産婦人科受診にまつわる不安やモヤモヤ、座談会で医師にぶつけてみた!【フェムテック調査団】

下着を脱いで診察台に乗るのが恥ずかしい、なんだか怖い、先生に怒られそう……。プライベートな部位を扱うだけに、不安や緊張を感じることの多い産婦人科受診。他の診療科に比べて、ハードルが高いと感じている人も多いのでは? そんな私たちと産婦人科の距離を縮めるため、SPUR.JPではアンケートを実施。その結果を踏まえて、フェムテック調査団メンバー4名と産婦人科医の5名で座談会を開催! なかなか聞けない疑問や要望を、先生に直接ぶつけてみました。 

(アンケートは7月27日(水)~8月16日(火)の期間にオンラインで実施。回答数638件)

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座談会参加メンバー

Aさん 20代半ば。月経困難症の治療のため、4年ほど通院中。今は低用量ピルを飲んでいる。

Bさん 30代前半。婦人科トラブルの経験はあまりなく、定期的な通院はしていない。

Cさん 40代前半。30代の頃、早発閉経と診断された経験が。今はホルモン補充療法中。

Dさん 40代後半、子どもが2人いる。更年期で体の不調を感じ、半年ほど通院中。 

池田裕美枝先生 

産婦人科医。NPO法人女性医療ネットワーク副理事長。京都大学医学部卒業後、総合内科研修を行い、その後産婦人科に転向。現在は京都大学医学部附属病院産婦人科などで臨床にあたりつつ、京都大学公衆衛生大学院博士課程で研究中。一般社団法人SRHR Japan代表。

アンケートでわかった! 3人に1人が、産婦人科医の言動で傷ついた経験あり

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(図1)

編集部(以下、編) まずは、SPUR.JPで実施した産婦人科に関するアンケートの結果を見てみましょう(図1)。「この1年以内に産婦人科を受診した回数」を伺った結果、約43%が「1度も受診していない」と回答。その理由として、特に不調がなかったのならよいのですが、約1/3の方が「心理的なハードルが高くて」「忙しくて」などの理由から、受診したかったのにできなかったと回答しているのが気になります(図2)。

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(図2)

 また、「医師の言葉や行動で嫌な気持ちになったり傷ついたりした経験はありますか?」と伺ったところ、約30%の方が「ある」と回答しています(図3)。

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(図3)

池田先生(以下、池) 3人に1人が「傷ついた経験がある」というのは、なかなかショックな結果です……。

 参加者のみなさんは、産婦人科で傷ついた経験がありますか?

A 私は月経困難症でピルを飲んでいるのですが、その際の検査で、「不妊の可能性がありますね」とサラッと言われてショックを受けたことがあります。同じ病院に何度か通っていて、それまでも検査をしていたのに、なぜもっと早く言ってくれなかったのか。「子どもを作りたくなってからちゃんと検査すればいい」とも言われたのですが、「私は一生子どもを産めないかもしれない」と、精神的にすごく不安定になってしまいました。

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 おつらかったですね……。不妊もそうですが、SRHR(性と生殖にまつわる健康・権利)の話はすごくセンシティブなもの。でも、SRHRの意識が医療者にも浸透しきっているとは言えないために、命にかかわる疾患などと比べると、軽く扱われがちかもしれません。今、SRHRを人間の根源にかかわる大切な問題としてしっかりケアしていこうという動きが、日本の産婦人科でもやっと起こりつつあります。

治療だけでなく、ヘルスケアとしても受診してほしい!

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C 私も、忘れられない経験があります。まだ結婚を考えていなかった20代の頃、生理周期が不規則で少し不安だったので、病院に行ったことがありました。ところがそこの先生は、話を聞いただけで内診もせず、「まだ結婚してないの? じゃあ結婚してから出直してきてね」と。すごく勇気を出して受診したのに、内診すらされなくてショックでした。今から考えると、もしそのときにちゃんと診てもらえていたら、30代になってからの不妊治療の経過も変わっていたかもしれません。

 私は産婦人科医を代表するような立場ではないですが、本当にみなさんに謝りたい気分でいっぱいです。今、私たちは「産婦人科をかかりつけ医に」という啓発活動をしています。病気になる一歩手前の段階で、ヘルスケアとして受診してほしい。そういう考え方も徐々に広まってきているのですが、日本の保険医療制度はあくまでヘルスケアではなく治療がベース。だから考え方が昔のままで止まっている医師の中には、残念ながら「ヘルスケアに時間をかけるのは、自分の仕事ではない」「病気になってから受診してほしい」という姿勢の人もいるかと思います。本当に心苦しいです。 

B 私は、たまに生理痛がひどいときがあって、病院に行くことも考えるのですが、市販の鎮痛剤を飲めば耐えられるのでやり過ごしてしまいます。どのくらい痛みがあれば受診すべきなのかがよくわからなくて……。

 まさに、治療とヘルスケアの間のグレーゾーンにあるケースですね。つらい生理痛に関しては、「月経困難症」という名前がついているので、少しでもつらかったら受診して大丈夫。治療は自分をラクにするためのものですから、我慢せずにもっと気軽な感覚で受診してみてほしいです。

「もっと調子のよい自分」になるための産婦人科 

C 私は今40代ですが、30代で早発閉経と診断され、バストも削げてしまったりして落ち込んだことも。でも、そういった悩みはホルモン補充療法を受けることでだいぶよくなりました。だから女性として豊かな生活を送るために、産婦人科での治療は欠かせないと思っています。だけどやっぱり、それが治療かと聞かれると少し自信がなくて……。

 いえいえ、もちろん治療です! 女性らしく生活したいという悩みも、立派な治療の対象です。「もっと調子よくなりたい!」という理由で来院してもらって大丈夫!

C よかった! 「自分がもっと調子よくなるために受診する」というのは、すごく私にとってしっくりくる表現です。

「お任せ感」の強すぎる患者になっているかも?

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D 私は、デリケートゾーンに湿疹のようなものができて近所の産婦人科に行ってみたら、そこの男性医師が感覚的に合わないタイプで。特に何を言われたというわけでもないのですが、どうしても再受診する気になれませんでした。出産経験があるとはいえ、男性医師の前で下着を脱いで患部を見てもらうのは、自分としてはすごく思い切りの必要な行為です。デリケートな問題だし、もう少し寄り添って対応してくれたらよかったなと思いました。

 アンケートでも、Dさんのように「医師に寄り添ってもらえないと感じた」と回答する人が非常に多かったです。医師と患者の間でコミュニケーションがうまくいかない理由は何でしょう?

 そうですね。私は欧米や中国の患者さんを診たりすることもありますが、日本の患者さんは、「先生にすべてお任せします」という感じが強いように感じますね。たとえば外陰部にかゆみや痛みがあっても、意外と鏡を使って自分で確認したりしない方が多いのでは。そのため、医師も「私がすべて教えてあげましょう」という態度になってしまい、コミュニケーションがうまくいかなくなってしまうのかもしれません。

 確かに、産婦人科に関しては「お任せ感」が強くなっていたかも!

 もちろん医師として「何とかしてあげよう」という責任感はありますが、とはいえ自分の体のことですから、患者さんにもう少し主体的になってほしいという思いはありますね。でも、それは患者さんが悪いわけではまったくなくて、やはり日本社会には、女性が自分の性器に関心を持つことに対するタブー感が根強くあるのだと思います。もちろん、中には自分の身体の状態を把握することに積極的な患者さんもいますよ。インターネットで見つけた図を見ながら説明してくれたり、かゆみのある外陰部の写真を自分のスマホで撮影しておいて、経過を説明してくれたりとかね。

B すごい、その発想がそもそもなかったです! たとえば他の病気や怪我だったら、似たような症状の人をネットで検索して自分と比べたりすることはありますが、場所が場所なので、ネットで調べるのもちょっと勇気がいるかもしれません……。

 まずは今晩、ぜひ鏡でご自分の状態をチェックしてみてくださいね!

診察台のカーテン、「あり」と「なし」ではどちらが安心?

 患者さんの立場からすると、診察台に乗っているときに嫌なことをされたり痛かったりしても、カーテン越しなので医師に「嫌だ」と伝えづらい方もたくさんいるのかもしれませんね。そういうときは、そばにいるナースに伝えてみてくださいね。

 「カーテンの向こうで何をされているかわからず、怖い」という声は、アンケートにもたくさんありました。一方で、「恥ずかしいから絶対にカーテンを閉めてほしい」という意見も多数寄せられています。

 海外では、カーテンのついていない診察台が主流の国も多いですよ。

C 私が以前に通っていた都内のクリニックは、カーテンがありませんでした。さらに、自分の足の先にモニターがあって、それを見ながら医師から説明を受ける形式で。それでだいぶ鍛えられましたね(笑)。どんな器具を使っているか、今、どこを診ているのかをしっかり把握できるので、それはよかったですね。

産婦人科を選ぶ際の決め手は?

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(図4)

編 アンケートでは、「産婦人科医院やクリニックを選ぶ際の決め手になるもの」についても聞いています(図4)。一番多いのが「親や友人、同僚などの口コミ」、続いて「ウェブサイトやSNSでの口コミ」、「家や職場からの通いやすさ」となっています。みなさんはいかがですか?

D 私は過去に先生とフィーリングが合わなかった経験があるので、友人からの口コミを重視しています。あとは通いやすさですね。

A 私は、最初のクリニックは母の勧めたところにしました。それ以降はネットやSNSの口コミで決めています。

B 私もネットの口コミを参考にします。いろいろな世代や立場の方の意見が見られるので安心ですね。

池 みなさんは、別の診療科、たとえば内科や眼科にかかるときも同じ基準でクリニックを選びますか?

D そうですね、私は同じ基準です。でも産婦人科がいちばんセンシティブな内容を扱うので、知人の口コミをいっそう重視する傾向にあるかもしれません。

池 やはりそうですよね。産婦人科は他の科よりも、選んでもらうための工夫や情報発信を頑張らないといけませんね。歯科医の世界には、虫歯などになる前の段階で受診してもらう「予防歯科」という考え方があるけれど、産婦人科もそれを見習って「予防産婦人科」を謳うようにするといいのかな?

編 確かに「予防のために来てください」と言われると、ぐっと受診のハードルが下がりそうです!

患者と医師がコミュニケーションを取り合える産婦人科を目指して

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 それでは最後に、池田先生に座談会の感想を伺います。

 何より、患者さんに安心してもらうための工夫やコミュニケーションの取り方については、業界全体でもっと頑張っていかないといけないと痛感しました。診察する側からすると、患者さんが下着を脱いでくれることは当たり前のように感じられますが、ひとりひとりの患者さんがそれぞれに勇気を持って診察に来てくれていることを、再認識しました。みなさんの勇気に甘えて、「脱いでもらって当然」なんて思ってしまってはいけませんね。今日のみなさんの声を、他の産婦人科医にも伝えていきたいと思います!

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