3月のお悩み / 【見た目】で思い悩むあなたへ

3月13日より、新型コロナウイルス対策としてのマスクの着用が、個人の判断に委ねられるようになりました。今回読者の方々から寄せられたお悩みの中には、「マスクは下着と同じくらい大事だから、外すのが不安」という声も。周囲からの視線にちょっと敏感になりがちな今だからこそ、「見た目」にまつわるモヤモヤの原因に向き合いたい。第2回の今月も、考えるイラストレーター、描き子が答えます。

♥描き子/ Twitterフォロワー数3万人を誇る、“考えるイラストレーター”。親や夫、子供との関係に悩んだ自身の経験を活かし、より多くの人の生きづらさを解消しようと積極的に発信している。

「見た目」に悩む人のイラスト

【お悩み①】 人の目が気になって、マスクを外すのが怖い

▶LUCYさんのお悩み

3月13日から自己判断になったマスクのオン・オフ。「マスクを取った顔が、装着時よりも美人だった人に出会ったことがない」という芸能人のコメントを目にし、ぎょっとしました。なぜなら、本当にその通りだと思ったし、もれなく自分もそう思われていると感じたから。顔の下半身に自信のない自分にとっては、悩みが新たなフェーズに入った気持ちです。マスクをせずにいると、周りから気持ち悪い顔だと思われている気がして、若干の恐怖すら感じます。コロナ禍以降に出会った人にどのようにありのままの自分を見せていき、印象の差によるショックを和らげることができるのか。その方法を知りたいです。

♥ 描き子の「幸せの要点」

マスクのあり・なしで顔の印象が変わるため、そのギャップで勝手にガッカリされるのが怖い……という相談の声、本当にたくさんいただきました。

コロナ禍に入ったここ数年、マスクをつけるのが当たり前になっていたことに加え、家にこもってSNSを見る機会が増えたせいもあるのでしょう。自分の見た目が人にどう映っているのか、急に気になりだした方はとても多いようです。

「人はマスクをつけている方が美しく見えるものだ」というのが事実かどうかはともかく、多くの人がそのように感じているらしい世の中でいざマスクを外すとなれば、外見に対して厳しいジャッジが下るのでは……と不安を感じるのは、当たり前のことかもしれません。

結局のところ「お互い様だから」と割り切ってしまえばそれまでのことではあるのですが、それでも、不安な気持ちを少しでも和らげたいのは誰でも同じはず。この不安に打ち勝つため、ただ単に開き直る以外にできることはあるでしょうか。

♥ そこでこんな隠し味

実は人間って、自分が人を見ているときの視線を、自分に対しても投影してしまうクセを持っています。人の服装を細かくチェックする人ほど自分の服装も人からチェックされていると想像してしまうし、目の形に注目しがちな人は自分の目の形も人から注目されていると想像してしまう。このとき、事実がどうであるかは関係ありません。

つまり、素顔がどう見られるか気になる……という人は、もしかしたらその人自身が、誰かがマスクを外した瞬間、その顔に対して色々と考えてしまいがちな傾向を持っているのではないでしょうか。逆に言えばマスクを外すことに抵抗がない人ほど、自分の顔も人の顔も気にしていないことが多いようです。

これらを踏まえて、私からの提案は二つ。まず一つに、不安を感じたら、その不安はただの考え方のクセによるものであり、事実とは無関係だと思い直すことです。

もう一つはより現実的な方法。はじめに顔を解禁する相手は、マスクを外すのに抵抗がない人たちにしようということです。彼らが人の顔を気にしていないことを念頭に置けば、きっと不安も和らぐはず。そうして一定の人数の中で外してみる経験を積んで、恐怖を少しずつ和らげていくのです。

♥ 3月の格言①
不安を感じたら、“思考のクセ”を意識してみる。

【お悩み②】“女性らしくない”を理由に、自分のファッションを否定されることに違和感を感じます

▶samiさんのお悩み

私は、所謂“女性らしい”髪型や服装ではないからか、「男性ウケ悪いよ」という言葉を男性からかけられることがよくあります。そんなときにはいつも、“自分の好きな髪型や洋服を選んでいるだけなのに……。そして男性ウケって何なんだろうか……”と思い、モヤモヤしてしまいます。年齢を重ねても唯一ブレずに好きなのはファッションや美容。ですが、年齢とともにその分野にお金をかけることがよしとされない場合も多く、日々違和感を感じています。

♥ 描き子の「幸せの要点」

人生において、長く愛せる趣味があるのはとても幸せなことです。ただ、ファッションや美容に限らず、どんな趣味であっても水を差してくる人というのは一定数存在するもの。「もっと他に大事なことがあるでしょう」とか「お金がもったいない」とか「それが一体何の役にたつの?」といった具合に。

残念ながら、他人を変えることはできません。変えられるのは自分だけ。そうした無神経な一言に傷つかず自分を貫くために、何かできることはあるでしょうか?

心が弱い人は傷つきやすく、心が強くなれば傷つきにくくなる。世の中ではそんな風に信じられていますが、私の考えでは、心の強い人、弱い人というのはいません。どんな人の心にも、傷つかない理由と、傷つく理由があるだけなのです。

ある言葉に傷つくとき、必ず心の中に「傷つく理由」が存在します。その理由に丁寧に向き合えば、無神経な一言にもダメージを受けない、しなやかな心を作っていくことができます。

♥ そこでこんな隠し味

誰の心にも、傷つかない理由と傷つく理由がある。ちょっとややこしいので、私を例にして説明させてください。

私は昔から人に「字が汚い」と言われても全く傷つかないのですが(本当に汚いのでよく言われます)、「変わってるよね」と言われると激しく傷つき、落ち込んでいました。というのも、私は幼い頃から字が汚かったけれど、それを母(すごく達筆)に否定されなかったんですね。むしろ、「個性的でいいじゃないの」と。一方で、母は誰かの悪口を言うとき、決まって「あの人は変わってる」と話していた記憶があります。

つまり、私の中に「字が汚いのは悪いことじゃない」「変わっているのは悪いこと」という刷り込みがあり、前者は「字が汚いこと」に傷つかない理由として、後者が「変わっていること」に傷つく理由として存在していたわけです。

だから、何かの言葉に傷つくとき、自分の胸に尋ねてみましょう。「私がこの言葉に傷つく理由は何だろう?」と。

例えば、「男ウケが悪い」という言葉がわずかに引っかかっているsamiさんの心には、「異性にモテない人間はダメ、価値が低い」という刷り込みが隠れているのかもしれません(あくまで例なので、的外れだったらごめんなさい)。

傷つく理由を発見しても、それを消そうと格闘する必要はありません。ただ、「ここにモヤモヤの理由がある」と客観視するだけで、不思議と冷静になって胸のつかえが和らぎ、また同じような言葉に出合ったときも幾分うまく対処できるようになるもので何かの言葉が引っかかったら、自分の胸に理由を聞いてみる。ぜひ一度試してみてくださいね。

♥ 3月の格言②
感情の出所を分析し、客観視してみる。

プロフィール画像

描き子

イラストレーター、デザイナー、ライター。親や夫、子供との関係に悩んだ自身の経験を活かし、より多くの生きづらさを解消しようとSNSを中心に発信をしている。著書に、『推しにも石油王にも出会えない私たちの幸福論』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『女と男、このしんどさは誰のせい? わかりあいたいのに、なぜかすれちがう』(永岡書店)がある。Twitter@kaqico

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