ファッションを通じて、子どもたちに夢を与えたい。フィリピンの貧困地区で暮らす子どもたちのためにファッションショーを開催する傍ら、ファッションスクールやファッションブランドの設立・運営も手がけるなど、精力的に活動する社会起業家の西側愛弓さん。「ファッションは生きるうえでの光になる」という信念のもと、社会貢献とビジネスの両立を目指す、彼女のひたむきな挑戦とは?
学生時代に始めたフィリピンでのファッションショーが原点に
大学時代、バックパッカーとして世界中を旅しながら、趣味でストリートスナップを撮っていた西側愛弓さん。洗練されたファッションに身を包む人たちと出会う一方、行く先々で目の当たりにしたのは、スラム街に住むボロボロの服を着た子どもたちの姿だった。自分が当たり前のように楽しんできたファッションに、触れることすらできない子どもたちが世界にはたくさんいると気づき、衝撃を受けた。リサーチを進めるなかで、ストリートチルドレンが世界一多いといわれるフィリピンの現状を知り、心を揺さぶられた。
夢を夢のままで終わらせないために、教育の機会を
ファッションショーで生き生きと自分を表現する子どもたちも、ショーが終わればスラム街へと帰っていく。ショーを開催するだけで、活動を終わらせてはいけない。そう感じるようになった西側さんは、当時勤めていたIT企業を退職し、24歳のときにDEAR MEをNPO法人化。子どもたちの将来にも責任を持てるようにと、現地でのファッションスクール設立を決意する。コロナの影響を受けて予定より少し時間はかかったものの、2023年2月、マニラのケソン市に2年制のファッションスクール、coxco Lab(ココラボ)を開校した。
社会貢献とビジネスの両立で、雇用につなげる
スクールで技術を身につけても、それを活かせる場所がなければ意味がない。卒業後の雇用先として生徒たちを受け入れるべく、2020年に西側さんが立ち上げたのが、ファッションブランドのcoxco(ココ)。co creation(共創)とcommunication(対話)の頭2文字を掛け合わせたブランド名にした。単に服を作って販売するのではなく、服を通じてさまざまな社会課題を伝える、「服のかたちをしたメディア」がコンセプト。全商品を日本国内で生産し、再生素材や倉庫に眠る残布などを用いて、長く着られるベーシックなアイテムを展開している。






