自然素材にまつわるスキルを共有し、体験する「スキル・アカデミー」。 エルメス財団が春のワークショップを開催

1837年の創業以来、他の追随を許さない卓越したものづくりを追求してきたエルメス。「私たちの身振りが私たちをつくり、私たち自身の鏡となる」をモットーに、2008年に非営利のエルメス財団を創設。アートや教育を通じて持続可能な社会の実現を目指し、文化支援や社会貢献にも力を注いでいる。

世紀を超えて歴史を紡いできたエルメスが、もっとも大切にしているもの。それは、職人の手仕事。メゾンの財産である「技術の伝承」は、エルメス財団が掲げる活動の柱となっている。そしてそれを実践するために立ち上げたのが、スキル・アカデミーだ。最大の特徴は、メゾンのものづくりに欠かせない自然素材に光を当てること。ワークショップや書籍などを通して、次世代にクラフツマンシップの本質を伝え、素材にかかわる「スキル(手わざ)」の体験と普及を目指す。

2023-24年のテーマは「土」。中高生向けワークショップの参加者を募集中

エルメス財団のスキル・アカデミー。中高生向けワークショップの参加者を募集中

日本国内では2021年からスタートしたスキル・アカデミー。隔年でテーマを設けて、素材と向き合う機会や学びの場を提供する。2021-22年の「木」に続き、2023-24年のテーマは「土」。それは、地球が長い時間をかけて生み出したものであり、人間の生活に必要不可欠なものでありながら、いまだ人の手で新たに作り出すことのできないもの。土から離れた暮らしが当たり前になってしまった現代において、土という素材を通じて培われた技術や文化をあらゆる角度から検証する。

スキル・アカデミーの日本での取り組みは、大きく2つに分けられる。ひとつは「スキル」の体験と鑑賞。その活動の一環として、中高生と教育にかかわる人を対象にしたワークショップ「土に学ぶ、五感で考える」を2024年3月に開催する。ワークショップでは5つのプログラムが用意され、それぞれ十数名の参加者を募る(募集期間は2024年2月18日まで)。迎える講師陣は、昆虫学者や人類学者、美術家、ダンサー、詩人、シェフなどさまざまな分野の専門家たち。丸一日かけて素材への探究を深め、学際的な学びの姿勢を養う。

エルメス財団のスキル・アカデミー。中高生向けワークショップの参加者を募集中
2022年に実施されたスキル・アカデミーのワークショップの様子。© Motoyuki Daifu / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

取り扱うトピックもユニークだ。例えば「土の舞台の上で、昆虫とダンサーはどのように響き合うのか?」「縄文時代から現在のエチオピアにいたるまで、土器はどんな旅をしてきたのか?」など、感性豊かな10代の若者たちの好奇心をくすぐる内容となっている。土を丁寧に観察したり、土に触れたり、土で表現したり、学校では得られない貴重な体験となるはずだ。

「土」の姿を多角的に捉えた書籍『Savoir & Faire 土』を刊行

2023年夏に刊行された『Savoir & Faire 土』(岩波書店、エルメス財団編)

スキル・アカデミーのもうひとつの取り組みが、書籍を通じて「スキル」に関する知識を共有すること。2023年夏に刊行された『Savoir & Faire 土』(岩波書店、エルメス財団編)は、「土」を総合的な視点で捉え直した一冊だ。フランス語版『Savoir & Faire: La Terre』から精選した章の邦訳を収録するほか、新たに日本人執筆者による寄稿やインタビューなどを加えて編纂した。

農業を支え、陶磁器やアートを生み、住居としても活かされる土は、私たちとって身近な存在。本書は土が持つ可能性について、歴史学や民俗学、アート、建築など多岐にわたる視点からアプローチする。土というひとつの素材が、職人や研究者によってどのように「スキル」として醸成されてきたのか、またそれがどのような知の系譜を作り上げてきたのかを読み解き、味わうことができる内容だ。素材への洞察の深さと、メゾンのものづくりへの情熱が込められた一冊を、ぜひ手に取ってみてほしい。

スキル・アカデミー運営事務局
culture_info@hermes.co.jp

エルメス財団 スキル・アカデミー
中高生向け 春のワークショップ
「土に学ぶ、五感で考える」

開催期間 2024年3月24日~3月30日
参加応募期間 2024年1月16日~2月18日
抽選結果発表 2024年2月29日
詳細、申込はエルメス公式サイトをチェック
https://www.hermes.com/jp/ja/content/322717/maison-ginza/skillsacademy/workshop/