O 学生団体の立ち上げメンバーとして活動していた高校時代、蟹江先生が『未来を変える目標 SDGsアイデアブック』という書籍の監修をされていて、ユースとして意見を提示する機会に参加したのがきっかけです。「来年湘南藤沢キャンパスに通うんです」とお話ししたところ、「僕の研究室においでよ」とお声がけいただき、それで入学後すぐに蟹江先生のゼミで学ばせていただきました。SDGsを考える上で基礎知識を学ぶことも大切ですが、固定観念に囚われすぎるのもよくないと思っていて。だからアクティブに考えて動くプロジェクトベースの蟹江先生の授業は、私にとても合っていたように思います。
H 私は経済学部に所属しているので蟹江先生のゼミには参加しておらず、出会ったのはSDGs実現へ向けて全学部から選抜された学生が、専門家からアドバイスを受けながら議論する塾生会議でした。入学してすぐに塾生会議に応募し、選抜メンバーとして蟹江先生のもとで1年間活動しました。
蟹江教授のゼミを通して、自発的に活動
―――大学では具体的にどのようなことを学んだ、または研究したのですか? O 学生による企業評価を行いました。今は多くの企業がSDGsに取り組んでいますが、多くは株主を意識した情報開示が行われており、一般消費者から見たら本業を通じてどのようにSDGsに貢献しているのか、本当にSDGsの諸問題を解決するために行っているのかが見えづらい問題があると考えています。また、企業にとっても消費者からどのような情報開示が求められているのかが分からないといった、情報を出す側と受け取る側のマッチングがうまくいっていないという問題意識があって。そこで日経の株価上位100社を、蟹江研究会独自の評価軸に基づいて報告書を分析したんです。そして日経が出しているSDGsに貢献している企業のランキングと私たちのランキングを比べて、どのくらい差があるのかを調べました。蟹江先生にくっついている学生だったので、企業の方に自ら会いに行ったり、懇親会に出て発言したり。その延長でさまざまな企業のサステイナブル戦略や社内ダイバーシティに触れたいと思い、現在はコンサルティング会社で金融部門のSDGsやESG(環境、社会、企業統治を考慮した事業活動)を推進していくチームにいます。
ゼミに所属せずとも、SDGsを学べる環境
H 私は塾生会議の取り組みを通じてインプットができたので、いまはアウトプットとして、大学に関わるすべての人が安心して過ごせるキャンパス作りを目指して、学内の組織である慶應義塾協生環境推進室と協力し、性的マイノリティの学生へのアプローチに取り組んでいます。学内のコンペを通して実際に私たちの企画が採択されたので、この5月から実践が始まるところです。また、安全保障について学びSDGsと掛け合わせることで、これまでとは異なるアプローチができないか模索しています。「安全保障とSDGsって関係あるの?」と思えるかもしれませんが、すべての人が生きやすい社会を実現するためには、安心できる環境が必要だと考えています。
将来は国とビジネスの両面から日本を変えたい
―――将来のビジョンを教えてください。
O 政府がいろいろな政策を打ち出したとしても、社会が変革するためには一般消費者の意思決定がすごく大事で、二者の間で乖離が生まれると何も変わらない。そこで重要なのがビジネスだと私は思っているので、ビジネスの側面から人々を動かして、他の企業の指標になれるような先進事例を作るのが目標です。
H 最近国家公務員になりたいなと思い始めています。いまは大学という組織の中から環境を動かそうとしているんですけど、国もそれに近いのかなって。大きな組織は動きが遅い分、勢いがある若い世代が中から積極的に変えようとしないと何も変わらないと思うんです。今年の5月にはG7広島サミットが開催されますよね。G7の国の中で、日本は同性婚が合法化されていない唯一の国なんです。それを恥ずかしいと感じて議論を避けるのではなく、組織の中から「同性婚を認めるのは当たり前のことだよね」っていうアクションが出てこないといけない。そんなきっかけを作るための力になりたいです。