バーテンダーがおすすめ! 【ハイボール】に合うウイスキー5選

バーテンダーがセレクトする珠玉のウイスキー

SPURデジタルで連載中の「うち飲み向上委員会」から、ハイボールがおいしく作れるウイスキーをご紹介。バーテンダーの小林渉さんがおすすめする、とっておきの5本をピックアップ!

おしゃれなニューカマー「バスカー アイリッシュウイスキー 」

バスカー アイリッシュウイスキー

バスカー アイリッシュウイスキー 〈700㎖〉¥2,170(参考価格)/バスカー

Z 渋い大人が薄暗闇の中で物思いに耽りながら飲む……そんなハードルの高いイメージがあるウイスキーですが、ガチ勢ではないビギナーにとって楽しい飲み方を知りたいです!

K 海外ではストレートがスタンダードで、うちのお店でもストレートで飲まれる方が多いですが、ウイスキーの飲み方に細かい決まりはないんですよ。

A 本日はみんな大好き♡なハイボールに合うウイスキーを小林さんに選んでいただいております。最初の1本は「バスカー アイリッシュウイスキー」です。

Z 味わいを知るためにストレートで飲んでいますが、華やかな甘みがあっておいしい!

K 口の中に入れた時に舌の上でピリッとする感じがありませんか? 舌の上を心地よく刺激するという意味で、この感じをウイスキーでは「飲みごたえ」といいます。ただすっきり飲みやすいだけではなくて、飲みごたえも両立させているウイスキーですね。

A なるほど! これが飲みごたえなのですね。リッチな味わいですが、リーズナブルな価格でありがたい!

K 「バスカー アイリッシュウイスキー」に関してはストレート、水割り、ロック、ソーダ割り、何でも大丈夫だと思います。2年ほど前に出てきたばかりのウイスキーで、ウイスキー業界ではおしゃれな存在になっているんですよ。でも味はちゃんとしています!

Z 初心者にもわかる基礎知識をちょこっと教えていただけますか? 私のように原料が何なのかもわからないレベルの人はたくさんいると思うんです。

K まずはモルトウイスキーとグレーンウイスキーの2種があるということを覚えておくといいですね。モルトウイスキーは大麦麦芽のみを原材料とし、グレーンウイスキーはトウモロコシや小麦など大麦以外の穀物類も使って造ります。製法にも違いがあって、モルトウイスキーは一回造るたび蒸溜器を洗浄することを繰り返す少量生産スタイル。対してグレーンウイスキーは蒸溜器にどんどん原料を流し込み続け、止めることなく造り続けている大量生産スタイルです。

Z 「バスカー アイリッシュウイスキー」はどちらなのでしょうか?

K 「バスカー アイリッシュウイスキー」は、モルト原酒にグレーン原酒をブレンドして造られたブレンデッドウイスキーというものになります。複数の蒸溜所で造られたものをブレンドすることもありますが、「バスカー アイリッシュウイスキー」は3種の樽、シングルモルトとシングルグレーン、さらにアイリッシュウィスキー特有のシングルポットスチルをブレンドし、熟成しています。

Z 混ぜているタイプもあるんですね! シングルモルトってよく聞くけれど、シングルってどういう意味でしょうか?

K 単一の蒸溜所で造られた、ひとつの原酒だけということです。

A スコッチウイスキーとアイリッシュウイスキーの違いについては、定義や製造方法などさらに深〜い話になるのでまた別の機会に! 

長く愛されるスタンダード「オールドパー シルバー」

オールドパー シルバー

オールドパー シルバー〈750㎖〉¥3,850/オールドパー

K オールドパーは一般的に「オールドパー 12年」がよく飲まれています。それに対してもうワンランク安く手に入るのが「オールドパー シルバー」。12年熟成したものは、結構甘みを感じます。シルバーは12年よりも甘さ控えめで、飲みやすい。スコッチウイスキーのブレンデッドウイスキーです

A 優しい飲み心地で、ストレートでも飲めてしまいそう。このラベルに描かれたおじいちゃん、見覚えがありますよ!

K このおじいちゃんは152歳まで生きたと言われる方。長寿伝説にあやかって、彼の愛称からブランド名が付けられました。

Z ええ〜っ、152歳!! 都市伝説的なものではなく?

K 一応本当だろうと言われています(笑)。実は、この「オールドパー シルバー」はハイボールなど、ソーダに合うように造られたウィスキーなんです。そういったことから冷凍庫保存もできると、輸入業者さんが宣伝されていたこともありましたね。

Z ウイスキーはアルコール度数が高いから凍らないと思いますが、保存方法としてはおすすめですか?

K ストレートで飲みたい方にはおすすめしません。ハイボールで飲むなら問題ないと思います。余談ですが、オールドパーのボトルは斜めに傾けても自立するんですよ! 

Z めちゃくちゃ盛り上がりますね、手品みたい! オールドパーが立った、オールドパーが立った!

A クララじゃないから(笑)。ちなみに、ウイスキーに合わせるおつまみはどんなものがおすすめですか? ハイボールは食中酒として色んな料理と合うと思うのですが。

K ストレートならチョコレートやナッツ、あとはパルミジャーノレッジャーノなどハードチーズも好相性です。今回のラインナップにありませんが、スモーキーフレーバーのあるウイスキーだと燻製料理に合わせることもありますね。

ワンランク上のウイスキー入門に「グレンモーレンジィ オリジナル」

グレンモーレンジィ オリジナル

グレンモーレンジィ オリジナル〈700㎖〉¥6,545/グレンモーレンジィ

K 「グレンモーレンジィ オリジナル」は、スコッチウイスキーのシングルモルト。スコットランドのハイランド地方で造られているウイスキーです。スコッチウイスキーのシングルモルトの入門編としてぴったり。高級な、良いウイスキーの入り口だと思います

A 安くてうまいお酒から一歩進みたい私たちのモチベーションにもぴったりです! 

K グレンモーレンジィはバーボン樽熟成というものにこだわりを持っている蒸留所。バーボン樽はバニラ香が特徴とされますが、グレンモーレンジィは香りの分析をすると100種類以上の香りの成分が溶け込んでいて、非常に複雑なフレーバーがします。シンプルな味わいのように感じるんですけど、じっくり舌の上で転がしてみると非常に複雑な香りがしますよ。

Z 柑橘系フレーバーのフルーティな味わい、穏やかにすっと引く後味。ハイボールにしたら暑気を一気に払ってくれそう

K うちのお店でもハイボールでお出しすることが多いですね。スライスオレンジを入れてアレンジするのもアリです

Z ラベルに10年熟成とありますが、ウイスキーにおける年数はどういう意味を持ちますか?

K 使用する原酒の最低熟成年数を表しています。年数表記がないウイスキーの理由のひとつに、同じクオリティでリリースし続けるために、あえて若い原酒を入れた方がバランスを取れるということがありますね。

Z このウイスキーのバランス、沁みる〜! 私もそこそこの熟成になってきましたから、何か若い原酒的なものを取り入れるべしと、ウイスキーの神から啓示をいただいた気分です。

A ウイスキーの神って何!?(笑)


秩父から世界へ!「イチローズモルト&グレーン ホワイトリーフ」

イチローズモルト&グレーン ホワイトリーフ

イチローズモルト&グレーン ホワイトリーフ〈700㎖〉¥3,850/イチローズモルト秩父蒸溜所

A ベンチャーウイスキーの「イチローズモルト&グレーン ホワイトリーフ」、こちらは初めていただくウイスキーです。

K 厳密にいうとこれはジャパニーズウイスキーではなく、ワールドブレンデッドなんです。ベンチャーウイスキーが所有する秩父蒸溜所はかなり小さな蒸溜所。ブレンデッドウイスキーを造るためのグレーンウイスキーを自社で造れないので海外から輸入し、国内で追熟させてブレンデッドしているんです。だからワールドブレンデッドというネーミングに。日本洋酒酒造組合の規定に則ればジャパニーズウイスキーとは言えないものの、ウイスキー好きの間では大人気なんですよ。

A 味わいの魅力も教えてください!

K 創業者の肥土伊知郎さんはベンリアックでウイスキー造りの修行をされ、ジャパニーズウイスキーブームが始まる前に、イチから蒸溜所を立ち上げた人。非常に丁寧な造りで、かなり高品質なウイスキーです。ウイスキー好きなら海外の人でも伊知郎さんの名前を知らない人はいないくらい。そして今や、秩父蒸溜所のシングルモルトは、ネットで抽選販売になるなど、普通には買えません! そんな大人気のウイスキーの中で、比較的入手しやすい数量を生産しているのが今回おすすめする「イチローズモルト&グレーン ホワイトリーフ」になります。

Z その話を聞いてから飲むと、さらにありがたみが増しますね。

K ワールドブレンデッドである「イチローズモルト&グレーン ホワイトリーフ」は、厳密にはジャパニーズウイスキーという括りではないけど、今国内の酒造会社が造っているブレンデッドウイスキーの中で、安価なカテゴリーでは一番おいしいと思っています

A こっくり奥深くて、レモンピールやオレンジのようなニュアンスを感じます。爽やかな飲み心地。伊知郎さん、好きです

K 香りも華やかですよね。日本で造る高品質なウイスキーを売りにしている蒸溜所なので、元々の原酒が素晴らしい! それを丁寧にブレンドして安定的においしく造れる技術がある。そういう職人さんたちの集まりなんです。

上級者の入り口に「シングルモルト宮城峡」

シングルモルト宮城峡

シングルモルト宮城峡〈700㎖〉¥7,700(参考価格)/アサヒビール

K まずは香りを嗅いでみてください! いきなりピート、焦げた香りがしませんか。

A たしかにスモーキーなフレーバーがふわり。日々の緊張感から、一気にネジを緩めてくれますね

K ニッカウヰスキーの「宮城峡」はシェリー樽強めのウイスキーなんですけど、ジャパニーズウイスキーの中でもスモーキーフレーバーといえばこちら。甘みもあり、バニラ香もあり、樽感もしっかり。複雑なフレーバーが楽しめる、ちょっと上級者向けのバランスのいいウイスキーだと思います

Z 口当たりはとても軽やか、ワンランク上なリッチな味がします!「宮城峡」はニッカウヰスキーの中で、どういう存在なのでしょうか?

K ニッカウヰスキーは、余市(北海道)と仙台(宮城県)に大きな蒸留所を持っています。実は「余市」の方が強いピート&強い味わいで、「宮城峡」の方がマイルドだといわれているんです。ニッカウヰスキーの製品の中では、飲みやすいものとして世の中的には認識されているんですけど、実際に飲んでみるとすごく複雑で良いウイスキーだなと思いますね。

Z ウィスキー界隈には控えめを装いつつ、主人公を凌ぐ優秀サブキャラが充実ってことですね!「余市」ではなく、「宮城峡」を選ばれた理由は?

K 「余市」と「宮城峡」、どちらが手に入りやすいかというと「宮城峡」なんです。余市のような強いフレーバーは、スコッチをよく飲んでいるウイスキー好きに好まれるので、さらに上級者向けで人気も高い。「宮城峡」は上級者の入り口となってくれるウイスキーかな。