乗馬の世界にルーツを持つサヴォワールフェール(職人技)と豊かな創造力により、創業以来、独自のスタイルを刷新し続けてきたエルメス。歴史的なメゾンが生み出す精巧なオブジェ(製品)は、長く大切に使い込まれ、ときに修理を施しながら、世代を超えて受け継がれるものとしてつくられている。そう、エルメスのものづくりの哲学には、はじめから「サステイナビリティ」が組み込まれているのだ。ここでは、メゾンをかたちづくる16のメチエ(製品部門)のうち、中心的存在ともいえる皮革部門にフォーカス。真に持続可能な手仕事の文化に触れてみたい。
美の中で、美をつくる。ウェルビーイングを核とした職場環境
「美しい製品を作るには、美しい環境で仕事をするべき」これを信条に、エルメスは社員にとって居心地のよい職場環境を整えることにも妥協しない。特に精密さと集中力が求められる職人たちのワークスペースには、人間工学的に細心の注意が払われている。
ひとりが、ひとつのバッグ。職人の刻印が何よりのトレーサビリティに
機能、品質、耐久性のバランスが完璧に整ったとき、そのオブジェには初めてメゾンの刻印が打たれる。エルメスの皮革職人は入社後に18ヵ月の研修を受け、メンターによるマンツーマンの指導のもと、メゾンのエスプリや技術を身につけていく。そして無事に研修を終えたとき、完璧な仕事ができる証として、職人ひとりひとりに自分だけの刻印が与えられるのだ。
修理し、循環させる。一生もののオブジェ
「ラグジュアリーとは、修理が利くもの」これは、エルメスの4代目代表、ロベール・デュマの言葉だ。時を経ることで、より美しくなるようにつくられているエルメスのオブジェは、すべて修理や修復、メンテナンスができる。バッグのハンドルやカデナの交換、革の色付けや磨き直し、ステッチの補修、擦り傷のぼかしなど、さまざまな工夫を凝らしてオブジェに息を吹き返らせるのが、修理アトリエの職人たち。それぞれのオブジェに的確な手当てを施すためには、経験はもちろん、創造性や決断力が求められる。












