2023.01.18

ロンドン/好きなものに囲まれつつ、クリーンなスペースを目指して

 Paula Canovas del Vas(パウラ カノヴァス デル ヴァス)

job デザイナー
profile 南スペイン出身。セントラル・セント・マーチンズの学士、修士課程を修了後、2018年に自身の名を掲げたブランドをローンチ。現在はロンドンを拠点に活動中。

ロンドン/好きなものに囲まれつつ、クリーの画像_1

天井高のある、気持ちのいいリビングルームの一角。壁面の一部はレンガがあしらわれ、部屋に温かみをもたらしている。壁には思い出の写真やお気に入りのドローイング。棚にはパートナーが集めているというレコードと、彼女のインスピレーション源であるファッションやアート関連の書籍がぎっしりと並ぶ

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1 ダイニングテーブルでくつろぐパウラ。卓上には、香りがとても好みで彼女自身の手でドライフラワーにしたユーカリが飾られている
2 パウラの故郷、南スペインの古くからの工芸品である、水を冷やすためのジャグ。実際に使用することはないが、珍しい形と、陶器のマットな質感に惹かれて購入。置物などはeBayをチェックし、掘り出し物を狙うことも多い
3 自慢のひとつは、大きな収納スペース。廊下にある鏡の裏側はクローゼット、そして右側の白壁上部も棚になっており、「たくさん物を持つタイプ」というパウラの所有物がしっかりと収まっている。「服や靴などはすべてここにしまっています。快適で心地いい部屋を保つために、大きな収納は欠かせません」

今、若者を中心に人気を集めるブランド「パウラ・カノヴァス・デル・ヴァス」。ロンドンのショーディッチ地区にある、デザイナーの自宅を訪ねると、笑顔で迎え入れてくれた。広々としたリビングルームと小さなベッドルームの1LDKにパートナーと暮らし、1年半ほど前に引っ越してきたという。「天井が高く窓が大きいところが気に入って、内見後に即決でした。ロンドンでいい部屋を探すのは本当に難しいですから」とパウラ。

部屋を見渡すと、家具は最低限に抑えられ、置物も淡い色合いで揃えられている。部屋のテーマを一言で表すなら「静寂」だ。「とても慌ただしい日常だからこそ、家は快適で、安心して落ち着ける空間にしたい。だから極力物を置かず、ミニマルに。ニュートラルな自分でいられることを大切にしています」

こだわったのは、スクリーンを置かないこと。コンピューターや携帯電話の前で過ごす日中から、リラックスモードにしっかりと切り替えるためだという。「家では読書や友達との食事などに集中したいのです。映画は、白い壁にプロジェクターで投影して観ます」
「引っ越してすぐに完璧な家具を揃えるのではなく、ゆっくりと時間をかけて部屋をつくり上げたいタイプ」と、パウラは自己分析する。「人間関係と同じく、家を特別な場所にするには、空間に慣れるための時間が必要だと思うんです。何年もかかることもありますが、辛抱強く待つことも重要。そうすることで、シンプルでありながらも、パーソナルな空間が出来上がるのだと思います」

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4 キッチンの裏側にある、リビングルームとベッドルームを結ぶ細い通路
5 ベッドサイドのミニテーブルに積まれていた、読みかけの本。中でもおすすめは、フランスの小説家、ジョルジュ・ペレック著『Species of Spaces and Other Pieces』
6 友人に「眠りの神殿」と呼ばれたコンパクトなベッドルームは、家で一番のお気に入りスポット。携帯電話の持ち込みはご法度にし、リラックスして読書に集中する場所になっている。真っ白の壁に対し、深い青のベッドカバーをチョイス。「シンプルでありながら、インパクトのあるスタイルを目指しました」

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7 部屋の床や壁の色とマッチした楕円形のダイニングテーブルは、見つけるまで1年以上かかった。招き入れた友人と共に食事を囲む憩いの場所だ
8 自身のブランドの看板商品であるディアブロ・シューズ。自宅には歴代の品が揃う。自転車に乗って自身のアトリエと家を往復するパウラは、毎日履いて感触を確かめている

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9 大きな窓から、気持ちのいい外光が差し込むリビングルーム
10 アーティスト、ジョン・ブースによるプレート。「以前、パートナーへのプレゼントとして贈ったものです。ジョンは今ではビッグネームになりました」
11 2023年春夏コレクションのインスタレーション用に、スペインの吹きガラス工房と制作した作品。インスタレーションでは、紐を通し、中に果物を入れて、カゴのように使用した
12  パウラが愛するアーティストで、陶芸作家のジャック・ウーリーとのコラボレーションシリーズ。シンプルながらも、ディテールに遊び心があふれる。ほかにもカラフルなグラスやボウルなども揃える
13 友人が引っ越すたび、要らなくなった植木鉢を引き取る。「目にするとその友達のことを思い出せて、愛おしいんです」
14 曇りガラスのバスルームは、リビングルームからの光が優しく入る

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