パタゴニアが採用する新素材「ネットプラス」に見る、サーキュラーエコノミーの未来図【パタゴニア×ブレオ社】

1973年に創業以来、環境危機や社会問題に対して責任をもってビジネスをする「レスポンシブル・カンパニー」の先駆者であるパタゴニア。2013年には、衣料品のみならず食品や水、エネルギー、廃棄物といった多分野において、環境保護に貢献するスタートアップ企業を支援するためのファンド「$20 Million & Change」を設立し、話題を集めた。このイニシアチブのもと、2014年にパートナーシップに選ばれたのがブレオ社。チリに拠点を置く同社が開発した新素材が「ネットプラス」だ。

海洋プラスチックの10%を占める漁網から、高機能な再生素材へ

漁網の写真
パタゴニアがタッグを組んだのは、古くなった漁網を回収してリサイクルナイロンを製造しているブレオ社。Ian Kasnoff© 2022 Patagonia, Inc.

「ネットプラス」の原料となるのが、漁網。通常、漁業に用いられる網の寿命は短いと2年から3年程度と言われており、廃棄された漁網は、現在世界の海洋プラスチックゴミの総体積の10%を占めると言われている。

ブレオ社では、チリ南部のコチョルゲを拠点に、古くなった漁網を回収し、手作業で洗浄、裁断。現地のリサイクル業者によって溶解処理され、リサイクルナイロン「ネットプラス」を製造。これによって、2022年秋冬シーズンは344トンもの漁網をパタゴニアの衣類へと生まれ変わらせた。

外側だけじゃない! インサレーションには、RDS認証済みのダウンを100%使用

ウィメンズ・ダウン・セーター・フーディ
「ネットプラス」を用いたウィメンズ・ダウン・セーター・フーディは全4色。

「ネットプラス」を使用することで、従来のリサイクルナイロンに比べ強度、耐久性が向上しただけでなく、手触りもよりソフトになっている。また、「ネットプラス」のリサイクルナイロンを採用した「ダウン・セーター」や「ダウン・セーター・フーディ」のインサレーションには、国際認証基準のRDS(レスポンシブル・ダウン・スタンダード)に準拠したクルエルティフリー素材「800フィルパワー・ダウン」を100%使用し、高い保温性と軽量化を実現した。

着て、修理して、譲る。そして循環する、パタゴニアの輪

ウィメンズ・ダウン・セーター・フーディとリペアパッチ
ダウン・セーターには破れたときに簡易的に修理ができるリペアパッチが付属している。Donnie Hedden © 2022 Patagonia, Inc.

生産背景での環境への配慮だけでなく、防寒具としても高い機能性を追求。そしてパタゴニアは、さらにその先にまで目を向けている。パタゴニアの「ダウン・セーター」には、破れた時に使える「リペアパッチ」が付属しており、国内のリペアサービスによって修理し、長く愛用することができる。「WEAR IT. REPAIR IT. HAND IT ALONG.(着て、修理して、譲ろう)」。そしてその先では、素材をリサイクルし、再び循環する。パタゴニアの揺るぎないビジョンによって生まれた名品だ。

FEATURE
HELLO...!