「旅の楽しみのひとつは、知らなかった味に出合うこと」。現地の味を思い出したり、まだ見ぬ土地を想像しながら生まれたレシピが、旅情を刺激する。いつもの食卓で、非日常を味わおう。

【レシピ】沖縄の〝おかず″定食【長尾智子の旅する食卓】
「旅の楽しみのひとつは、知らなかった味に出合うこと」。現地の味を思い出したり、まだ見ぬ土地を想像しながら生まれたレシピが、旅情を刺激する。いつもの食卓で、非日常を味わおう。
"おかず"とは
沖縄で"おかず"とは、ご飯に合わせるつけ合わせの総称ではなく料理名を指す。内容は店によって異なり、野菜炒めや豚肉の煮物、卵焼きをのせたものなどさまざま。ご飯や味噌汁と定食として提供される。近年は減少ぎみだが、沖縄独自のユニークな食文化として知られている。

沖縄の食堂で時折見かけるユニークなメニュー、"おかず"。「初めて出合ったのは、那覇の公設市場の裏にあった食堂。"おかず"というざっくりしたメニュー名に惹かれて食べてみたときの、少し甘くて優しい煮物の味が忘れられなくて。お店ごとに違いはあるようですが、今回は自分の記憶を頼りに作ってみました」。
豚肉は2種の部位を合わせて脂の量を調節し、柔らかくなるまでじっくりゆでる。ゆで汁をベースに、野菜や具材を煮込めば完成。「しょうゆ控えめで少し甘めに仕上げるのがコツ。味を決めすぎないほうが、ホッとするようなおいしさになります。キャベツやゆで卵、焼き豆腐などで作っても」。
沖縄らしいもずくの天ぷらや豆腐のお椀を添えて定食に。「もずくの天ぷらは、粉かつおを加えると現地の雰囲気が出ます。豆腐のお椀は、"かちゅー湯"がヒント。鰹節と味噌にお湯を注ぐだけのいわば即席スープで、今回は夏向きに冷製で」。こんな定食なら、暑い夏も南国気分でハッピーに過ごせそう。
材料&レシピ
沖縄の〝おかず″定食
豚肉(バラ、肩ロース)
各300〜350g
レタス
1株
玉ねぎ
小2個
ゴーヤー
中1本
しょうがのスライス
5〜6枚
厚揚げ
1枚
昆布(約10㎝角)
1枚
しょうゆ
大さじ2
てん菜糖
大さじ1強
塩
適宜
島こしょう(または黒こしょう)
少々
〈もずくの天ぷら〉
生もずく
約150g
粉かつお
小さじ2
薄力粉
約大さじ3
塩
適宜
植物油
適宜
〈豆腐のお椀〉
ゆし豆腐またはおぼろ豆腐
約250g
花かつお
適宜
麦味噌
大さじ1強
雑穀入りご飯
約4杯
豚肉はバットに入れ、重量の合計の3%の塩を全体にすり込み、1時間以上おいてから洗い流す。鍋に2Lの水を注ぎ、豚肉を入れて中火にかける。煮立ってきたら火を弱め、あくを丁寧にすくい、昆布を加え、キッチンペーパーをかぶせて1時間以上ゆでる。ゆでた豚肉は8~10等分くらいに切り分けておく。
レタスは洗い、根元をつけたまま4等分に切る。玉ねぎは皮をむき、放射状に6等分する。ゴーヤーは両端を落として半分の長さに切り、菜箸などで種やワタを抜き、厚さ2.5㎝程度に切り分ける。厚揚げは4等分に切り分ける。
①のゆで汁の鍋を弱めの中火にかけ、煮立ってきたら、しょうゆ、しょうがのスライス、島こしょうを2つまみ程度、てん菜糖、塩少々を加えて混ぜ、少し甘めの味に調える。切り分けた豚肉を戻し、15分ほど煮てから、②の材料を鍋にぎゅっと詰めるようにして加える。鍋の蓋を少しずらし、弱めの中火で20分ほど煮込んで火を止める。煮汁が多いようなら、別に取って弱火で10分ほど煮詰め、鍋に戻すといい。
もずくの天ぷらを作る。もずくは洗って水気を切り(そのまま使えるものもある)、キッチンバサミで短く切ってボウルに入れる。塩少々を加え、粉かつお、薄力粉を加えて混ぜる。水っぽい場合は適宜、薄力粉を足して、少しもったりとした生地にする。フライパンに油を1~1.5㎝目安に入れ温め、テーブルスプーンで生地を入れてそのまま3分ほど揚げて、上下を返して同様に火を通す。キッチンペーパーに取り、軽く塩をふる。
豆腐のお椀を作る。冷水1Lに花かつお軽くひとつかみと麦味噌を入れて混ぜ、しばらく冷やし、濾してお椀に分け入れる。豆腐をスプーンなどで大きめにすくってお椀に入れ、花かつおをのせる。大きめの器に③の煮物を盛り、上から煮汁をかける。もずくの天ぷら、豆腐のお椀、雑穀を加えたご飯を並べて出来上がり。

ながお ともこ●フードコーディネーター。雑誌や書籍で活躍する一方、オンラインストアSOUPsを展開。「ハーブとお茶のブレンドが楽しくてやめられない! 中国茶のよい脇役ぶりには毎回感心しています」