TOPIC 2 これからの卵子凍結の可能
年々卵子数も減っていくうえ、老化していくのなら、明日よりも若い今の卵子を残しておき、来るべき日に備えたいと思う女性は多い。そこで、不妊治療・生殖医療の情報サイト「婦人科ラボ」を運営しているステルラの西史織さんに、卵子凍結について聞いた。
「現在、日本国内で不妊治療を受けているカップルはのべ45万組。治療数は世界一で、他の国に比べても不妊で悩む人の割合は多いです。その背景には、第一子出産年齢の上昇以外にも、クリニック選びの難しさや治療が標準化されていないために長期間にわたって治療を続けているカップルがいるなどさまざまな問題が。20代、30代前半の女性に将来の妊娠のための選択肢があまりない現状もあります。若いうちに質のいい卵子を凍結保存しておく“卵子凍結”は、日本産科婦人科学会では推奨されていませんが、将来の妊娠の可能性を広げる方法のひとつではあります。具体的には、卵巣を刺激する薬を使って多くの卵胞を育て、その後膣から卵子を取り出し、これを瞬間凍結して保存します。費用はクリニックによって異なりますが、検査と排卵誘発剤などの薬、凍結保存費として、一般的に40万~80万円ほど。その後も1年ごとに保管料がかかってきます。妊娠成功率を考えれば、30代前半までであれば最低でも10個、できれば15個以上は凍結保存したほうが安心です」
32歳~35歳を境に、卵子の数、質ともに急激に落ちてしまうので、20代や30代前半で行うほうがよく、40歳以上は実施しないクリニックもある。金額面の課題はあるが将来の選択肢のひとつになりそうだ。
ステルラ 代表/西 史織さん
「産婦人科医療と女性をつなぎ、人々を笑顔に」を使命とした、不妊治療情報と生殖医療を受診できるクリニックの検索サービス「婦人科ラボ」を運営。
https://www.fujinka-lab.com/
TOPIC 3 代理母、精子提供、卵子提供の現状は?
年齢や病気などの問題で妊娠が難しいときの子を持つ選択として考えられるのが代理懐胎。代理母となる女性の子宮に夫婦の受精卵を移植する場合と、夫の精子のみを代理母に人工授精する場合の2種類がある。また代理懐胎とは別に、精子や卵子に問題がある場合、第三者から提供してもらう方法もある。
「2020年、不妊治療のために夫婦以外の第三者の精子や卵子を使って、体外受精などの生殖補助医療により出産した場合の親子関係を定める民法の特例法は成立しました。しかし、子どもの出自を知る権利や対価の授受などについての法制化や、卵子や精子の提供についての罰則やルールなどは定まっておらず、現実的には誰でも具体的に考えられる選択肢にはまだなっていません」(月花先生)
家族の形が多様化している今、選択肢が増えることを願うばかり。
TOPIC 4 養子縁組について知りたい
出産をしないで親になる方法に「養子」がある。養子には、2種類あることをご存じだろうか? 一般的に認知されている養子は「普通養子縁組」で、戸籍に「養親」とともに生物学上の「実親」が併記され、実親と養子との間に扶養・相続といった権利・義務などの法律上の関係が残る。これに対し、「特別養子縁組」では、実親との親族関係は終了し、戸籍では養子の続柄は「長男/長女」などと記載される。つまり、法律上も“実の親子”になる制度である。
特別養子縁組は各自治体の児童相談所、もしくは民間団体によって斡旋されるが、その成立件数は、平成13年以降は大幅に増加している。しかし、それでも多くの子どもが施設で暮らしている現状を見れば、まだ少ないと言える。“子を持つ”選択として覚えておこう。
SOURCE:SPUR 2021年5月号「体のこと、助成金のこと、今知りたいこと全部! 2021年の不妊治療を考えよう」
illustration: Misaki Tanaka text: Yuumi Fujii〈dis-moi〉