オブジェとしても拝めるジュエリー、 Hermès(エルメス)

ピエール・アルディのデザインが好きなんだと気づきました。ふと手に取ったものや、長く愛用しているものが彼の手によることが多い。靴にバッグ、そして写真のエルメスのジュエリー。「モール・ドゥ・ブリッド」、エルメスらしく馬(はみ)から着想を得たデザインです。

ちなみに、エルメスのジュエリーはカレ以上にSPUR周辺では人気かもしれません。煌びやかな貴石で飾り立てるというより、ギュッとストーリーを凝縮させたオブジェ。通常のジュエリーとは一線を画すスタイルにファンが多いのです。

今から16年前に、当時社長であったジャン=ルイ・デュマからジュエリー部門もデザインするよう任命されたピエール・アルディ。「石の価値ありき、ではないアプローチをしてほしい」と言われた彼が2年に一度発表しているのが”HAUTE BIJOUTERIE”(オート・ビジュトリー)です。ハイジュエリーとはまた違う、モードでいうところのオートクチュールに近いですかね。商品にするしないとかを一切取っ払って、ピエールがじっくり考えてクリエーションを爆発させるコレクション、と言ったらよいでしょうか。

今まさに、その4作目が来日中。一般公開されているのですが、アルディ様の頭の中に入り込むような、すんごいインスタレーションになっているのでご紹介しますね。

©Frederik Vercruysse

SF映画のようです! 話題の『ブレードランナー 2049』も真っ青。こちらは、建築家でありアーティストのディディエ・フィウザ・フォスティノによるもの。今回のオート・ビジュトリーのテーマ「時」を解釈したらこうなりました。12個のモジュールはピエールのアイディアを象徴する電源に、それぞれコードで繋がれています。ここで勘のいい方はピンと来ますね、そうモジュールの数は12進法を表わしてもいます。

それぞれのモジュールには新作のオート・ビジュトリーはもちろん、ピエール・アルディが16年の間に培ってきたアイディアの賜物であるジュエリーが選ばれ、展示されています。

©Hermès

©Hermès

クレオパトラが身に着けていそうなピースは、『アトラージュ・セレスト』と題されたシリーズ。日時計をモチーフとしています。ジュエラーが一般的に「価値が低い」とみなすことの多いピンクオパールが中央に鎮座。ダイヤモンドやタンザニア産のウンバサファイアといった貴石との組み合わせは、「石の価値に縛られるな」というジャン=ルイ・デュマの檄にまさに応えています。ちなみに、オパールの周囲を飾るサンレイのような斜線は、ネックレスには25本、リングには13本。24+1、12+1のエクストラな「1」はピエール・アルディからのプレゼント、まさに夢の時間を表わしているのです。一日の終わりに「アレもコレも出来なかった! もしもあともう一時間あったら○△□……」なんて悶々としながら眠りにつく人にこそふさわしいジュエリーかもしれませんね!



©Hermès

惑星の軌道を示した『トラジェクトワール』というジュエリー。『2001年宇宙の旅』よろしく、過去現在未来、時空を超えたこちらは一番最後のモジュールに。ラストを飾るのにふさわしいピースです(クレオパトラから宇宙の旅、時の冒険をじっくり堪能すべく、会場に入ったら右回りに進んでくださいね)。

ちなみに会場の「壁」にも注目してください。デヴィッド・ボウイが出てくるんじゃないかと思いましたよ!

上はDavid Bowieのアルバム『STATION TO STATION』のジャケット、下は会場の壁。

ピエール・アルディのインタビューはこちら

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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