K 大手のレギュラーメニューには今のところ見かけませんね。理由は色々あると思いますが、例えばこのビアスタイルは通常のビールに比べて収益度外視なくらいホップを大量に使うので、原材料費が非常にかかります。さらにはホップをたくさん使うほど、歩留まり(でき上がり量)が低くなるので、値段を高くして売らないとあまり収益にならないんです。
Z 安旨を実現しにくいわけですね。それなのに、これは一本¥400しない! 輸入のクラフトビールは高い印象があって、お手頃に感じます。
K そうなんですよ! ヘイジーIPAで使われるホップの量は製法的にどうしても、通常のラガービールの何倍〜十何倍にもなってしまう。原料費が高額になってしまうところ¥400以下に押さえ、しかもこのクオリティというのはすごいなと思います。
A 三菱食品さんの良心的な価格設定に本当感謝。でも味わいは国産ビールとは思えない、突き抜けたトロピカルな味がします!
K こちらはフルーツなどは使わず、ビールの基本原料である「麦芽・ホップ・水・酵母」だけで香りと味わいを表現しているんですよ。桃や柑橘類、完熟したりんごなど濃縮された果実のニュアンスが香りに。実際に飲んでみても、口いっぱいにフルーティなフレーバーが広がるビールです。
A ジューシーIPAにペアリングするとしたら何がいいでしょう?
K 濃厚な味わいかつ、これだけトロピカルな香りがするとフルーツと相性が良いと思います。フルーツタルトを合わせてもおいしいでしょうし、マンゴープリンもいい。あとチーズの中でもクセがあるタイプのウォッシュチーズと合わせても、ビールが負けないのでおすすめのペアリングです。
Z ビールとウォッシュチーズ、なんておしゃれ!これまでビールに合わせるなら、タラチーかキャンディチーズでした(笑)。
K 個人的には「まるごとバナナ」なんかと合わせたいですね!
Z Wow! IPAはペアリングまでニュージェネレーション、びっくりのペアリングだけど合いそうな予感がします。「考えるな、感じろ!」の、ブルース・リー師匠の極意に通じるものが……。
Z このビールはわりと昔からレギュラーのラインナップのひとつですよね、ファンが多いんだろうなあ。ショーヘイさんが今回改めて選ばれた理由は?
K 先ほどお伝えした通り、原材料を使えば使うほど、原価って基本上がっていく。インドの青鬼のような、アルコール度数7%でこれだけ濃厚な味、ホップの苦味やフレーバーのあるビールなら、もっと高くても当然のはず。それがコンビニで350円以下で買えるというのはやばいです! ガツンとした味でありつつもバランスが取れていて、ちゃんとおいしい!
A 私は実はこのビールは飲んだことがなかった。パッケージのキャラが強いし、鬼を飲んだら、どうなってしまうのかと(笑)。実際に飲んでみたら、パンチが強くてクセになる味、これもおいしい! ヤッホーブルーイングは、今では大手と言える造り手ですよね?
K そうですね、クラフトビール界の成功者。ひたすらエール系のビールを造ることを貫いて、今の地位を確立したブルワリーだと思います。
Z ペアリングはどんなものが良さそうでしょうか?
K 味の凝縮感がすごくあるビールなので濃厚なチーズタルトやキャロットケーキ、ママレードジャムを使った焼き菓子とぜひ。柑橘系のホップを感じるタイプのIPAはにんじん、玉ねぎ、セロリなどの香味野菜とすごく相性が良いんです。コンビニで売っているニンニクホルモン炒めとか、ニンニクや生姜の風味が効いているような料理と合わせても、いいペアリングになりますよ。
Z その食材だとカレーもいけますね! ガツンとした味同士で絶対おいしいだろうし、汗をかきながら食べたいです。
K 悩ましいですね〜、こりゃまた! 個人的な好みもありますが、私の「良いビールとは?」の指針にもなっている「また飲みたくなってしまう」という点では、「伊勢角屋麦酒のIPA」に軍配かなあ。
A 全部おいしかったけれど、私も伊勢角さんに一票です。
Z エールビールのIPAは、4本それぞれキャラが全く異なり、ラガービール編を含めてビールの世界の広さも奥深さも感じました。
K 味わいの多彩さはビールの何よりの魅力だと思います! あとこれは最近の傾向なんですけど、クラフトビールって味だけじゃない。それを中心にコミュニティが生まれたり、ラベルデザインも含めた世界観や価値観などを共有する「自己表現」のツールとしても機能しているのが面白いところ。ブルワリーの取り組みや志に共感して、彼らを応援する。そして飲んだり活動を応援することが自身のアイデンティティにもなるといった具合いですね。
A 確かにその考え方はニュージェネレーションですね! すごく今っぽい。
Z まだIPAを飲んでいない人は、まず身近な場所でこんなクオリティの高いビールがあることを知っていただきたいですね!