2021.05.20

自然の岩を登る楽しみを目指して。クライミングジム編【井之脇海、山と自然を遊びつくす 第3回】


岩場や沢登りのように、道とはいえないような場所を、手足をフルに使ってどこをどう進めばいいのかを考えるのが好きです。そんな僕にとって外岩でのクライミングはやりたいことのひとつでした。クライミングは、ジムのように人工壁を登るものもあれば、自然のなかにある大きな岩壁を登るもの(外岩)もあります。安全確保のためにロープを使うルートクライミング、ロープを使わないボルダリングと、条件によって分かれるそうです。

自然の岩を登る楽しみを目指して。クライミの画像_1
ジムで緊張ぎみに待つ井之脇さん。そこに、愛犬を連れて平山さんが登場。トップアスリートであり、世界的な指導者の意外にもやわらかな人柄と、黒い柴犬の可愛さに思わず笑顔に。(井之脇さん)トップス¥15,400/オリバーリバー(オー) パンツ¥11,000/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター(ザ・ノース・フェイス)

今回は、外岩でルートクライミングをするために、まずはジムで基礎練習。クライミング前後編の前編です。先生は、プロクライマーの平山ユージさん! 世界に通用するクライマーを多く輩出できるようになった日本の牽引役でもあり、パイオニアです。今回は平山さんが観光大使を務めている埼玉県小鹿野町にある町営の「クライミングパーク神怡舘」におじゃましました。

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ルートクライミングに必要な道具は、安全性確保のロープ、腰につけてロープをつなぐハーネス、シューズ、手の汗を吸収し滑り止めになるチョーク&チョークバッグ

井之脇海(以下、井) 「クライミングパーク神怡舘」は、町営と伺いました。どういうジムなんですか?
平山ユージ(以下、平) このジムがある小鹿野町はクライミングできる自然な岩がたくさんあって。私も、町とともにクライミングルートの再生、開拓をしています。ジムでクライミングをまず経験して自信がついたら、次は外岩にも挑戦してもらいたいなと思っていて。内(ジム)と外(外岩)をつなぐような場所です。やっぱり、外岩でしか得られない楽しさもありますからね。

自然の岩を登る楽しみを目指して。クライミの画像_3

 今回、「いつもと違う教え方から始めちゃおうかなー」とおっしゃって。まず最初に低い位置で足を使って、横移動することから教えていただきました。(写真上)
 壁を登るというと、上半身の力を使うイメージがあるけれど、下半身も重要。次回、外岩に挑戦してもらうときに重要になるのが下半身なので、まず足の動かし方からね。
 いくつか僕に合ったレベルのルートを登らせてもらいましたが、足の動かし方も難しいですね!
 小石みたいなほんの小さな出っぱりに足を置いて体重をのせるからね。

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基本的な体重移動やロープワークを実践。が、20分ほどで「腕が痛いー!」

 ジムは課題ごとにホールドに色分けされているから手順はわかるんですが、足もとは見づらいから難しいですね。ところで、平山さんはいつからクライミングを始められたんですか?
 15歳だったかな。高校ではワンゲル部だったんだけど、当時池袋にあった秀山荘という登山用品店に出入りしていて、そこでクライミングというものがあることを教えてもらって。当時(昭和59年頃)はおおらかな時代だったから、山に行けないときは常磐橋公園に残っている江戸城城門の石垣で練習してました(現在は禁止)。
 石垣で練習ですか!
 会社帰りのスーツの人もたくさんいて、登ったら実はすごい人もいましたね。ワンゲル部では、クライミングなんてとんでもない!って指導されていたし、世の中も「クライミング?」って感じだった。

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節々にまで筋肉がついた平山さんの手!(右)

 それを平山さんが開拓していかれたんですね。15歳から夢中になった魅力ってどんなところにありますか?
 自然のなかにある岩でのクライミングだと、ひとつとして同じ岩はない。それが世界中にあると思うと一生かかっても登りつくせないよね。天候、湿気にも左右されるから、そのときそのときの唯一無二の登り方がある。

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 室内ジムでのクライミングは以前にも何度か経験したんですが、外岩は初めてなんです。
 今日の頑張りを見ていると大丈夫だよ! クライミングは誰かと比べるものではないし、自分のペース、スキルに合わせて楽しむものだから。

 それを聞いて、次回、外岩に挑戦するのが楽しみになりました!

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垂壁に挑戦。壁にくっついた姿勢のまま最後の一手が出せず20分が経過。普段、山の難所も難なくこなす井之脇さんも、見守るスタッフを何度も振り返りながら苦戦。最後は「おりゃー!」の掛け声とともにトップまで登り詰めた集中力と根性に、平山さんもスタッフも思わず拍手! このあと、腕の筋肉がパンパンになりしばらく力が入らなかった。

 

クライミングパーク神怡舘(しんにかん)
ロッククライミングの聖地・二子山があり、多くのクライマーが訪れる埼玉県の小鹿野町にある秩父地域最大級のクライミング施設。
埼玉県秩父郡小鹿野町両神薄2245 
0494-26-7805
◯営15時~21時(入館20時まで)、 10時~18時(土・日・祝日、入館17時まで)  定休日:火曜(祝日の場合は翌日) 利用料¥1,200(町民土日祝日料金・平日は無料)、¥1,800(町民以外)

 

Profile
いのわき かい●俳優。父の影響で登山を始め日本百名山制覇が目標。インスタグラム(@kai_inowaki)で、山の写真も発信。秋には、京都でロケをし、初主演を務めた映画『ミュジコフィリア』が公開予定。

ひらやま ゆーじ●プロクライマー。1998年ワールドカップで日本人初の総合優勝達成。2000年、2度目のワールドカップ総合優勝に輝き、世界のヒラヤマとして知られる。岩場の再生、開拓にも取り組む。

SOURCE:SPUR 2021年6月号「井之脇海、山と自然を遊びつくす」
photography: Kasane Nogawa hair & make-up: AMANO styling: Kentaro Higaki 〈Tsuji Management〉(Kai Inowaki) edit: Tomoko Yanagisawa

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