スノーハイキングでも侮るなかれ。雪山が教えてくれること【井之脇海、山と自然を遊びつくす 第2回】

 山に登るようになって約5年。雪山への憧れは年々増していき、初めての雪山は2019年の年末、北八ヶ岳の天狗岳へ。天気が悪くて頂上までは行けなかったけれど、夏に同じコースを歩いたときとは見える風景も足もとの感覚も全然違って、山の面白さにまたハマってしまいました(夏の登山の様子は、SPUR.JPで公開中の「井之脇海と、山の話」6回目7回目で読んでいただけます! 雨風が強かったな)。

 雪が積もった山は季節に関係なく「雪山」、雪がない冬季の山を「冬山」として雪山と冬山を区別するようです。雪山ではしっかりした知識と準備がないと、事故や遭難のリスクが高まります。雪崩はもちろん、積雪でルートが判別しづらいので道に迷ったり、ホワイトアウトで前が見えなくなったり。道具の準備をきちんとしていないと、低体温症や凍傷のリスクも。

1  雲もなく最高の天気。冬場、入笠山は天気も安定しているので雪山デビューにはおすすめ。
2  頂上は360度の大パノラマ! 富士山、南・中央・北アルプスが見渡せる。「百名山が22座見えるって書いてある」と山座同定盤を見ながら登りたい山を探す井之脇さん。

 実は雪山の道具は去年から少しずつ買い揃えていたんです。何が必要なのかは、YouTubeを見たり人から聞いたりしてかなりリサーチしました。雪山でもおだやかな場所に行くという前提で、いつもの登山ウェアにプラスして、防風・防水の冬季用ハードシェルのジャケットとパンツ。6本爪のアイゼン(登山靴の底に取りつける滑り止めのようなもので、爪が凍った地面に食い込むことで歩きやすさが格段に上がります)、耳を覆うニット帽、雪山用手袋、サングラスはマストとか。雪の状況に合わせて対応できるようにピッケル、トレッキングポールの先につけるスノーバスケット、スノーショベル、そして、さらにチェーンスパイクや10本爪のアイゼンも買いました。あとは冬用の登山靴があれば、僕の雪山道具計画もコンプリートです。あ、欲しいサングラスがあるんですが、なかなか日本では買えないモデルで。写真家の石川直樹さんが愛用しているものなので、僕もいつか海外の雪山に行けたらという憧れを持って、登山の研鑽を積みたいと思います。

 

雪山熱にスイッチが入る!

 標高1,995mの入笠山。スキー場があって、ゴンドラで標高1,780mのところまで楽に行けるんです。ゴンドラ駅に貼られたポスターを見ていると、夏はすずらんや高山植物、蝶々で有名みたいです。いつも担当してもらっているヘアメイクの小林さんいわく、MTBのダウンヒルコースとしても有名だそうです。自転車で山道を駆け降りるなんて、また新しい山の楽しみ方が! 
「ゴンドラ山頂駅」を降りたら、人工的に作られた高さ5mくらいの氷瀑があり、アイスクライミングの練習をしている人たちが。アイスクライミングもやってみたいことのひとつ。

3  一面の銀世界!
4 低山の雪山登山ならチェーンスパイク(もしくは軽アイゼン)でも。靴に雪、雨の侵入を防ぐゲイターもあるとなおよし。

 さっそく歩き始めます。ゴンドラ山頂駅から山頂まで、きつい登りもなく往復3時間くらいかな。最初は、森の中を。20分ほどすると入笠湿原といって、夏場ならすずらん畑になっている開けた場所に着きます(5)。木々に積もった雪がきれいなんですよ。動物の足跡も、登山中ところどころに何種類も見られました。

5・6 一帯は雪がない時季なら高山植物の宝庫となる湿原。通常なら通れないルートを歩けるのも雪山の魅力。入笠山のゴンドラは犬連れもOK。雪原で犬の散歩をしている人がいて「南極物語みたい(笑)」と井之脇さん

 湿原の先の花畑の斜面(3)からは、だんだん傾斜が厳しくなってきます。前を歩いている人たちはスノーボードを背負っていて、聞くとバックカントリーのいいコースがあるんだそう。僕は、スキーやスノーボードは未経験ですが、山には人それぞれのいろんな楽しみ方があっていいですよね。

7 雪山には長時間でも冷めにくいサーモスの「山専用ボトル」を持参。ルイボスティーで休憩。

冬山は木が葉を落とすので、眺めがいい。この日は空が晴れ渡り空気が澄んでいたので、頂上からは360度よく見渡せました。山々だけでなく、諏訪湖もきれいに見える。雪山、やっぱり楽しいです。雪中でテント泊もしてみたい。稜線歩きも好きだから、以前対談させていただいた登山家・花谷泰広さんが営む「猛者しか来られない」という甲斐駒ヶ岳の七丈小屋まで冬季でも行けるよう頑張るぞ。

Profile
いのわき かい●俳優。1995年神奈川県・横須賀生まれ。父の影響で登山を始め、日本百名山を制覇することが目標。インスタグラム(@kai_inowaki)で、山の写真も発信。

SOURCE:SPUR 2021年5月号「井之脇海、山と自然を遊びつくす」
photography: Kasane Nogawa hair & make-up: Takeharu Kobayashi edit: Tomoko Yanagisawa

FEATURE
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