この連載のVol.16 「もしも柄が変わる布地があったら?」で、電子書籍リーダーに使われている電子ペーパーをファッションアイテムに使っちゃおう、というソニーのFashion Entertainmentsプロジェクトの取り組みをご紹介しました。
その中でも少しだけ触れた、電子ペーパーを使った“柄を変えられるファッションウォッチ”「FES Watch」。最近では進化バージョンの「FES Watch U」のクラウドファンディングもスタートして、ますます話題になっています。
今までカラーはブラックだけだった元祖FES Watchに、ホワイトモデルが新たに仲間入り。一足お先に触らせていただくことが出来たので、ご紹介してみようと思います。
スマートフォンと連携して、通知をお知らせしてくれたり、メールが返信できたりといったさまざまな機能を備えるスマートウォッチとは異なり、スマートフォンとは連携せず、FES Watch単体で、右サイドにあるボタンを押すだけで24通りのデザインを楽しむことができます。
ガジェット的な文脈で機能性を追求するのではなく、柄が変わることを楽しむ、それだけに絞り込んだシンプルさが、逆にFashion Entertainmentsプロジェクトが提唱する「デジタル化でファッションをもっと自由にもっと楽しく」というファッションに寄り添った考え方を体現しているなあと。時計として使う、というよりもバングルのようなアクセサリー感覚で使いたい感じ。
ただ、やはりちょっと私が腕にしてみると(冒頭の写真のように)少し大きい感じなので、バッグチャームのように付けてみても良いかなあと思っています。実際にこれを付けたバッグを持って1日行動していると、お会いした方に「それ、なに!?」と必ず突っ込まれます(笑)。身につけているものをキッカケに、新しいコミュニケーションが生まれる、こんなところもファッションの楽しさ、ですよね。
また、先日開催された2017年春夏パリコレクションでは「ISSEY MIYAKE」のランウェイで、FES Watchに使われている電子ペーパーを用いたクラッチバッグが、実際に発表されたんです!ご存知でしたか? 実際に私も触らせていただいたのですが、クラッチを構成する一素材として自然なかたちで電子ペーパーが使われていて、ファッションとデジタルテクノロジーの融合の新しい可能性を感じました。
電子ペーパー×ファッションというと他にも、凸版印刷がクリエイターと組んで、柄を変えられる「VIEWS」というイヤーアクセサリーのプロトタイプを作っていたりと、デジタル技術が生み出した新しい素材をファッションアイテムにどのように生かしていこうか、なんてことを考えている人たちがファッション業界以外にも居る、ということにもワクワクしちゃいます。
電子ペーパーに限らず、近い未来には、布でも革でもファーでもない、見たことも無いような新しい素材をファッションアイテムとして普通に身につけるような時代が来るのかも……!?
市川渚の「デジタル・スタイリッシュライフ」 記事一覧はこちら>
ファッションデザインを学んだのち、海外ラグジュアリーブランドのPRなどを経て、2013年に独立。クリエイティブ・コンサルタントとして国内外の企業、ブランドのプロモーション企画/ディレクションに関わる。
また自身でのクリエイティブ制作にも注力しており、フォトグラファー、動画クリエイター、コラムニスト、モデルとしての一面も併せ持つ。強い服と少し先の未来を垣間見られるデジタルプロダクトが好き。