道休 蓮 プロローグの瞬間
182㎝の長身に下駄を履き、飄々とスタジオに現れた16歳の少年。日本語、英語、フランス語の3カ国語を操り、プログラミングを学ぶというグローバルなスキルの持ち主はいったい誰!? 憧れブランドの衣装を着こなし、増刊の表紙を飾る道休蓮さんの輝かしい未来は、序章が始まったばかり
道休 蓮 プロローグの瞬間
182㎝の長身に下駄を履き、飄々とスタジオに現れた16歳の少年。日本語、英語、フランス語の3カ国語を操り、プログラミングを学ぶというグローバルなスキルの持ち主はいったい誰!? 憧れブランドの衣装を着こなし、増刊の表紙を飾る道休蓮さんの輝かしい未来は、序章が始まったばかり
【インタビュー】誰にも真似できない個性。奇跡のカバーボーイ誕生
SPUR3月号で人生初のファッション撮影に挑戦した16歳の彼の名は「どうきゅうれん」と読む。1年のうち8カ月は英国全寮制の名門校ウィンチェスター・カレッジで学んでいる。「英語のほうが楽」とはにかみながら、インタビューに英語と日本語を交えながら応じた。まずは印象的な〝蓮〟という美しい名前の由来についてたずねた。
「僕の名前を日本語で書くと蓮の花の意味ですよね。この名前は仏教の言い伝えにも関係しているのですが、お釈迦さまが生まれて初めて歩いたとき、その足跡から咲いた花と言われているそうです。母は僕が生まれる前に花に関連する名前をつけたかったので、この名前を選んだのだと聞いています。もし僕が女の子だったら、また別の花の名前だったかもしれませんね」
水中から顔をのぞかせる蓮の花は沼の中にあっても周囲の環境と一切交わらず、濁った色になることなく、本来自らが持つ鮮やかな色のみで咲くのだという。初めてカメラの前に立ったときの道休さんはそんなことを思わせる超然とした佇まいだった。モデルとしての経験値はゼロ。撮影に挑んだ瞬間の印象を聞くと少し考え込んでから「緊張もしなかったし、何も思わなかったかな」とつぶやいた。しかしながら、写真になった瞬間の生まれ持った華やかさは別格だ。そのミステリアスな素顔の奥には何が隠されているのだろうか?
「9歳から、2つ下の弟とふたりでイギリスに留学しました。その頃のことは、正直なところ、とても寂しかったと記憶しています。現在は友人もでき、環境にも慣れて、大学進学のためA-Level(大学入学資格の一種)の試験勉強をしています。週6日間の授業を朝から夕方まで。18時ぐらいに寮に帰ってから夕食をとって、19時〜21時は宿題の時間にあてる、という生活です。A-Levelでは3〜5科目を選択するのですが、僕は哲学とコンピューターサイエンス、数学の3つ。まだ日本に住んでいた頃、小さいときからゲームが好きだったので、母がプログラミング教室に通わせてくれていたんです。そこで面白さに目覚めて、専門的に勉強しているところです」
年に6回ほど、休暇のたびに帰国する。その時間を利用してモデルをやってみたいと思ったのは1年前のこと。
「母がパリのファッションデザイナーの知人に僕の写真を見せたところ、モデルに向いているんじゃないかと言われたことから、僕もこの仕事に興味を持ちました。将来的に自分は何をしたいのかがわからないタイミングだったので、挑戦してみたいと思いました」
周囲からは〝年齢の割に子どもっぽい〟と言われることも多いが、ここ一番の集中力はピカイチ。洋服に袖を通すとスイッチが入り、仕立てのよいスーツから前衛的なスタイルまで、肩肘張らずに着こなしていた。
「気分屋なんだと思います。本当にやらないといけないときは集中できるのですが、そこまで気持ちを持っていくまでに時間がかかる。映画やアニメはチャプターごとに観たり、じっと鑑賞するのが苦手。自分のペースで楽しめる漫画が大好きです。いまは『ワンピース』や『ハンターハンター』『ベルセルク』にハマっています」
これと決めたら、没頭するタイプという道休さん。3歳の頃から変わらずに好きなのは『ゲゲゲの鬼太郎』だ。
「家の近くのアートセンターでたまたま『ゲゲゲの鬼太郎』の映画をやっていて、そこから祖父の携帯電話を借りてYouTubeで見漁っていました。少し目が隠れるヘアスタイルや普段から履いている下駄は鬼太郎からの影響。どうして好きなのかと聞かれても、理由はわからないんです(笑)。下駄を履いているとイギリスの友達からは笑われるけど、気にしない。自分のスタイルを見つけて、それをやり通したい。メンタルは強いほうだと思います」
早くに自立心を身につけ、何事にも動じないという道休さんだが、唯一等身大の彼に戻って笑顔を浮かべて話すのは母親とのエピソードだ。
「母親にはよく注意されていますが、ひとことで言うと頼れる人。小さな頃から言われていた〝嘘をついてはいけない〟という教えも心に残っています。普段は離れて暮らしていて、学校で頑張っている姿を見せることはできないけど、今日のリック・オウエンスの服を着こなしたカットはすごく迫力があったので、見てほしいな」
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2008年生まれ、北海道出身。このSPUR3月号でモデルデビュー。9歳のときに渡英、全寮制のウィンチェスター・カレッジで学ぶ。プログラミング、ゲーム制作に専門的に取り組んでいる。大学進学を控えたクラスを選択中。アメリカの大学に進みたいと考えている。