14名が厳選! きっと自分を大切にしたくなる、【身体をめぐるおすすめの本】24冊

むちっとしたお腹、刻まれたほうれい線、濃いめのうぶ毛…そんなところも全部まるっと私。でも自分の身体にモヤモヤする時や、ありのままを受け入れるのが難しい時だってある。そんな時は、本の力を借りて新たな視点に触れてみて。「こうあるべき」という考え方にとらわれず、自らの意思を尊重して前進したり、ありのままの自分と向き合う手助けをしたり…様々な生き方があることを伝えてくれる14名の方々が、影響を受けたり気づきを得た本を推薦。自分を愛するきっかけとなる一冊と出合えますように。

この記事では、本を6つのジャンルに分けてご紹介します。下記の通り画像の背景色に応じて振り分けていますので、本を選ぶ際のご参考に。
イエロー:【ボディポジティブ】ありのままの身体を愛す
オレンジ:【セルフラブ】自分を愛し、尊重する
ピンク:【セックス】楽しく正しい「性」のために
グリーン:【ステレオタイプ】固定概念について改めて考える
ブルー:【セクシズム・エイジズム】差別や偏見に気づく
グレー:【ヘルスケア】身体の調子を整える

宇垣美里さん推薦 【私の身体は私のものだ、と思える本】

『くもをさがす』西加奈子(著)河出書房新社

『くもをさがす』西加奈子(著)河出書房新社

『くもをさがす』西加奈子

−推薦者:宇垣美里さん

カナダでガンの告知を受け手術をした西加奈子さんのエッセイ。辛い治療や身体の変化の中で、友人たちやカナダの医療従事者たちからかけられた言葉にハッとした。"私の身体のボスは私"自分の身体は自分のものなのだと自覚するその過程が眩しい。

『どうせカラダが目当てでしょ』王谷晶(著)河出書房新社

『どうせカラダが目当てでしょ』王谷晶(著)河出書房新社

『どうせカラダが目当てでしょ』王谷晶

−推薦者:宇垣美里さん

胸や尻や髪や爪、女性らしい、とされている部分がその女性性ゆえに意図せぬまま切り取られ、ジャッジされ、勝手に呪いをかけられ奪われる。私の身体なのに!そんなクソみたいな現実を軽快な文章でぶったぎり、笑いと爽快感と共に私たちを呪いから解き放ってくれる本です。私の身体は私のものだ。

宇垣美里プロフィール画像
フリーアナウンサー・女優宇垣美里

兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサーとして、テレビ、ラジオ、雑誌、CM出演のほか、女優業や執筆活動も行うなど幅広く活躍中。

辻愛沙子さん推薦 【ありのままの自分をいつくしむ本】

『あたしたちよくやってる』山内マリコ(著)幻冬社

『あたしたちよくやってる』山内マリコ(著)幻冬社

『あたしたちよくやってる』 山内マリコ

−推薦者:辻愛沙子さん

“女らしく”を重んじるこの世界で、女性が“自分らしく”生きていくこと。ただ自分らしくあろうとするだけで、女性たちにはたくさんの闘いやエネルギーが必要とされる。でも本来は自分の体型も装いも結婚や出産への考え方も、そのあり方を決めていいのは世界中でたったひとり、自分自身だけ。そのことを思い出させてくれる、闘う女たちへの連帯のエールが詰まった一冊。大好きすぎて、愛すべき女友達にプレゼントしがちです。

『 NUIDEMITA - 脱いでみた。2 -』花盛友里(著)ワニブックス

『NUIDEMITA - 脱いでみた。2 -』花盛友里(著)ワニブックス

『NUIDEMITA - 脱いでみた。2 -』花盛友里

−推薦者:辻愛沙子さん

自然体でいることや、多種多様であること。そのままの姿形が最も美しいということを、そのまま映し出し優しく照らしてくれる女の子のためのグラビア写真集。女性の写真家が撮影するヌード写真集で、被写体は一般公募から募った多種多様な仕事をする全く違うバックグラウンドの女の子たち。広告や映画に出てくるような完璧なプロモーションのモデルじゃなくても、どんな人にも美しい部分があり、そこに光を照らして掬い上げてみる。コンプレックスを無理やり好きになるのではなく、そんな自然体な自分自身の愛し方を教えてくれる一冊です。

辻愛沙子プロフィール画像
株式会社arca代表取締役・クリエイティブディレクター辻愛沙子

社会派クリエイティブを掲げ、領域を問わず幅広く手がける越境クリエイター。2019年秋より報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演し、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

長田杏奈さん推薦 【この身体のありかたを決めるのは自分だけ、と伝えてくれる本】

『コンプレックスをひっくり返す』吉野なお(著)旬報社

『コンプレックスをひっくり返す』吉野なお(著)旬報社

『コンプレックスをひっくり返す』吉野なお

−推薦者:長田杏奈さん

プラスサイズモデルとして活躍し、摂食障害の経験をもとに身体や自分、「食べること」との向き合い方について発信する吉野なおさんの初エッセイ集。“コンプレックスは、知らないうちに私たちの一部になっていますが、元々は私たち自身の“外側“からやってくるものなのです“。飾らない等身大の言葉を使いながら自分の体験を伝え、見た目やコンプレックスにまつわる誰にでも身に覚えのあるようなモヤモヤを、整理してわかりやすく丁寧に解きほぐす一冊。見た目偏重が根づいた社会で、自分の心と身体をコンプレックスの刷り込みから守るヒント集として広く読まれてほしい。

『「ファット」の民族誌』碇陽子(著)明石書店

『「ファット」の民族誌』碇陽子(著)明石書店

『「ファット」の民族誌』碇陽子

−推薦者:長田杏奈さん

私たちは知らず知らずのうちに、「太っている=健康に悪い、怠け者」などのイメージを刷り込まれている。太ってる人のことを、「健康のために痩せるべきであり、そのための努力を怠っている」と決めつけ、上から目線でいらぬアドバイスをしたり、差別したりしがちだ。アメリカにおけるファット(肥満)の扱われ方を様々な角度から紐解く本書は、その先入観がいかに歪んでいて乱暴でアンフェアなのかに気づかせてくれる。とりわけ肥満差別に対抗する「ファット・アクセプタンス」運動の歴史や当事者の語りのパートはとても興味深く、身体の尊厳や自己決定権について考えさせられた。

長田杏奈プロフィール画像
ライター長田杏奈

美容記事を中心にインタビューも手掛ける。著書に『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)、責任編集に『エトセトラVOL.3 私の私による私のための身体』。

君島十和子さん推薦 【健やかなマインドで過ごすための本】

『欠点は美点』佐藤涼子(著)KADOKAWA

『欠点は美点』佐藤涼子(著)KADOKAWA

『欠点は美点』佐藤涼子

−推薦者:君島十和子さん

ボイストレーナーである著者が誰もが持つ「その人らしさ」を磨いて「魅力」にランクアップする為に必要なメソッドをわかりやすく解説されています。自分自体を客観的に捉えるコツや、身体とメンタルのつながりなどを実践的に解説してくれているので、何か悩んだり、壁にぶつかった時に開くと打開策が見つかります。これは著名アーティストやアイドルが磨かれてスターになるまで間近で指導してきた「りょんりょん先生」だからこその視点。もちろん芸能人では無くても、このアドバイスを知っていることが会社でも恋愛においても、引き寄せ力を高めてくれるはずです。

『免疫力が10割』小林弘幸(著)プレジデント社

『免疫力が10割』小林弘幸(著)プレジデント社

『免疫力が10割』小林弘幸

−推薦者:君島十和子さん

50代になってから「本当の腸活」に出合い、免疫力を上げるように実践してきたことが更年期や加齢による気力体力の低下を食い止めていると感じています。免疫力を上げることはフィジカルだけでは無くて、メンタルにも大きく作用することもこの本から学び、隙間時間でストレスリリースするヒントなども紹介されています。さらにメンタルヘルスが上がってくると、より自分の身体に意識を向けるきっかけにもなり、ウォーキングやトレーニングのモチベーションも上がってきました。

君島十和子プロフィール画像
FTCクリエイティブ ディレクター君島十和子

1985年『JAL沖縄キャンペンガール』としてモデルデビュー以降、モデル・女優として活躍。その後スキンケアブランド(現FTC)を立ち上げ、美容家として精力的に活動する。2023年4月に『アラ還十和子』(講談社)を発売。

綿貫あかねさん推薦 【小説を通して自分の価値観と向き合う本】

犬のかたちをしているもの

『犬のかたちをしているもの』高瀬隼子(著)集英社文庫

『犬のかたちをしているもの』

−推薦者:綿貫あかねさん

結婚前に、相手に子どもを欲しいかどうかを確認するのは、とても大事なこと。なぜなら、子どもの有無はその後の人生を大きく左右するし、何より妊娠出産は女性にしかできないことだから。この小説は、主人公の薫がセックスレスの恋人である郁也から、金を払ってセックスした相手を一度のミスで妊娠させてしまったと打ち明けられる。しかも相手からは、産みたいからその子をもらってほしいと頼まれてしまう話。薫には子どもはいらないと言っていたのに、相手には欲しいと話していた郁也。子どもが欲しいのかそうでないのかを考えすぎてわからなくなってしまった薫。しかし結局産むのは女性であり、最終的にその選択は思わぬ結末へと導く。読むたびに、一生のうちで出産するかしないかは自分で選択していいと確信を深める作品だ。

あなたの鼻がもう少し高ければ」(『春のこわいもの』所収)

「あなたの鼻がもう少し高ければ」(『春のこわいもの』所収)川上未映子(著)新潮社 

「あなたの鼻がもう少し高ければ」(『春のこわいもの』所収)

−推薦者:綿貫あかねさん

顔に自信があるかと問われると、自信は顔になんて表れないと思っている。そこには、これがずっと付き合ってきた自分の顔という正直な納得感と、「ただの顔だ」という平たい気持ちが混ざり合っているだけだ(だから長年メイクもしていない)。地味で凡庸な存在と見られ続け、慢性的な苛立ちから美容や整形アカウントを見まくっている大学生トヨが、金持ち相手に稼いでいる憧れのインスタグラマーにギャラ飲みの面接を受けに行くこの短編。美は絶対に見間違えようのないものとトヨは考えるけれど、そもそも美醜は人によって受け取り方が違う。その価値基準は決して誰かに委ねてはいけないのだ。面接後は、顔って何だ、見る人がいなくなれば別に足の裏と同じではないか、と思い至るトヨに、大いに共感する。

綿貫あかねプロフィール画像
フリーランスライター・エディター綿貫あかね

大阪生まれ。SPURをはじめとしたファッション誌、ライフスタイル誌などでファッションやインタビュー記事、BOOKコラムなどを執筆。言葉にまつわるクライアントワークも行う。最近の仕事として『みどりの王国 The Kingdom of Green』(青幻舎)を編集。

福本敦子さん推薦 【気になる知識をわかりやすくインプットできる本】

『こころ漢方』杉本格朗(著)山と溪谷社

『こころ漢方』杉本格朗(著)山と溪谷社

『こころ漢方』杉本格朗

−推薦者:福本敦子さん

体の不調は東洋医学の視点で考えるととてもシンプルと気づかせてくれた一冊。熱は上に上がる、気も巡らなければ調子が狂う、こころと体の関係まで密接に、でもとてもシンプルに教えてくれる本です。漢方に興味がある人への入門編としても面白い一冊。

『あなたのセックスによろしく』ジュン・プラ(著)、吉田良子(訳)、高橋幸子(監修)CCCメディアハウス 

『あなたのセックスによろしく』ジュン・プラ(著)、吉田良子(訳)、高橋幸子(監修)CCCメディアハウス 

『あなたのセックスによろしく』ジュン・プラ

−推薦者:福本敦子さん
 

難しく考えず、イラストで楽しめるセックス・レシピ。著者の方のユーモアとセンスがギュッと詰まっています。読む、よりランダムに眺めるのが面白いと思います。友達やパートナーとわいわい見てほしいです。

福本敦子プロフィール画像
美容コラムニスト福本敦子

「コスメキッチン」に14年間勤務後、独立。オーガニックに精通した知識と、ライフスタイルに寄り添った独自の美容論が各方面から人気を博す。podcast「福本敦子のきくこすめ」も好評。新刊に『気持ちいいがきほん』(光文社)。

竹田ダニエルさん推薦 【違和感のもとを紐解き理解する本】

『美容は自尊心の筋トレ』長田杏奈(著)Pヴァイン

『美容は自尊心の筋トレ』長田杏奈(著)Pヴァイン

『美容は自尊心の筋トレ』長田杏奈

−推薦者:竹田ダニエルさん

美容にはとても興味があっても、美容に「まつわる価値観」に対して違和感を感じていました。統一的な美の考えであったり、「モテ」などの縛りつけるような言葉が一切登場せず、セルフケアやセルフラブというレンズを通して、どのように美容が自尊心を鍛えるツールになりうるのか、読んでいて清々しく、同時に学びにもなり、大切に読み返している本です。「ありのままの自分でいる」「素の自分を好きでいる」、当たり前に大事なことも実行するのは難しかったりする。その「生きやすさ」を求めるためのプロセスを、あえて美容を通して語る。アプローチもとても面白いです。 

『言葉の護身術』アルテイシア(著)大和書房

『言葉の護身術』アルテイシア(著)大和書房

『言葉の護身術』アルテイシア

−推薦者:竹田ダニエルさん

 「普通の人の生きづらさ」に寄り添い、フェミニズムをSNSを通してアプローチしやすく、民主化することで支持を集めているアルテイシアさん。数ある著書の中でもこの本は特に笑いながら読めて、尚且つ「わかる〜!」という気持ちで頷ける。自分の身体、そして精神を守るために、日常的に向けられる若干違和感が残るようなチクチク言葉が、いかにして有害な社会の構造から生まれるのか?「構造」から理解し違和感の根幹を言語化することで、より堂々と自分の身体、そして生き方にも自信を持てるよう、手助けになる一冊です。

竹田ダニエルプロフィール画像
ライター竹田ダニエル

カリフォルニア出身、在住。「音楽と社会」を結びつける活動を行い、日本と海外のアーティストをつなげるエージェントとしても活躍する。2022年11月には、文芸誌「群像」での連載をまとめた初の著書『世界と私のA to Z』を刊行。

山田由梨さん推薦 【もっと自分の身体を知りたくなる本】

『からだと性の教科書』エレン・ストッケン・ダール(著)、ニナ・ブロックマン(著)、高橋幸子(医療監修)、池田真紀子(訳)NHK出版

『からだと性の教科書』エレン・ストッケン・ダール(著)、ニナ・ブロックマン(著)、高橋幸子(医療監修)、池田真紀子(訳)NHK出版

『からだと性の教科書』エレン・ストッケン・ダール、ニナ・ブロックマン

−推薦者:山田由梨さん

みなさんは「性教育」についてしっかり学んだという記憶はありますか?私は『17.3 about a sex』という性教育ドラマの脚本を書いた時に初めてちゃんと学んだという実感を得ました。日本の義務教育で教えられる知識はとても不十分で、大事な部分が包み隠されている。身体の中で起きている生理のメカニズム、性器のかたちのことなどは、一番自分に近いのに、よく知らなくて、何かちょっとしたことでもとても不安になるという人もいるのではないでしょうか。他にも性的同意のこと、避妊の仕方、性器周辺で起きるトラブルについてなど、性教育の正しい知識を身につけると、自分で自分の身体コントロールすることができるようになり、安心感が持て、自信にもつながります。性教育のやさしい入門書で完全版のようなこの本をおすすめします。

山田由梨プロフィール画像
作家・演出家・俳優山田由梨

東京生まれ。俳優として映画・ドラマ・CMへ出演するほか、小説執筆、ドラマ脚本・監督も手がける。NHK夜ドラ「作りたい女と食べたい女」脚本。WOWOWオリジナルドラマ「にんげんこわい『辰巳の辻占』」、「にんげんこわい2『品川心中』」脚本・監督。

Photo:Kengo Kawatsura

花盛友里さん推薦 【性教育とは、自分と相手を大切にすることだと教えてくれる本】

『50歳からの性教育』村瀬 幸浩(著)、髙橋 怜奈(著)、宋 美玄(著)、太田 啓子(著)、松岡 宗嗣(著)、斉藤 章佳(著)、田嶋 陽子(著) 河出書房新社

『50歳からの性教育』村瀬幸浩(著)、髙橋怜奈(著)、宋美玄(著)、太田啓子(著)、松岡宗嗣(著)、斉藤章佳(著)、田嶋陽子(著) 河出書房新社

『50歳からの性教育』村瀬幸浩、髙橋怜奈、宋美玄、太田啓子、松岡宗嗣、斉藤章佳、田嶋陽子

−推薦者:花盛友里さん

性教育は全てにつながっている!と感じ始めたのは息子の性教育について学ぶようになってからだけれど、自分の身体を大切にすることを学び直すって本当に大事だなとこの本を読んで再確認。性教育というとセックスの話だと思いがちだけれど、性教育は、自分と相手を大切にするということ。いやらしさは全くなく、セックスの話だけではなくて、ジェンダー問題や性暴力、更年期の話などをそれぞれの専門家が語っていく内容。すごくわかりやすく、大人になった今だからこそ響く内容でとても勉強になりました。

花盛友里プロフィール画像
フォトグラファー花盛友里

大阪府出身。雑誌や広告を中心に活躍中。女の子の「ありのままの姿」を切り取った作品で注目を集め、『脱いでみた。』シリーズをはじめとして作品づくりを続けている。2021年にアンダーウェアブランド「STOCK」を立ち上げるなど、幅広く活躍。

クラーク志織さん推薦 【“当たり前”を問い直す本】

『「女の痛み」はなぜ無視されるのか?』アヌシェイ・フセイン(著)、堀越英美(訳)晶文社

『「女の痛み」はなぜ無視されるのか?』アヌシェイ・フセイン(著)、堀越英美(訳)晶文社

『「女の痛み」はなぜ無視されるのか?』 アヌシェイ・フセイン

−推薦者:クラーク志織さん

バングラディシュ出身で現在はアメリカに住む著者が、出産で死にかけた経験をきっかけに現代医療の抱える女性差別や人種差別について書いた本です。男性の身体を中心に発達してきた医学の世界では、女性の痛みの訴えは「ヒステリック」と見下され深刻に受け止められなかった歴史があるといいます。有色人種女性となると事態はさらに深刻で、例えばアメリカでの有色人女性の出産死亡率は白人女性の何倍も高いそうです。自分の身体の痛みを否定されないことは、個人の尊厳を取り戻すことにつながる。だからこそ、女性たちは自分の痛みについて黙らずに声をあげる必要がある。今こそ「ヒステリー」という言葉を女性の手に取り戻していくべきだ、という著者の訴えに心が動かされました。

『「オバサン」はなぜ嫌われるか』田中ひかる(著)集英社新書

『「オバサン」はなぜ嫌われるか』田中ひかる(著)集英社新書

『「オバサン」はなぜ嫌われるか』 田中ひかる

−推薦者:クラーク志織さん

女性は若ければ若いほど価値が高いと言われ、生きれば生きるほど「オバサン」と呼ばれあざ笑われるってなんだか変だなと思っていた頃に読みました。歳を重ねた女性を「オバサン」と軽視し、多くの女性の自尊心を削っていくことで、男性中心社会は一体どんな恩恵を受けているのか。「オバサン」と呼び軽んじる一方で、「オバサン」の無償・安価のケア労働に頼りっぱなしという家父長制社会の矛盾も見えてくる一冊です。女性が歳を重ねることがネガティブなイメージでいっぱいのこの社会の中で、若さを無くしていくことは結構怖いです。だからこそ、「オバサン」という言葉が持つ意味を多角的に理解して、隙あらば襲いかかってくるエイジズム&セクシズムの呪いを解き放つ知識とパワーを得ていこう!

クラーク志織プロフィール画像
イラストレーター・ライタークラーク志織

雑誌やWEBメディア、広告でイラストレータとして活動すると同時に、フェミニズムやSDGsについて考える連載を執筆。ロンドン在住。

福田和子さん推薦 【私たちの身体の主導権はどこにあるのかを考える本】

『女のからだ』萩野美穂(著)岩波新書

『女のからだ』萩野美穂(著)岩波新書

『女のからだ』萩野美穂

−推薦者:福田和子さん

2000年代に起きたジェンダーフリーバッシングから、少しずつ「ジェンダー」という言葉を肯定的に聞くことが増えてきた昨今。ジェンダー平等指数も圧倒的下位を更新する中、「これまで日本でジェンダー平等のための戦いはあったのか?」と思ってしまうこともあるはず。しかし日本にも、女性たちが自分たちの身体のために、権利のために、立ち上がり、集い、声をあげ、変革を起こした時代が確実にありました。先人たちの戦いを知ってこそ、今自分にある権利を実感し、未来のために頑張れることも大いにあると思います。ジェンダーやリプロダクティブ・ヘルス・ライツに関心を持ち始めた方にまずは読んで頂きたい一冊です!

『中絶と避妊の政治学』ティアナ・ノーグレン(著)、岩本美砂子(監訳)、塚原久美(訳)、日比野由利(訳)猪瀬優理(訳)岩波新書

『中絶と避妊の政治学』ティアナ・ノーグレン(著)、岩本美砂子(監訳)、塚原久美(訳)、日比野由利(訳)、猪瀬優理(訳)岩波新書

『中絶と避妊の政治学』ティアナ・ノーグレン

−推薦者:福田和子さん

性教育、避妊、中絶…。SRHR(性と生殖に関する健康と権利)が日本ではなんだか守られない。「My Body My Choice!」と心から言えない感じがする。緊急避妊薬は未だに薬局で手に入らないし、中絶は今でも配偶者の同意が必要。そもそも経口避妊薬の承認は国連加盟国で一番最後。「なんで?」とモヤモヤしているあなたに是非読んで頂きたい一冊。アメリカ人の研究者だからこそ引き出せた日本の避妊・中絶をめぐるパワーゲームの内実を緻密に炙り出し、私たちの身体がいかに政治的パワーに支配されているかを実感させられます。SRHRのためにアクションを起こしたいと思う方も、まずは読むべき一冊です。

福田和子プロフィール画像
SRHR(性と生殖に関する健康と権利)アクティビスト福田和子

大学在学中のスウェーデン留学をきっかけに、2018年、日本でのSRHR(性と生殖に関する健康と権利)実現を目指す#なんでないのプロジェクトを開始。現在は東京を拠点にSRHR、ジェンダー平等を軸に執筆、講演、政策提言などを展開している。著書に『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(明石書店)共同翻訳等。

新井穂奈美さん推薦 【改めて固定概念に向き合い、もっと対話したくなる本】

『これからのヴァギナの話をしよう』リン・エンライト(著)、小澤身和子(訳)河出書房新社

『これからのヴァギナの話をしよう』リン・エンライト(著)、小澤身和子(訳)河出書房新社

『これからのヴァギナの話をしよう』リン・エンライト

−推薦者:新井穂奈美さん

女性の身体について、女性本人たちだけでなくすべての人が正しく理解することで、女性のエンパワメントを促すことを目的にした一冊。自分たちの身体のことなのに、友達同士でさえ女性器の話をするのは恥ずかしい、生理痛が辛いけれど男性の上司には話しづらい。一体なぜなのか?読者に読みにくさや不快感を感じさせず、痛快に、軽快に、性教育やメディアにおける不正確な情報を徹底的に洗い出す。女性の身体についてこれまで知らなかったこともたくさん学べて、それについてオープンでいること、対話をすることは恥ずかしくないと改めて思わせてくれる。 

『脱コルセット』イ・ミンギョン(著)、生田美保(訳)、オ・ヨンア(訳)、小山内園子(訳)、木下美絵(訳)、キム・セヨン(訳)、すんみ(訳)、朴慶姫(訳)、尹怡景(訳)、タバブックス

『脱コルセット』イ・ミンギョン(著)、生田美保(訳)、オ・ヨンア(訳)、小山内園子(訳)、木下美絵(訳)、キム・セヨン(訳)、すんみ(訳)、朴慶姫(訳)、尹怡景(訳)タバブックス

『脱コルセット』イ・ミンギョン

−推薦者:新井穂奈美さん

韓国で知り合った友人が、数年前に脱コルセットに参加したという話を聞き、興味が湧いて手に取った一冊。脱コルセットとは女性の身体に負担を強いる「女性はこうあるべき」という固定観念そのものと、それを押しつける社会に抵抗する運動のこと。韓国の若い女性たちがどのような意図で化粧やスカートをやめて髪をベリーショートにしたのかが当事者の声ともに綴られ、ルッキズムや“こうあるべき”という女性の身体のあり方について考えるきっかけを与えてくれる。当書内の「『しなくてもいい自由』が確保できない自由は、自由とは言えない」という言葉が刺さります。

新井穂奈美プロフィール画像
エディター・ライター新井穂奈美

Z世代のエディター/ライター。大学でポリティカルサイエンスを専攻し、卒業後、海外セレブ情報メディアにて本格的に執筆活動を開始。翻訳、洋楽アーティストやハリウッド俳優への取材も行う。現在は主に韓国カルチャーや洋楽、海外エンタメについて執筆中。

林勝利さん推薦 【日常の違和感に気づきを得て、学びを深めたくなる本】

『私は男でフェミニストです』チェ・スンボム(著)世界思想社

『私は男でフェミニストです』チェ・スンボム(著)、キム・ミンジョン(訳)世界思想社

『私は男でフェミニストです』

−推薦者:林勝利さん

「男だからよくわからないんです、学ばないと」ほんとにこの一言に尽きる。当時のフェミニズム関連の本では珍しく、韓国で高校教師をされている35歳の男性が執筆されたエッセイ本。韓国の家父長制や2016年に江南で起きた無差別殺人事件、フェミニズムを題材にした授業に対する周囲の反応など、どれも著者が実際に体験した出来事から綴られており、自分自身も日本に住んでいて感じたことのある違和感やあるある(よくないけど)が随所に記されていてハッとさせられる内容ばかり。「他人のことだから無関心でいられるけれど、他人のことだから学ぶこともできる」と考えさせられました。

林勝利プロフィール画像
SPUR.JP Webディレクター/デザイナー林勝利

神達志さん推薦 【"らしさ"の終焉。ステレオタイプについて考える本】

『男らしさの終焉』グレイソン・ペリー(著)フィルムアート社

『男らしさの終焉』グレイソン・ペリー(著)、小磯洋光(訳)フィルムアート社

『男らしさの終焉』

−推薦者:神達志さん

男らしさとは何か。強い競争心?堂々とした態度?はたまた鍛え上げられた肉体でしょうか。女性主体のジェンダーに関する問題提起が多い中、本書は男性視点からステレオタイプの「男性性」に対する疑問や問題に、著者のグレイソン・ペリーのイラストも交え、皮肉満載で鋭く切り込んでいます。自分自身この本を読んで、服装や振る舞い、言葉遣いに至るまで「男だからこうあるべき」という呪いにかかっていることに気づかされました。そして自らの男性性を見つめ直すきっかけにもなりました。性別とは何か。男性と女性に何か本質的な違いはあるのだろうか。人種、階級、性別やセクシャリティ関係なく、全ての人が生きやすい世の中になるために、これからの時代の男性の在り方を今一度考えるために、多くの人に読んで頂きたい一冊です。

神達志プロフィール画像
SPUR.JP 動画ディレクター神達志
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