環境や社会に配慮しながらも、ファッションを楽しむ姿勢を崩さない【座談会 pt. 2】

環境先進国を代表する「Bコープ」ブランドに

エディター林 ガニーは環境先進国のブランドだけあって、地球環境に配慮した取り組みを積極的に行っていることでも知られています。2022年9月には、審査基準が厳しいといわれる世界的な認証制度「Bコーポレーション(Bコープ)」も取得しましたよね。地球環境だけでなく、コミュニティやガバナンスなど幅広い視点から企業の公益性を評価する制度で、アパレルブランドではクロエやパタゴニア、CFCLが取得しています。
PR宮田さん ガニーは200点満点中90.6点を取得しました。ただ、認証されたからといって自分たちをサステイナブルなブランドだと謳ってはいません。なぜならアパレル業界が世界2位の環境汚染産業であることを自覚しているからです。それでもその影響を最小限に抑えるために努力を続けてきた結果が、今回のBコープ取得という形であらわれました。Bコープは3年ごとに更新が必要なので、2025年には150点を取ることを目指しています。

最新テクノロジーを取り入れ、責任ある素材を採用

スタイリスト早川さん 得点アップのために、具体的にどんな取り組みをしているんですか?
宮田さん Bコープで高く評価されている点でもあるのですが、ガニーは責任ある素材を採用しています。2023年春夏コレクションでは、全アイテムの87%に再生素材や低環境負荷の素材、オーガニック認証を受けた素材を使用しました。シーズンを経るごとにその割合は高まっていて、将来的には100%にすることを約束しています。
エディター秋山 私が今着ている花柄のドレスは、100%リサイクルポリエステルです。やわらかなジョーゼット生地だから、空気をまとっているような気分。このドレスのほかにタートルネックのメッシュトップスも愛用しているんですけれど、こっちは91%リサイクルナイロンですね。

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 早川さんが着ているチェック柄のドレスもかわいい。“すみれさん”なだけに、すみれ色のドレスがよく似合いますね。
早川さん うれしい(笑)。 このドレスはシアサッカー生地なので、サラッとしていて着心地がいいです。オーガニックコットンにリサイクルポリエステルが混じっていて、家で洗える上に速乾性もあります。
宮田さん (卓上のバッグを指して)ちなみに、この黒いミニバッグにはリサイクルレザーが使われているんですよ。
秋山 リサイクルレザーって、レザー製品の製造段階で生じる、従来なら廃棄されてしまう破片やくずなどを集めて再加工したものですね。
早川さん 近年注目されているヴィーガンレザーも取り入れているんですか?
 ブドウの搾りカスを再利用したグレープレザーや、菌糸体をベースにしたマッシュルームレザーなどの素材を積極的に採用していますよね。
宮田さん はい。ガニーが公表している直近のレポートによると、バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量の60%が、生地製造の段階で発生していることがわかっています。そのうちもっとも排出量が多いのがアニマルレザー。ガニーは2021年からアパレル製品でのアニマルレザーの使用をストップしており、2023年までにすべてのカテゴリーでヴァージンレザーの使用をやめると宣言しています。

ITを駆使し、トレーサビリティ100%を実現

秋山 革新的な素材がどんどん開発されていて、正直ついていけない部分もあるんだけれど、ガニーの場合は商品に付いている「RESPONSIBLE(レスポンシブル)」タグが、エコ素材を使っている印になっているんですよね?

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宮田さん その通りです。ガニーは素材へのこだわりのほか、サプライチェーンの透明化にも先進的に取り組んでいます。サプライチェーンの情報を追跡できるプラットフォームを開発した「プロヴェナンス(PROVENANCE)」社と提携し、ECサイト上で一部の商品における生産や流通の経路をトレースできるようにしているんです。

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ECサイト内の「PROVENANCE PRODUCTS」のページに掲載されている商品は、生産や流通の経路をトレースすることができる。商品ページの「What makes me responsible?」欄をクリックすると閲覧可能。

 すごい! 今実際に見ているんですけど、配送の追跡サービスみたいですね。こうやって可視化されると、アパレルのサプライチェーンがいかに長いかがわかります。
宮田さん 将来的にはECサイトに掲載されているすべてのアイテムがトレースできることを目標としています。ガニーではさらに透明性を確保するために、現在取引のある150社以上のサプライヤーに関する情報を、「オープン アパレル レジストリ」というデータベースを通じて開示しています。
秋山 素晴らしい! ここまで徹底してやっているブランドはなかなかないと思います。下請け工場や取引先を特定できるということは、そこで働く人たちの権利保護にもつながりますよね。
宮田さん ただ、Bコープでは地産地消のビジネスモデルがひとつの評価基準となっているので、世界中にサプライヤーを抱えるガニーにとってはそこが大きな課題でもあります。
早川さん 確かに、今ここにあるアイテムだけ見ても、生産国はポルトガルやトルコ、インド、中国などいろいろですね。ガニーはアイテム数がかなり豊富だから仕方ない部分もあるんでしょうけれど。

アップサイクル、リユースに特化したコレクションやサービスも

 ガニーって毎シーズンどのくらいのアイテム数を展開しているんですか?
宮田さん 定番品や小物類も合わせると、600型くらいはありますね。
(一同、驚愕!)
秋山 そんなにたくさん作っているのに、環境負荷を抑えられるんですね!?
宮田さん 近年は自社に残っているデッドストックの生地の再利用にも力を入れています。2021年には過去のアーカイブスをアップサイクルして作った5,800点が、「Re-CUT(リカット)」コレクションとして販売されました。あと、日本ではまだ実施されていないのですが、ガニーの服を最大3週間レンタルできるサービス「ガニー リピート(GANNI REPEAT)」も立ち上げています。
秋山 そういえば以前、レンタルのみで展開されたリーバイスとのコラボコレクションの記事を読んだことがあります。
宮田さん 日本では定着していませんが、デンマークでは服のレンタルが盛んなので、反響は大きかったようです。最終的には欲しい人にセカンドハンドとして売ることもできますし。
早川さん 余分な在庫を抱える必要もないし、消費者側は衣服の廃棄も減らせてウィンウィンですね。

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 こうしていろんな話を聞くと、SDGsを見据えてあらゆる努力をしていることが伝わってきます。達成したことだけでなく改善点も明確にしているので、ブランドに対する信頼度がさらに高まりました。
早川さん 環境への配慮や社会貢献にストイックに取り組んでいるんだけれど、それをあくまでポジティブなムードでやっているのが素敵です!
秋山 「自信と責任を持ってファッションを楽しんで」というディッテさんの思いがブランド全体に反映されていますよね。ますますファンになりました!

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