本のデニムに特化したブランドで、ミニマルな感じが今季に合いそう。バーニーズでも初期から扱っています。デニムをカジュアルにはくというよりもスラックスっぽく、ラインをきれいに出して着こなしたい女性から支持されています。〝カルセドニー〟というデニムの定番ラインをもとに、そのシルエットを生かしたとろんとした素材のセットアップにひと目惚れしました。これは自分でも個人買い。働いている顧客が多いので、店舗ではセットアップが好調なんですが、一見するとメンズライクと思わせて、胸もとをあけてチューブトップなどに羽織るとセンシュアルにも着こなせます。コンパクトに収納できるので旅や出張が多い方にもいいんですよね。自分自身の感覚も大切にしながら、実際に買ってみて、そのよさを伝えられたらと思います。

ジャケット¥52,800・パンツ¥41,800/エドストローム オフィス(トゥ エ モン トレゾア)

ジャケット¥52,800・パンツ¥41,800/エドストローム オフィス(トゥ エ モン トレゾア)

高級感もありつつ、軽い素材感。

N バイヤーの熱量って伝わりますよね。うちが推したいのはB.B. WALLACEです。メリル・ロッゲとサラ・オルソップの二人が手がけるベルギー発のニットウェアブランド。編集部にもメリルのファンが多いですし、マルニのクリエイティブ・ディレクターになったことで自身のブランドはお休み中なので、ここで押さえておきたいなと。

M まだ日本で扱っているところも少ないですよね?

N そうなんです。彼女の作り出すデザインの中ではこのカーディガンはシンプルですが、ウールの上質さとディテールのきれいさは抜群。どことなくフェミニンさも落とし込まれていて、これはぜひやりたいと買いつけました。ピンクを買いつけているのは日本でうちだけ。SPURといえばピンクですからね。

M いちごミルクみたいで可愛い。

カーディガン¥129,800・スカーフ¥49,500/SPURSHOP(B.B. WALLACE)

カーディガン¥129,800・スカーフ¥49,500/SPURSHOP(B.B. WALLACE)

大きなボタンがアクセント。共布のスカーフと合わせれば、統一感のあるスタイリングに。

O メリルもそうですが、アントワープのデザイナーへの注目度が上がっていますよね。コブルドゥとも通じるところがあると思っているのがジュリー ケーゲルスです。ベースはシンプルなんだけど、独自のひねりが利いています。アフォーダブルラグジュアリーでシンプルなものがトレンドだったので、次はデコラティブなものがくるかと思いきや、その中間ぐらいのムードが台頭。今回選んだのはバッグです。二つの異なるフォルムのバッグが一つになっています。

N これ面白かったですよね。

O 30歳を越えたあたりから、ちょっといいハンドバッグを探したいと思っていつもチェックしていたのですが、どこも高くて。一方で誰もがわかるアイコニックなものは持ちたくないという気分もあって……。このダブルバッグはそんな自分の気分にもぴったりでしたね。写真は黒ですが、個人的にはオレンジも好き。コブルドゥもそうですが、やっぱり攻めの姿勢を持った女性デザイナーが作るものというのもピンとくるところなのかも。時代と合っているのだと思います。

バッグ¥193,600/ノースリバティー(ジュリー ケーゲルス)

バッグ¥193,600/ノースリバティー(ジュリー ケーゲルス)

アヴァンギャルドと生真面目さを両立する稀有なルックス。

M 小物で言うと、メガネはショップでも好調ですね。

O わかります。すごく売れている感触ですね。20代の同僚は顔まわりにキラッとしたものを入れたいときはジュエリーじゃなくてメガネがいいと言っていました。

M ずっとアビエイターシェイプを探していたのですが10 アイヴァンは秀逸。主張しすぎず、すっと顔になじむんですよね。それでいて、鼻パッドに天然シェルを使っていたり、軽く仕上げてあったりとワンランク上の作りだと感じます。

メガネ¥88,000/アイヴァン PR(10 アイヴァン)

メガネ¥88,000/アイヴァン PR(10 アイヴァン)

アビエイタータイプながら、細身でフェミニンなムードに昇華。

N インバウンド市場でも、ジャパンブランドは求められていますし、メガネは海外の方も探していますよね。鯖江の工場はパンク寸前と聞いたこともありますよ。

M 自分で実際に身につけるものは、やっぱり細部へのこだわりや手仕事であることにストーリーを感じてしまうので、そういうものが人気なのはわかりますよね。

N マリーエレーヌ ドゥ タイヤックは今年で30周年ですよね。私も前職から長くおつき合いがあるブランド。自分のごほうびに初めて買ったジュエリーであり、ずっと永遠の憧れです。素敵な人がさりげなくつけているジュエリーといえばの代表格です。

リング〈YG、レインボームーンストーン〉¥623,700/MHT(マリーエレーヌ ドゥ タイヤック)

リング〈YG、レインボームーンストーン〉¥623,700/MHT(マリーエレーヌ ドゥ タイヤック)

ハートが連なった石の配置が印象的。

M バーニーズでもジュエリーは本当に好調。資産価値としてもそうですが、幅広いアイテムが売れています。

O クロムハーツは相変わらず売れ続けていますね。女性がつけるのもカッコいいという認識が広がっている感じがします。

N ファッション的に気軽に楽しめるビーズジュエリーも人気。気分によって楽しめる人が増えたのだと思います。価格帯を問わずにミックスしたい気分ですね。

奥田詩保子さんプロフィール画像
奥田詩保子さん

三越伊勢丹リ・スタイル バイヤー。2017年に三越伊勢丹へ入社。販売、アシスタントバイヤーを経験後、2023年よりインターナショナルクリエーターズを担当している。2026年4月より現職で活躍中。

永嶋真理さんプロフィール画像
永嶋真理さん

SPURSHOPバイヤー。百貨店やセレクトショップで販売・バイイングを経験後、独立。現在はヴィンテージをセレクトするkinematographのオーナーも務める。カルチャーへの感度が高く、さまざまな活動に取り組む。

宮嶋泰子さんプロフィール画像
宮嶋泰子さん

バーニーズ ニューヨーク ウィメンズバイヤー。百貨店、セレクトショップなどを経て、2026年に入社。国内外のブランドを担当し、ラグジュアリーから日本・アジアの新進ブランドまで幅広く買いつける。