生理痛は我慢しないで!
Q.月経痛が引き起こされる基本的なメカニズムについて教えてください。
「生理中は、子宮を収縮させるプロスタグランジンが分泌され、子宮内膜が剥がれ落ちて経血とともに排出されます。この子宮が収縮したり内膜が剥がれたりするときに引き起こされる痛みが、月経痛です」。
Q.月経痛の辛さを和らげるために、セルフケアでできることはありますか?
痛み止めを飲むときは、痛みを感じたら早めに飲むのがコツ。鎮痛薬には、プロスタグランジンが血中に放出されるのを防ぐ働きがあるので、放出される前に飲むと痛みを予防できます。バファリンやルナなど市販の痛み止めでいいのですが、特に痛みがひどいときに効くのがロキソニン。ロキソニンのジェネリックには、水無しで飲める内服液タイプがあり、いつでもどこでも痛みを感じたら気軽に飲めるのでとても便利です。また、身体を温めるだけで生理痛がましになることも。クリニックでは、身体を温める漢方を処方しますが、使い捨てカイロ(特に下着に貼るタイプのカイロがおすすめ)を貼ったり、湯船に浸って身体を温めるだけでも結構ちがいますよ」。
Q.月経痛について、どんな場合にクリニックにかかるのがおすすめですか?
1日3回痛み止めを飲まなければ耐えられない日が3日以上続く人や、生理痛で学校や仕事を休んだり、保健室で寝込んだりしてしまう人はぜひクリニックへ。そこまでではなくても、生活に支障を感じるときは気軽に相談してみてくださいね」。
Q.月経痛の治療法は?
「鎮痛剤や漢方を処方します。根本的に解決したい人や、鎮痛剤を使う回数が多い人には、"楽になってみたらいいんじゃない?"と低用量ピルを勧めます」。
Q.月経痛が病気のサインになっているケースはありますか?
「月経痛のおよそ7割に子宮内膜症の初期病変があることがわかっていて、ピルを服用することで子宮内膜症の悪化を予防することができます。まれに、子宮筋腫や子宮腺筋症などの病気が隠れているケースも。痛み止めを飲んでも痛みが治らないときや、ここ何ヶ月かで痛みがひどくなっているなというときはクリニックで相談を」。
排卵痛ってなんですか?
「生理中ではないのに、下腹部がチクチク痛むときは、排卵痛が原因かもしれません。排卵痛は、排卵時に卵胞が破れ、流れ出た血液や卵胞液が腹膜を刺激することで引き起こされます。痛み止めで緩和できますが、痛みがひどい人は低用量ピルで排卵そのものを止めるという手段もあります」。
経血の量、どのくらいが「ふつう」なの?
Q.経血の量に「ふつう」ってあるの?
「一度の生理期で20~140㎖くらいが平均的と言われていますが、これがふつうという明確な基準はありません。ただ、昼でも夜用ナプキンを2、3時間ごとに替えなければいけないようなときは、多いと言えるでしょう。また、生理が来ると階段や坂道で息切れする人、下まぶたをベーっと引っ張ったときに下まぶたの内側がいつもより白くなるという人は貧血の疑いが。月経カップを使うと、自分の経血の量を把握しやすくなりますよ」。
Q.経血量に問題があるときは、どんな治療をするの?
「経血が多い過多月経の場合、20・30代にはピル、血栓症のリスクが高まる40代以降にはミレーナ(黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する子宮内システム)やミニピルをおすすめしています。一方、経血が少なくて問題があるというケースはほとんどありません。ただし、過激なダイエットなどで急に体重を減らしたときは、体重減少性の無月経の心配があります。また、疲れやすい、ホットフラッシュがあるというときは、更年期の前兆という場合も。20代や30代での早発閉経もまれにあるので、変だなと感じたらクリニックで採血検査をした方がいいですね」。
Q.経血量が多い人におすすめのセルフケアは?
「クリニックでは鉄剤を処方しますが、普段から鉄分のサプリメントを飲んだり、ほうれん草、レバー、プルーンなどの鉄分豊富な食品を採るのがおすすめです」。
どのくらい来ないと、生理不順なの?
Q.このくらい来なかったら「生理不順」という目安は? クリニックにかかった方がよいのはどんなとき?
「2ヶ月以上来なかったら要注意。3ヶ月来なかったら絶対に来院を。採血してみると問題がないケースがほとんどですが、ときどき深刻な病気が隠れていることも。一人で心配するより、まずは相談を!」。
Q.生理不順になりやすい人におすすめのセルフケアがあれば教えてください。
「ちゃんと寝て、ちゃんと食べて、なるべくストレスフリーに過ごしましょう。急激に体重が減ると、体重減少性の無月経になることがあるので無理なダイエットはやめましょう」。
Q.生理不順にはどんな治療をするの?
「漢方で整えることが多いですね。低用量ピルを使うケースもありますが、月経不順については保険適用にはなりません」。
Q.生理不順が病気のサインになっているケースはありますか?
「多くはありませんが、早発閉経といって、20代や30代で生理が来なくなるケースもあるので、採血して調べます。閉経すると、骨粗鬆症や高脂血症、抑うつ症状が出ることも。特に、50歳まではホルモン補充をしないと骨がボロボロになってしまうので、きちんと通院治療してほしいですね」。
痛みや不安は「我慢して当然」じゃない
【クラウドちゃんより】
医療を味方につければ生理の不快は治療で緩和ができること、不安な症状は隠れた病気のサインかもしれないこと。生理にまつわる当たり前をアップデートして、辛いときは我慢せずに専門家に相談をした方がいいんだってわかったね。フェムテック調査団では、生理の悩みの根本治療に役立つ低用量ピルやミレーナなどについて、引き続き調査を続けていくよ。
illustration:Misaki Tanaka