ここ数年流行している「セカンドスキン」アイテム。第2の肌のように体に寄り添うピタピタ服のことで、私も昨年何枚か購入し、春先まで重ね着のインナーとして重宝していた。街ゆくおしゃれな人たちを見ていると、どうやら1枚で着ちゃっても全然オッケーらしいのだが、私の場合、はみ出るぜい肉やにじみ出る脇汗が気になってしまい、どうも無理そう。アラフォーの端境期ファッション事情はさておき、そのセカンドスキン的な発想をジュエリーに応用してヒット作を生み出した人がいるのをご存じだろうか。その名も、ガイア・レポシ。あのイタリアンジュエラー、レポシの3代目を引き継ぐ若きクリエイターだ。
1957年に、オートクチュールジュエラーとしてトリノで創業。70年代後半にはモナコ公室御用達ジュエラーに指名され、これまで数々のロイヤルレディたちの手もとに最高峰の輝きを添えてきたレポシ。代々家族経営によって伝統を受け継いできたメゾンで、先述のガイア氏は創業者の孫にあたる。2007年に21歳という若さでクリエイティブディレクターに就任した彼女は、きっと相当な重圧であっただろうに、独創的かつフレッシュな感性でメゾンに革新をもたらした。
彼女が目指したのは、ファッションのようにデイリーに身につけられるファインジュエリーを作ること。今でこそ、カジュアルな装いにもマッチするコンテンポラリージュエリーを目にする機会が増えたが、当時はまだ「ファインジュエリー=ドレスアップのためのもの」という認識が根強かった頃。ファインジュエリーのコンサバでキラキラなイメージを払拭し、「セカンドスキンのようにまとう」という斬新なアイデアのもとに生まれたのが、今やメゾンのアイコンにもなっているベルベルコレクションだ。インスピレーション源は、アフリカ北部の砂漠に住む遊牧民、ベルベル人系トゥアレグ族のトライバルタトゥー。大学で人類学を専攻したガイア氏ならではの奥深い視点がデザインに活かされている。これは余談だけど、今絶賛どハマり中の漫画『ゴールデンカムイ』にアイヌ文化や不思議な刺青が描かれているのだが、どことなくその世界観とも通じる部分があるような気がして、地味にうれしかったりもする。
ゴールドがミニマルなラインを描く本コレクションの中で、個人的に気になっているのが2連のイヤーカフ。肌なじみのよいピンクゴールドが耳のアウトラインにぴたりと沿うさまに、惚れ惚れする。その密着感がまさにセカンドスキンのようで、ずっとつけていたら素肌と同化するような気さえする。2連のうちの一方にあしらわれたパヴェダイヤモンドがリュクスにきらめきながらも、余計な主張はしない。その媚びない佇まいがなんとも凛々しく、これこそがガイア氏のクリエイションの真骨頂だ。伝統とモダニティを融合させ、さらにそれをモードへと昇華させる彼女のセンスは、やはりタダモノじゃない。歴史あるメゾンにまったく新しい風を吹き込むというのは、確固たる信念がなければなし得なかっただろう。このイヤカフを身につけることで、彼女の芯の強さを少しだけおすそ分けしてもらえるような気がする。
2連イヤーカフ〈18KPG、ダイヤモンド〉¥357,500
レポシ 日本橋三越本店
https://repossi.jp/
03-6262-6677