A 今回ご紹介するワイン5本は、第一部『神の雫』と第二部『マリアージュ~ 神の雫 最終章~』からピックアップしているので、ロングセラーから新しいものまで新旧ワインが揃っているとのこと!
Z 漫画に登場するワインはやはり高額なものが多いんですか?
T 僕もそうなのかなと思っていたんですけど、全然そんなことない! 超高級ワインをバンバン登場させながら、安価なワインも満遍なく網羅していますね。今日はミドルレンジのプライスでおすすめのものをセレクトしました。
A 第一部『神の雫』は、“使徒”と呼ばれる12本のワインの銘柄を言い当てる対決が物語の軸となっていますが、12本のワインの価値はいかがでしょう?
T めちゃくちゃ高いですし、手に入りにくいワインばかりです(笑)! メインの12使徒ではなく、エピソードに登場するワインはお手頃でメジャーなワインも出てくるんですよ。この「フェッラーリ ロゼ」もそう。第一部最終巻の打ち上げシーンで、乾杯ワインとして登場します。ロゼのシャンパンと比較するとかなりリーズナブル!
Z 作中では、上等なシャンパーニュに負けず劣らずの華やかさと褒められていましたね!
T シャンパーニュ方式で瓶内二次発酵製法で造られています。ピノ・ネロつまりピノ・ノワールが60%で主体、シャルドネが40%の、シャンパンと同じ品種のブレンド。この方式特有のトーストのような酵母の香りもちゃんとあって、シャンパンに引けをとりません。
A 辛口だけど、木苺とかちょっとチャーミングな甘みがあり、リッチでおいしい! このワイナリーは?
T かなり有名なワイナリーです。産地はトレンティーノというオーストリア国境沿いにある冷涼なエリアで、スパークリング造りに向いています。フェッラーリは白のスパークリングもおいしく、おすすめです。安定感のある味わいで、ブラインドで飲んだらシャンパンだと思う人もいるんじゃないかな。
Z 苦しんでも逃げずに使徒を撃破したような、大勝利を遂げた時にはこのロゼスパークリングで乾杯しましょう♪
Z 『神の雫』をきっかけにカリフォルニアワインのオーパス・ワンがブレイクしたことは有名ですが、ほかにも本作をきっかけに話題を集めたワインはたくさんあったのですか?
T すごく流行ったのは、このモンペラ。第一部1巻で登場し、主人公の雫が生まれて初めて飲むワインがモンペラなんです。その時に飲み比べたのが、高額なオーパス・ワン。ワインについてド素人だけど味覚センス抜群の雫が、「こっちが好き」と選んだのがモンペラだった。当時、モンペラは日本ではまったく知られていなかったワイン。僕もソムリエになって数年たった頃で、初耳でしたが実際に飲んでみたら本当においしかった! 「この漫画に登場するワインはおいしいぞ。読めば掘り出し物がわかるぞ」と多くの人が思うきっかけになり、インパクトと説得力を与えましたよね。今もモンペラは売れ続けてます。白もあるんですけど、そっちもおいしいですよ。
T 山梨県にある、現存する日本最古のワイナリー・まるき葡萄酒のワインです。30〜40年もの間、一升瓶で地下貯蔵していた古酒をブレンドしたちょっと甘い白。作品ではマンゴーとマリアージュしていましたね。雫がワインコンサルタントとして訪れたオーベルジュで、コース料理すべてに日本ワインをマリアージュさせる第二部のエピソードでした。
A マンゴーのジューシーさと絶対合いますね、これを食後に飲んだらご機嫌に締められる♪
Z 甲州品種といえば爽やか辛口系で、お刺身などに合うクセがない白ワインという印象でした。こんな味わいにもなるんだ〜! 古酒のブレンドってどういうことなんですか?
T それぞれのワインを造って、試飲しながら調合していくんです。ベストな配合を見つけたら、味を馴染ませるために瓶熟成させて世の中にリリースするという流れ。
A まるで実験のようですね、こういう造り方は一般的なんですか?
T シャンパンではこれほど年代物の古酒と混ぜないのですが、アッサンブラージュという製法と似ています。ピノ・ノワールやシャルドネなど異なる品種や、畑違いの葡萄を混ぜたりするんです。これは甲州だけで造り、ストックしていた古酒を複数ブレンドしていてユニークなのでぜひお試しを!
Z やはりテロワールが決め手になっているんですね! マリアージュ抜きで、このワインをおすすめする理由は?
T ボルゲリはボルドーの葡萄を持ってきて造っていて、イタリアの中でも特殊な産地なんです。イタリアは地元の土着品種を崇拝していますが、ここではメルローやカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられていて、イタリアのモダンスタイルとなってブレイクしました! キャンティと同じトスカーナ州だけど、葡萄はフランス品種でスタイルが全然違う。ボルドー的、あるいはカリフォルニア的な果実主体の甘い感じに仕上がっていますね。知らずに飲んだら、イタリアのものだとわからないかもしれません。